不動産投資の赤字は節税につながる場合がありますが、赤字が続くと借金を抱えるというリスクもある危険なものです。不動産投資を成功させるには、不動産投資における赤字の意味を理解しなければなりません。
不動産投資の赤字は節税につながる書面上の赤字と、キャッシュフローに問題がある赤字にわかれます。
本記事では不動産投資における赤字の意味と事例、節税につながる仕組み、不動産投資で赤字を狙うリスクや赤字が続く物件への対処法をまとめています。
不動産投資における赤字の意味と事例
不動産投資における赤字の意味と事例について解説します。
- 不動産投資における赤字とは
- 不動産投資の赤字には節税効果がある
マンション経営など不動産投資における赤字は、キャッシュが不足することだけではありません。
節税効果がある赤字もあるため、経営における赤字の意味を理解しておきましょう。
不動産投資における赤字とは
不動産投資における赤字とは、不動産投資における所得が出費を超えた際に生じます。
ローン返済額や修繕費などの経費が所得を超えた場合は当然赤字です。
- 【赤字事例】空室率
- 【赤字事例】ローン返済
- 【赤字事例】減価償却費
具体的に不動産投資における赤字が発生する事例について解説します。
【赤字事例】空室率
空室率が高く年間収支がマイナスになる場合は赤字となります。空室からは家賃収入が得られないため、家賃収入が少なくなり、経営失敗につながるリスクがある危険な赤字です。
例として、家賃10万円の部屋が4室あるアパートを経営したと仮定します。空室率が50%の状態が1年継続した場合は、想定の半額しか家賃収入が入りません。
(満室の場合)10万円×4室×12か月=480万円 (空室率50%の場合)10万円×2室×12ヶ月=240万円 |
年間240万円しか所得がなくとも、毎月のローン返済や確定申告後の税金の支払いは生じるため、現金がショートする可能性が高いです。
【赤字事例】ローン返済
次にローン返済によって、不動産投資が赤字になるケースを紹介します。
ローン返済の赤字は、見方によって良い赤字か悪い赤字かが変わります。
たとえば、物件取得を優先してローンを組んだ場合は、良い赤字です。
2,000万円の物件を20年のローンを組んで購入したとしましょう。同物件を賃貸に出して、毎月1万円の赤字が出るとします。キャッシュフローで考えると、20年間で240万円の赤字が出ており、一見キャッシュが不足する悪い赤字に見えるはずです。
しかし、ローン完済後は2,000万円の物件が取得でき、ローン返済の必要もなくなるためその後の家賃収入は100%オーナーの利益です。
2,000万円の貯金を貯めようと思うと、毎年100万円ずつ貯金しなければなりません。つまり月間8万円以上貯蓄を増やす必要があります。
20年後に資産価値のある物件を1万円の赤字で取得できると考えると、キャッシュフロー上は損に見えても、長い目で見れば利益になるでしょう。
反対に、毎月の赤字額が多すぎる場合は危険な赤字です。
先ほどの空室率が高い物件の例で考えてみましょう。
家賃10万円の部屋が4室ある物件のローン返済額が毎月30万円だったと仮定します。
空室率が50%のため、毎月の家賃は20万円しか入って来ず、その時点で10万円赤字です。
年間にすると120万円の赤字となり、20年後には2,400万円の負債を抱えることとなります。
以上のようにキャッシュフローのバランスが著しく悪いと、ローン返済によって悪い赤字になる可能性があるため注意しましょう。
不動産投資の赤字には節税効果がある
不動産投資の赤字は節税効果があります。
確定申告の書面上で利益を抑え、課税される所得額を減らすことであるためです。
たとえば、築古物件を購入した場合、減価償却期間が短いため購入初期の減価償却費が高額になり、減価償却期間内の確定申告の書面上は赤字となります。
確定申告の書面上赤字になっていれば課税所得が減るため、当然税金も安くなるでしょう。
不動産投資の赤字が節税につながる理由
不動産投資の赤字が節税につながる理由は以下の2つです。
- 損益通算
- 減価償却費
損益通算
不動産投資の赤字が節税につながる理由は、損益通算を利用できるためです。
