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オーナーチェンジ後の家賃値上げは可能です。しかし、家賃値上げに伴うトラブルも想定されるため、適切なタイミングでオーナーチェンジ後の賃料変更をおこないましょう。
本記事では、オーナーチェンジ後の家賃値上げの概要や値上げが認められる正当な理由、起こり得るトラブルやスムーズに家賃値上げができるタイミングを解説します。
オーナーチェンジ後の家賃値上げは可能
オーナーチェンジ後の家賃値上げは可能ですが、条件があります。
- 売却を理由とする賃料変更は不可
- 入居者との合意が必要
オーナーチェンジ後に家賃値上げができる条件について知識をつけておきましょう。
売却を理由とする賃料変更は不可
オーナーが物件を売却したからといって、簡単に家賃を値上げすることはできません。
家賃の値上げには正当な理由が必要なためです。
値上げの正当事由とは、以下のようなものがあげられます。
・相場と比較して賃料が安すぎる
・市場の変動や経済状況の変化により、賃貸人の負担が増えた
・土地や建物の価格が上昇した
詳細は次の項目で解説しますが、以上のような理由がなければ家賃値上げは認められません。
入居者との合意が必要
賃貸人と賃借人は、賃貸借契約において合意を結んで部屋の貸し借りをおこなっています。家賃値上げは契約内容の変更にあたるため、入居者の合意が必要です。
賃貸人から家賃を上げる通知と合意書を送付し、サインをもらわなければ家賃は上げられません。
入居者が家賃の値上げを拒否する場合、退去を選ぶケースが多いです。また、家賃値上げの理由を不服として紛争になるケースもあるため、値上げは慎重におこなわなければなりません。
オーナーチェンジ後の家賃値上げには正当な理由が必要
オーナーチェンジ後の家賃値上げができる正当な理由は以下の3つです。
- 近隣物件と比較して家賃が安い
- 経済的な変動により土地や建物価格が上昇した
- 租税の変更により固定資産税などの負担が増えた
そのほか正当な理由と認められる場合もありますが、一般的な理由について覚えておきましょう。
近隣物件と比較して家賃が安い
近隣にある同条件の物件と比較し、オーナーチェンジ物件の家賃が安い場合は家賃値上げが可能です。
本来の物件価値に合わせた家賃に戻すことは、所有者の権利です。
近隣にある条件が同一の物件家賃を調査し、いちじるしく安い場合は家賃値上げの交渉をしてみましょう。
経済的な変動により土地や建物価格が上昇した
経済動向の変化により、土地や建物の価格が上昇するケースがあります。そのケースの場合、所有者は権利として家賃値上げが可能です。
たとえば駅が開発されて利便性が向上した、建物の修繕や改良工事により建物の価値自体が上昇したといったケースも想定されます。
土地や建物の価格上昇に伴う家賃値上げは、正当な理由として認められます。
租税の変更により固定資産税などの負担が増えた
租税法の変更により、所有者が負担する固定資産税などが増えた場合も、家賃値上げの正当な事由となります。
家賃を値上げしなければ、所有者自身の負担のみが増えてしまうためです。
オーナーチェンジ後の家賃値上げで起きるトラブル
オーナーチェンジ後の家賃値上げは正当な理由があれば可能ですが、トラブルに発展する事例も多いです。
- 入居者に拒否される
- 入居者との交渉が長期化する
- 滞納・空室リスクが上がる
具体的にオーナーチェンジに伴う家賃値上げにおいて、起こり得るトラブルについて解説します。
入居者に拒否される
正当な理由があったとしても、家賃値上げを拒否する入居者はいます。
家賃値上げは契約内容の変更となるため、入居者の合意が必要です。
合意されない場合は入居者が退去するパターンが多いのですが、引越し費用の負担は入居者が負わなければなりません。
入居者がオーナーに対して、引越し費用を負担するよう要求してくる、または家賃を据え置いて住み続けられるように要求してくる場合もあります。
入居者が家賃値上げを拒否した場合は、調停または裁判での問題解決になります。裁判のコストや長期化に伴うストレスを考えると、本当に裁判や調停が必要なのかよく検討しましょう。
入居者との交渉が長期化する
