五輪延期はマンション投資市場にどんな影響を与えているのか
2019年12月に中国の武漢で発生した「新型コロナウイルス」は世界中で感染を広げており、日本でも4月27日現在「13,441人」が感染し、死亡者は「371人」と収束にはほど遠い状況です。
これを受けて開催予定であった東京五輪も延期に追い込まれました。1年後の「2021年7月23日」に開催すると発表されたものの、無事に開催できるかは未知数のままです。
都内の不動産価格が下落する?
不動産投資家を中心に懸念されているのは、「都内の不動産価格の暴落」です。中でも五輪景気で地価が高騰していた「五輪エリア」と言われる東京湾沿岸は、特に影響が大きいと言われています。
実際、五輪選手村宿舎を転用する予定である「HARUMI FLAG」(晴海フラッグ)はモデルルーム展示などのパビリオン業務が中止になっていることもあり、すでにマンションを購入した顧客からは不安の声があがっています。
HARIMI FLAGでは、五輪中の「選手用宿舎として」利用される約5,600戸がリノベーションされたのち、分譲住宅・あるいは戸建て住宅として提供される予定で、うち900戸前後は2020年3月末時点で売買契約が結ばれています。
1年延期の現在でも「現在の住まいの賃貸料・更新料が余計に発生する」「こどもが学校に入学してから転居しなければいけなくなる」という影響が出始めています。
万が一中止になった場合は、「五輪開催跡地」というブランドも消失し、売り手からすれば「価値の暴落で買い手がつかない」、既に契約を結んだ買い手からすれば「当初の話と違う住宅を購入することになる」という結果になりかねません。
確かに五輪が「中止」となれば、その影響は計り知れないものになるでしょう。
マンション投資家への影響
新型コロナウイルスによる経済の影響は五輪の中止のみならず、世界中で広がりを見せています。日経平均株価は暴落し、下落しました。
日経平均株価や東証株価指数は景気の「先行指数」に位置付けられており、数ヶ月先の景気を先取りして動きます。つまり、実体経済が不況に陥るのは、しばらく後のことです。
専門家の中には「リーマンショックに迫る・あるいは上回る脅威である」と感じている人もいます。このように、「不動産価格が暴落するのではないか?」という下落への懸念から、高値のうちに売却する投資家が増えています。
延期は必ずしも悪い予想ばかりではない
今回のコロナショックが日本だけでなく、世界の経済に暗い影を落とすことは間違いないでしょう。しかし、だからといって、すぐに所有する不動産の売却を始めてしまうのは早計です。
一部の専門家や投資家等の間では、「逆に五輪延期が不動産価格の上昇を長引かせる」という可能性も予想されているからです。
東京五輪は「中止」ではなく、あくまで「延期」です。準備期間が長くなったことにより、むしろ建設ラッシュやインフラ整備が進むことが期待されています。
不動産は不況に強い投資である
企業の業績は世の中の景気に左右されますが、不動産収益は家賃収入で左右されるため、景気の影響を受けにくい安定した投資といわれています。先行指標として最初に暴落が始まる株式と違い、不況の影響が伝わるのがもっとも遅い投資商品です。
また、不動産は物件の個別性が大きいため、所有する不動産の価値が必ず下がるとも限りません。
三大都市圏の地価は平成26年から上昇している<h/3>
国土交通省が2020年3月19日に発表した「令和2年 地価公示」によると、日本全体で地価は上昇傾向にあり、商業地は5年連続・住宅地は3年連続の上昇となりました。特に「東京・大阪・名古屋」の三大都市圏が好調で、住宅地・商業地ともに平成26年から令和2年まで地価上昇が継続しています。
五輪需要もありますが、それ以外にも「高輪ゲートウェイ駅の暫定開通」「リニア中央新幹線の令和9年開業」等による利便性の向上などの要因によって、地価が上昇しています。
投資家は冷静な判断を
新型コロナウイルスの登場によって五輪は延期に追い込まれ、東京を中心とした現在の不動産市場は停滞傾向にあることは事実です。しかし「停滞」しているだけであり、逆に言えば「機を伺っている状態」です。
五輪が終わっても経済が停滞すると決まったわけではない
また、そもそも五輪のあとはインバウンド需要がなくなって経済が停滞するという意見もあります。実際、前回の東京五輪(1964年)の翌年、特需景気が終了による「昭和40年不況」が発生しています。
しかし、必ずそうなるとは限りません。「経済財政運営と改革の基本方針2019」において、「Society 5.0(※) の実現に向けた大胆な取組を、時間軸としても戦略的に推進することにより、臨時・特別の措置や2020 年東京五輪終了後の需要の剥落を克服していく」と基本方針に組み込まれています。すでに景気の後退を織り込んだ対策が練られているのです。
※サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会のこと
出典:内閣府HP
また、五輪観戦を通じて多くの人がSNSで東京の魅力を発信することになります。日本に興味がなかった人が拡散された情報に触れることで、新たなインバウンド需要を引き起こすという見方もあるのです。
マイナスな情報だけで投資を判断しない
このように、必ずしも「東京五輪」が延期したからといって不動産価格が暴落するとは限りません。五輪終了後も、インバウンド需要がさらに増大するという向きもあります。
マンション投資家は「不安だから」という理由だけで、現在の所有物件を安易に投げ売りするべきではありません。
「社会情勢」と「経済動向」の両方を見極めた客観的な判断で保有・売却の選択をすることが大切です。
ひとりで悩まずに専門機関に相談することも必要
五輪延期に伴う不動産の影響は、ネットで調べても正確な情報を入手することはできません。ひとりで悩むのではなく、不動産投資・運用の専門機関に相談することをおすすめします。
所有する投資用不動産を持ち続けるべきか、売却するべきか判断するには、一貫したデータの共有が欠かせません。イエリーチでは、約65万件(2021年3月現在)にも及ぶ投資用不動産のデータをご用意しており、オーナー様ご自身で現状に基づいた修正を加えていただくと、有用な情報としてご活用いただけます。
例えば、推定資産額を確認したり、収支をシミュレーションしたり、市場価格の査定依頼をしたりするなどです。すべてはスマホの画面上で行えます。今後は売却のシミュレーションや実際の売買も可能になる予定です。
イエリーチのご利用にあたっては、アカウント発行(無料)が必要です。お問い合わせも承っておりますので、今後の見通しでお悩みの際は、こちらからご相談ください。
まとめ
マンションオーナーにとっては、不動産価格の暴落が何よりも心配になることでしょう。しかし、せっかくの不動産をすぐに売却するのは得策ではありません。ネガティブな意見以外にもさまざまな情報を精査して判断する必要があります。
売却の判断や運用について不安を感じるなら、専門家に依頼するのがおすすめです。