コロナショックによる経済の見通し
新型コロナウイルスが世界中で甚大な被害を及ぼしています。
感染拡大を防ぐべく、各国で外出自粛要請が続いたため、その影響から経済活動が停滞しています。先行きが不透明の今、経済の見通しがどうなっているのかをお伝えします。
世界経済成長率は3%減の見通し
2020年4月14日、IMF(国際通貨基金)が世界経済の見通しを発表しました。1月時点の予測から大幅に下方修正された見通しでは、世界経済成長率は3%減少し、戦前(1929年)の世界大恐慌をしのぐほどの不況が訪れる可能性が示唆されています。
あわせて、新型コロナウイルスの収束とともに2020年後半には回復の動きを見せるとの見通しも発表されていますが、それは企業や失業者などへの迅速なサポートが前提です。企業の倒産や失業者の増加が続けば、回復への道は険しくなることが考えられます。
また、三菱総合研究所は、2020年12月まで経済活動が制限された場合、日本における経済成長率はリーマンショック以来のマイナス成長になると指摘しています。
緊急事態宣言発令による経済活動の縮小
日本でも2020年4月7日、東京を中心とした感染拡大地域に緊急事態宣言を発令。17日には発令地域は全国へと拡大しました。自粛要請の動きにともない、臨時休業を決断する企業や店舗が増えています。休校により、子供を見守るために休職せざるを得ない人もいるでしょう。
人との接触を避けることがコロナ禍を終わらせる最善の方法とはいえ、経済活動の縮小による影響が懸念されます。
コロナ関連倒産の増加
コロナショックによって倒産する企業や店舗が出始めています。帝国データバンクによると、2020年3月の倒産件数は前年比14%増の744件。また、2月中旬から4月中旬におけるコロナ関連倒産は全国で50件ほどですが、その件数は日に日に増加しています。
賃貸物件への影響
経済活動の縮小は、不動産の賃貸事業にも影響を及ぼしています。
リーシング・マネージメント・コンサルティングによる賃貸仲介事業者への調査によると、約41%の店舗がコロナショックの影響を受けていると回答しました。入居申込みのキャンセルや入居日のずれのほか、中国の工場が休業した結果、必要な資材が手に入らず、新築やリフォームの完成が遅れるなどの事態も起こっているようです。
株価は経済の影響をすぐに受けるが、賃料はすぐには受けない
経済が停滞すると株価は下落に転じます。投資する対象が異なるとはいえ、投資家としては株価の動向も気になるところでしょう。しかし、株価は経済活動とリンクした動きを見せますが、実は不動産投資の動きは株価とは異なるといわれています。
経済が及ぼす株価と不動産投資への影響について、さっそく具体的に解説していきましょう。
リーマンショック時の株価
リーマンブラザーズの破綻から始まったのが2008年のリーマンショックです。当時の日経平均株価を確認すると、リーマンショック発生直後の2008年9月30日に11,259円と前日から600円近くも急落。やがて7,000円を割り込むほど株価が停滞しました。
今回のコロナショックでも同様です。日経平均株価は、2020年1月時点で24,000円を超えるほど好調でしたが、コロナショックとともに徐々に下落。4月頭には18,000円を割り込むほど値下がりし、現在も低調が続いています。
このように、世界経済の動向や日本の経済状況は即座に株価に反映するのです。
収益不動産の賃料はここ10年間安定している
次に、首都圏のワンルームマンションを参考に、過去10年間の収益不動産の賃料を見てみましょう。リーマンショックが発生した2008年の賃料は1㎡あたり2,578円。その後、東日本大震災が起こった2011年は2,588円、コロナショック直前の2019年は2,886円と、大きな値動きはありません。
経済が停滞して収入が減った場合、食費や娯楽費を削ることはあるでしょう。しかし、引っ越し代や初期費用に多額のコストがかかるため、住居費を削るのは難しいところです。そのため、収益用不動産の賃料収入は経済の影響を受けにくいといわれています。
最新の首都圏の分譲賃貸家賃相場
経済の影響を受けにくい不動産投資ですが、大恐慌以来とされるコロナショックによる経済悪化にも影響しないのでしょうか。首都圏の分譲マンションの賃料について、最新の動向を見てみましょう。
