【相続・代理】親のマンションを売却するときの手続きと手順

親が要介護になって外に出られない場合や相続をする場合など、親のマンションを売却するケースは多くあります。親のマンションを売却したい場合はどのようにすれば良いのでしょうか。 ここでは、親のマンションを売却する方法や手続き、手順などを詳しく解説します。


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原則、親のマンションは子どもの独断で売却できない

はじめに、親が名義人となっているマンションは、独断で売却することはできません。では、売却するにはどのようにすれば良いのでしょうか。

売却を検討している場合はふたつのケースによって異なります。それは、親が存命している場合とそうでない場合です。

・親が存命している場合…子どもが代理人や成年後見人として認められる必要がある。
・親が亡くなり、マンションを相続した場合…相続登記を行う必要がある。

さらに、売却できた場合であっても、さまざまな点に注意が必要です。この項では、その注意点について紹介していきます。

売却で得た資金は子どものものではない

親が存命中の場合、代理人や成年後見人として認可されれば、子どもが売却することが可能です。
しかし、ここで注意したいのが、売却で得た資金はあくまで親のものであって、子どものものではないということです。

子どものものではないので、もちろん子どもが勝手に使うことはできません。勝手に使うと、贈与税などの税金がかかる場合や、親族とトラブルになったり、後の相続時に相続人とトラブルになったりする可能性もあるので、注意が必要です。

生前贈与でマンションをもらった場合

親が存命しており、マンションを売却したい場合には、生前贈与という方法もあります。生前贈与では、親から子どもにマンションの所有権が移るため、子どもが自由に売却することが可能です。

ただし、生前贈与時には贈与税が、売却時には譲渡所得税がかかるなど税金対策を講じることが必要です。

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手段1.代理人として親のマンションを売却する

やむを得ない理由から、親のマンションを売却する人も多くいることでしょう。そのような人のためにも、親のマンションを売却するためのさまざまな手段があります。そのひとつとしてあるのが、代理人として親のマンションを売却する方法です。

遠方に住んでいる、または病気やけがで外に出ることができないなどの理由で親自身が手続きをすることが難しい場合があります。

これらのケースで親からマンションを売却したいと意思表明があった場合は、子どもが代理人として親のマンションを売却することができます。しかし、親の代理人になる場合には、次のような一定の条件や手続きが必要です。

親の代理人になる条件

子どもが親の代理人になる条件は、難しいものではありません。親が子を代理人にするという意思があり、そのことを第三者に示すことができれば代理人になれます。

例えば、マンション売却の際に、親が代理を依頼したことが分かる委任状を用意すれば、親の代理人として、売却の手続きをすることが可能です。

代理人になるための手続き

親の代理人としてマンションを売却する場合には、委任状が必要です。委任状には、法的に決まった形式はありません。親が代理を依頼したことが分かる文言があれば良いです。

通常、売却の前には、不動産会社の担当者や司法書士による親との面談で、本人確認と売却の意思確認が行われます。不動産会社や司法書士などは、委任状の雛型(フォーマット)を持っていますので、あらかじめもらっておきましょう。

また、親の代理人として不動産を売却する場合には、一般的に次の書類の添付が必要です。

・委任状(親の署名と捺印が必要)
・親と代理人それぞれの印鑑証明書(3か月以内のもの)
・親の実印、住民票、本人確認書類(コピー可)
・代理人の実印、本人確認書類

これはあくまで一例のため、状況によって添付書類の内容が異なります。準備に時間の要するものもあるため、余裕をもって準備しましょう。

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手段2.成年後見人として親のマンションを売却する

認知症・障害などの理由で、親がマンション売却の意思を表明できない場合は、代理人ではなく、成年後見人として親のマンションを売却することになります。

そこで、ここでは親の成年後見人になるための条件や手続きを見ていきましょう。

親の成年後見人になる条件

成年後見人には、任意後見人と法定後見人のふたつがあります。親が元気な時には、親との契約で任意後見人になることができますが、認知症・障害などの理由で、親が意思を表明できない場合は、法定後見人になります。

通常、成人であれば、法定後見人になる資格はありますが、次の場合は法定後見人になれません。

・未成年者
・解任された法定代理人、保佐人、補助人
・破産した人
・親に対して訴訟をした人やその家族
・行方不明の人 など

 

法定後見人は、家庭裁判所により選定されるため、子どもが選ばれるとは限りません。弁護士などが法定後見人になると、親が亡くなるか意思能力が回復するまで報酬が発生するので注意が必要です。

成年後見人になるための手続き

法定後見人は、家庭裁判所により選定されます。そのため、まずは成年後見人の選任を家庭裁判所に申立てます。申立を受けると裁判所は、審理を行い、成年後見人が選任します。成年後見人の選任までには、数か月程度かかります。