不動産所得で生じた赤字をほかの事業で得た所得の利益から控除する仕組みです。ほかの事業で得た所得が黒字だとしても、不動産所得の赤字を損益通算すると所得額を抑えられ、節税につながります。
【参考】No.2250 損益通算|国税庁
たとえば年収450万円のサラリーマンが、不動産投資をしていると仮定しましょう。450万円は課税対象となりますが、不動産によって出た赤字を通算すれば課税所得が抑えられるため、翌年の所得税や住民税が低くなります。
減価償却費
不動産投資の赤字を節税につなげる経理上の勘定科目として、減価償却費があります。
固定資産の購入額を耐用年数に合わせ、分割して費用計上する勘定項目を意味します。
たとえば、1,000万円で減価償却期間が残り5年の物件を中古で購入し、ローン返済額は年間80万円、毎年100万円の家賃収入を得ている例で考えてみましょう。
1,000万円を5年に分けて計上するため、毎月200万円を費用として計上可能です。
家賃収入100万円-費用計上分200万円=マイナス100万円 ※わかりやすいように利子を省いて計算しています。 |
計算上は赤字となりますが、実際のキャッシュフローは以下となります。
家賃収入100万円-ローン返済額80万円=プラス20万円 |
実際は黒字となっていますが、確定申告の書面上は赤字となるため節税効果があると考えられます。
ただし、減価償却による節税効果はあくまでも減価償却期間内の話です。減価償却後は費用計上していた200万円の書面上の赤字がなくなるため、課税対象の所得だけが増えてしまいます。支払う税額が一気に増加するため、減価償却後のキャッシュフローについて考慮しておくことが必要です。
節税目的で不動産投資を赤字にするリスク
節税のために不動産投資を赤字にしようとするオーナーがいますが、あえて赤字を狙うことは危険です。
- 損益通算できない場合
- ローン返済の遅れ
- 副業がバレる
- 不動産投資の失敗
なぜ不動産投資を赤字にしようとするとリスクが高いのか、その理由を解説します。
損益通算できない場合
損益通算は対象所得が限定されています。
不動産投資が赤字の場合、建物部分の利子は経費として計上できますが、土地部分の利子は経費計上できません。
「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算|国税庁」によると、以下2つは不動産所得の損益通算の対象とならないとされています。
1 別荘等のように主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係るもの
2 不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額
上記条件に該当した場合損益通算の対象とならず、不動産投資の赤字を節税につなげられません。
あえて赤字を狙ったものの意図が外れ、単に所得が減っただけにならないように注意しましょう。
ローン返済の遅れ
不動産所得を下げようと経費を使い、現金がショートするとローン返済の遅滞を引き起こすリスクがあります。
ローン返済が遅れると最終的に物件を手放すこととなります。
また売却には金融機関の許可が必要であり、売却時にはローン残債を金融機関に一括返済する必要があるため、現金がない場合は金策が必要です。
物件が想定した金額で売れる保証もないため、最悪の場合は借金を抱えるリスクがあります。
不動産投資に失敗して借金を抱えた事例や対策はこちらで紹介しています。
副業がバレる
不動産投資で赤字を狙いすぎると、副業がバレる可能性もあります。副業禁止規定がある場合は、本業を失うリスクがあるため注意しましょう。
会社の源泉徴収時に不動産所得が黒字だと、住民税の特別徴税が高くなるため、会社に副業がバレる可能性もあります。
同時に、不動産所得の赤字を損益通算した場合、住民税が給与の額面と比較して安くなるため、同様に副業をしていることが会社に知られてしまいます。
不動産投資を始める場合は会社に確認をとり、規定違反にならないか確認しておこないましょう。
不動産投資の失敗