家賃値上げの際は契約当事者間の合意が必須のため、もし入居者が値上げを拒否した場合は交渉が必要です。
当事者間で折り合いがつかない場合は、調停または裁判で家賃値上げの正当性を認めてもらう必要があります。
調停とは裁判官と一般市民から選ばれた調停委員が間に入り、当事者同士で話し合うことです。第三者の目線が入ることで、早期解決を目指します。
裁判では、貸主が家賃値上げを要求して訴訟するケースと、借主が家賃値上げ拒否の訴訟を起こすケースがあります。弁護士費用や不動産鑑定士に支払うコストを考慮したうえで、訴訟するか検討しましょう。
調停・訴訟、どちらの方法を選択したとしても、解決に至るまでは賃料値上げができません。結論が出るまでは、借主は契約書記載の家賃を支払えば良いため、値上げ予定の家賃を請求できず、すぐに家賃値上げの効果が出ない可能性があります。
滞納・空室リスクが上がる
家賃値上げを実施した場合、滞納リスクや空室リスクが上がる可能性があります。
家賃が上がったことで退去を選ぶ入居者が出れば、また管理会社に依頼して客付けを1から始める必要があるためです。
また、入居者が値上げした途端に家賃を払わなくなるケースも想定されます。保証会社を利用していれば、一時的に滞納された賃料は立て替えが可能です。しかし、3〜6か月程度で退去交渉、強制執行に至るケースが多く、退去後はまた新たに入居者を探さなければなりません。
すぐに新しい入居者が見つかれば問題ありませんが、家賃を上げたことで新しい借主が見つかりにくくなる可能性があります。
オーナーチェンジ後の家賃値上げをスムーズにおこなうタイミング
オーナーチェンジ後の家賃値上げは、タイミングを見てスムーズにおこないましょう。
- 契約更新時
- 退去後の募集時
- 退去交渉
入居者に契約途中から家賃値上げの交渉をしても、紛争になるリスクが高いためおすすめできません。可能ならば契約期間の区切りが良い時期を選んで、家賃値上げをおこないましょう。
契約更新時
賃貸借契約の更新に合わせて、家賃を値上げすると交渉がスムーズです。一般的に賃貸借契約は2年間で更新が必要になり、更新するかどうかは入居者の自由意志で選べます。
更新の半年前までを目安として、家賃値上げ交渉を始めましょう。半年あれば交渉の結果が不良であっても、入居者は退去の用意ができるためです。
更新期日までの余裕があれば入居者は引越し先を探す時間があるため、家賃値上げが不服であってもすんなり退去するケースが多いです。
万が一、紛争になっても余裕をもって対応できるよう、契約更新の半年前には家賃交渉を始めましょう。
更新タイミングを利用すれば、更新時の更新料を免除する代わりに値上げに応じてもらうなどの交渉もできます。
退去後の募集時
入居者が退去し、新たに賃貸に出すタイミングが、最も違和感がなくスムーズに家賃の値上げができます。
新規入居者は以前の家賃がわからないため、家賃を値上げしてもトラブルにはなりません。
物件の価値などが上がった以外の理由で値上げしたい場合は、リフォーム設備の追加、部屋のアップグレードをして付加価値をつけましょう。
リフォームやアップグレードの費用が回収できるのかを計算してから家賃値上げをしてください。家賃値上げのためにリフォームをしても、家賃が高すぎて新規入居者が見つからないリスクを考慮しておきましょう。
退去交渉
オーナーチェンジ後の家賃値上げ交渉に伴うトラブルを避けるために、入居者に退去交渉をする方法があります。入居者の引越し費用や新たな引越し先の初期費用を負担し、退去してもらう方法です。
近隣物件と比較して極端に家賃が安いようなケースで用いられます。
入居者の退去次第、次の入居者募集から値上げした家賃で新たに募るため、トラブルも少ないでしょう。
まとめ
オーナーチェンジ後の家賃値上げは可能ですが、正当な理由が必要です。
入居者の合意が取れない場合は調停や裁判になる可能性もありますが、その場合は長期化するリスクもあるため、値上げは相場を分析して慎重におこなう必要があります。
オーナーチェンジ物件の値上げに適切なタイミングは、契約更新または退去時です。または入居者に退去交渉をし、退去してもらった後に値上げもできます。
オーナチェンジ物件の値上げは、信頼できる管理会社に相談しながら、なるべくトラブルを避けて実施してください。