首都圏における2020年3月期の賃料は1㎡あたり3,050円で、2月に比べると2.4%上昇しています。東京に限定すれば3カ月連続の上昇とのことです。ワンルームマンションではないものの、現時点で収益不動産にはコロナショックの影はまだ薄いといえます。
ワンルームマンションオーナーのコロナ対策案3つ
新型コロナウイルスによる経済低迷も、収益不動産には大きく影響しない可能性について紹介してきました。しかし、100年に1度とされたリーマンショックを超える経済悪化も懸念される今、不動産投資家として万全の対策をとっておいたほうが良いでしょう。
それでは最後に、ワンルームマンションのオーナーに知っておいてほしいコロナ対策案を3つ紹介します。
家賃保証への加入や契約内容の確認
コロナショックが長く続くと、失業で収入が途絶える入居者が現れる可能性もあります。ワンルームマンションオーナーは、家賃の減額交渉・滞納といった事態に備えておくと安心です。
家賃滞納リスクに備えるなら、家賃保証です。まだ未加入であれば、早急に加入を検討しましょう。家賃保証会社はオーナーに代わって家賃滞納などのトラブルに対応してくれます。
また、すでに加入済みの場合にも、契約内容の再確認は必要です。保証内容を確認して、今後予測される不測の事態に対応できないようであれば、保証会社の変更を検討しましょう。
リーマンショック当時は、家賃保証会社の倒産も発生しました。後々困らないためにも、経営体力と豊富な経験を持つ会社を見抜く目が必要です。一定の要件を満たす家賃保証会社は国から登録を受けており、その情報は公開されています。信頼のおける家賃保証会社を選ぶための判断材料として、ぜひ利用して下さい。
入居者へ「住居確保給付金」を告知する
入居者の置かれる状況によっては、家賃を払えないほど困窮する人が現れることも予想されます。もしものときに備えて、国や自治体による支援があることをあらかじめ入居者に告知するのも方法のひとつです。
離職などによって経済的に困窮した人を対象とした「住居確保給付金」は、住まいを失った人に加え、賃貸住宅に居住する人も対象です。支給要件を満たしていれば、家賃の滞納があっても原則3カ月間(最大9カ月間)の家賃が支給されます。
「住居確保給付金」は、申請月の世帯収入が基準額と家賃を足した合計金額以下(東京都1等地の単身世帯では13.8万円以下)、世帯の預貯金合計額が基準額の6倍以下(東京都1等地の単身世帯では50.4万円)、ハローワークで月2回以上の職業相談等、といった給付要件を満たす人が対象です。※細かな条件は自治体により異なります。2020年4月30日よりハローワーク求職の条件は撤廃予定です。
入居者の抱える事情はさまざまですので、ほかにも、社会福祉協議会による「緊急小口資金」や「総合支援資金」といった個人向けの生活支援についても告知しておくと良いでしょう。
テレワークや巣ごもりしやすい物件をアピールする
外出自粛のムードが高まる中、多くの人がテレワークや巣ごもりといった在宅での活動を余儀なくされています。入居者の負担を軽くするような物件づくりもコロナ対策として有効です。
今後テレワークの導入が進んで、住まいが仕事場も兼ねる傾向が続くと、ネット環境の充実は物件選びの重要ポイントとなる可能性が高まります。インターネット使い放題、スマートフォンの通信料を気にせず利用できるWi-Fi環境などを整えることで、今後、入居者に選ばれる物件となるでしょう。
また、自宅で過ごす時間が増えることを考えて、入居者をサポートする付加サービスを付けるのもおすすめです。入居者にムリのない金額設定で、ケーブルテレビやサブスクリプション制(定額制)による動画視聴サービスを提供すれば、きっと喜ばれるでしょう。
まとめ
経済の動向に影響を受けにくい不動産投資。とはいえ、新型コロナウイルスの収束まで見通しが立たない今、ワンルームマンションのオーナーとしてできる限りの対策を取っておくと安心です。特に家賃収入が途絶えないよう、万が一のときの家賃保証、入居者が受けられるサポートについて、情報を整理しておくと良いでしょう。
コロナショックから回復したのちも、当面は外出自粛の傾向が続くことも予想されます。自宅で過ごすことが増える入居者の視点から考え、快適に過ごせる住まいを提供することが、今オーナーに求められているのではないでしょうか。入居者に配慮のある物件が、これから先の安定した家賃収入につながるはずです。