不動産投資で赤字を狙うことによって経営が成立せず、物件を手放さなければならない事態になりかねません。取得時より高額で物件が売れるケースもありますが、大概の物件は取得時から徐々に価値が下がります。
赤字を狙いすぎて経営が成り立たなければ本末転倒であり、また、それが原因で物件を手放さなければならない際のローン一括返済の現金も不足することになりかねません。
詳しくはマンション経営の失敗パターンや成功率を上げる方法について解説している記事をご参照ください。
不動産投資で赤字が続く場合の対処法
不動産経営の赤字は節税につながるケースもありますが、健全な経営のために黒字を目指すべきです。
- 良い赤字か悪い赤字かの見きわめ
- 管理会社の変更
- ローンの借り換え
- ローンの一括返済
- 物件売却
経営している不動産物件で赤字が続く場合は、以上5つの対処法を実践して収入フローを改善しましょう。
良い赤字か悪い赤字かの見きわめ
まず不動産経営で生じた赤字が、良い赤字か悪い赤字かを見きわめてください。
減価償却や物件取得を優先したために生じる赤字は、長期的に見れば得になるケースが多いです。
反対に、毎月のローン返済額が不動産所得を大きく超えている場合や、キャッシュフローに問題がある場合は悪い赤字と考えられます。
書面上赤字になるだけなら問題ありませんが、実際に現金が枯渇している場合は危険です。
まずは冷静に赤字の内容を分析し、今後の対策を検討しましょう。
管理会社の変更
不動産の管理を任せている管理会社を変更する方法があります。
管理会社の手腕によっては、不動産経営が失敗するケースがあるためです。
集客力のない不動産会社に管理委託していると空室率が高くなり、想定した家賃収入は得られません。
現状の管理会社にこのまま管理を任せて良いのかを検討し、必要であれば管理会社の変更も考えてください。
ローンの借り換え
不動産投資の赤字が続くなら、ローンの借り換えも検討しましょう。
ローンの借り換えによってより良い金利条件でローンを組める、また信用力が向上する可能性があります。
金利が安くなり返済額を抑えられた場合は、余裕が出た資金でリノベーションなどをし、物件に付加価値を加えることが可能です。
また単純に返済額が抑えられ、キャッシュフローが改善する可能性もあります。
ローンの借り換えには諸費用が必要です。借り換え後の返済条件を計算したうえでおこないましょう。借り換えによって、必ず総額が安くなるとは限りません。
ローンの一括返済
不動産投資の赤字が続く場合は、ローンの繰上げ返済や一括返済を検討しましょう。一時的に多額の現金を用意する必要がありますが、利子の圧縮により支払い総額を減らせます。
毎月の返済でキャッシュフローが赤字になり、負債が膨らんでいる状態であれば、ローンの一括返済や繰上げ返済も検討しましょう。
繰上げ返済手数料がかかるケースもあります。また、低金利でローンを組んでいる場合は、繰上げ返済の効果が十分に得られない可能性もあるため、よくシミュレーションしてください。
物件売却
赤字が続く物件は物件自体の魅力が少なく、今後も経営状態が改善しない可能性があります。立地条件が悪い、または物件の設備が古いがリノベーションする余裕がないなら、物件の売却も検討しましょう。
ローン返済が完了していない場合でも、物件の売却金額を一括返済に充当できるため、自己資金の持ち出しも極力少なくできます。
ただし、物件価値によっては想定以下の売却金額になるケースもあるため、まずは自身が所有する物件価値を正しく知っておきましょう。
イエリーチはいつでも無料で物件の査定が可能です。
まとめ
不動産投資の赤字は節税効果がありますが、あえて赤字を狙うことはおすすめしません。
赤字を狙いすぎることで不動産経営の失敗につながるリスクがあるためです。
もちろん、減価償却や損益通算など節税につながる仕組みは活用すべきですが、経費を増やして所得を下げる方法はやめましょう。
不動産投資で赤字が続く場合は、節税どころか経営に失敗するリスクがあります。
記事で紹介した赤字対策を実施し、もしも物件条件が悪いと判断した場合は、物件の売却も検討してください。
その際は無料で査定ができる「イエリーチ」を使い、物件の価値を把握したうえで不動産会社に相談しましょう。