成年後見人は、親の財産目録や収支予定表などを作成し、税務署に提出する義務があります。また、親の自宅を売却する際には、家庭裁判所の許可が必要です。

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手段3.家族信託で親のマンションを売却する

次に子どもが親のマンションを売却する方法に、家族信託があります。ここでは、家族信託について見ていきましょう。

家族信託とは

家族信託とは、委託者(親)が財産の管理や処分など信託する目的を定めて、受託者(子ども)に財産を任せることをいいます。家族信託をすると、受託者である子どもに名義が移りますが、親がその財産の使い方について一定の指示を与えることができます。

親は財産の管理や処分を契約で自由に決定でき、子どもにマンションの売却など広い権限を持たせることが可能となるので、親子ともに便利な制度となっています。

家族信託をする手続き

信託制度にはさまざまな方法がありますが、家族信託では、委託者と受託者が契約を締結する方法により信託が行われます。契約には、通常契約書を作成し、信託内容を記載します。

ただし、これから何十年にわたる資産管理や資産の処分についてしっかり検討したうえで、信託内容を決定する必要があるため、司法書士や弁護士などの専門家に依頼する必要があります。一定の費用が必要となるので、注意しましょう。

家族信託ならではの注意点

家族信託では、信託により例えば親が認知症になった後に、親名義の不動産の売却が可能になるなど、便利な制度です。

ただし、仕組みが複雑で手続きも煩雑です。そのため、実務に精通した専門家が少ないのが実情です。成年後見人制度が使えないなどの理由がある場合に、利用した方が良いでしょう。

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手段4.相続して親のマンションを売却する方法

次に、相続して親のマンションを売却する方法について見ていきましょう。

相続した親のマンションを売却する条件

親が死亡した場合には、マンションを相続して売却します。相続で引き継いだマンションを売却する場合には、相続登記により所有権を子どもに変更しておく必要があります。相続登記をするためには、遺産分割協議を行ったうえで、遺産分割協議書の作成が必要です。

相続から売却までの手続き

相続から売却までには、次の手続きが必要です。

1…遺言の確認
2…相続人・遺産(負債)の確認
3…相続税の算出
4…遺産の分け方を相談・決定(遺産分割協議)
5…相続登記(名義変更)
6…相続したマンションを売却

 

まずは、遺言があるかどうかを確認します。遺言がなければ自由に遺産を分割できるため、遺産分割協議で、子どもがマンションを相続できる旨を決定します。

マンションの相続が決定したら相続登記を行い、マンションを売却します。

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【要注意】親のマンション売却で忘れてはダメなこと

ここまでは、親のマンションを子どもが売却する方法について解説してきました。この項では、親のマンションを売却する際の注意点について紹介していきます。

売却予定のマンションが本当に親名義か確認する

売却を考えたら、まずは売却予定のマンションが本当に親名義か確認する必要があります。特に、親が祖父母から相続でマンションを引き継いでいる場合は、名義が祖父母の場合があります。

その場合は、祖父母から親への相続登記が必要となりますが、祖父母の相続に関する遺産分割協議書が必要となります。祖父母の相続の際、相続人の行方が分からないなど、改めて財産の分割協議をすることが難しいこともあります。

瑕疵担保責任について知っておく

物件の売却後に瑕疵(故障や破損)が見つかった場合は、売り手が保障をする必要があります。
これを瑕疵担保責任といいます。瑕疵担保責任を負わないようにするには、売買契約時にあらかじめ買い手に瑕疵を伝えておく必要があります。そこで、事前に物件の瑕疵は不動産会社に報告しておきます。

事前に瑕疵を発見するためにも、親や親族に瑕疵の有無を確認し、物件を見ていないのであれば自分でチェックしておくことが重要です。

売却することを親族へ伝える

マンションの売却には、大きな金銭がからむため、親族とトラブルになることがあります。
トラブルを防ぐためにも、親族などに事前に売却する旨の相談や報告をしておきましょう。

税金対策をする

マンションを売却して売却益が出ると所得税や住民税(相続の場合は相続税)などの税金がかかります。そこで、税金対策が必要です。最も重要な税金対策が、必要書類を過不足なく準備することです。

売却益は、マンションの売却価格からマンションの取得価格などを差し引いて計算します。しかし、親がマンションを購入した際の売買契約書など、購入価格を証明できる書類が残ってないと、マンションの取得価格の計算が複雑になり、税金が高額になる場合があります。

必ず親が元気なうちに、マンションを購入した際の売買契約書などの書類の保管場所は聞いておく必要があります。

確定申告をする

マンションを売却したら、親の代わりに確定申告が必要です。実は、マンションの売却では、居住用財産に対する3000万円の特別控除など、さまざまな特別控除があります。これらの特別控除を受けるためにも確定申告は必要なため、忘れずに確定申告をしておきましょう。

親が元気なうちから売却

親が要介護になったり、介護のための住み替えが必要になったりする場合は、その費用を捻出する必要があります。マンションの売却が遅れ、これらの費用に充てる資金を捻出できない場合は、さまざまな計画の遅れが発生する可能性があります。

確実にマンションを売却するためには、親が元気なあいだのほうが良いです。委任状を作成し代理人として売却できるのが、最もスムーズな売却方法になります。

マンション売却が得意な不動産会社に仲介依頼する

売却の際には、マンション売却が得意な不動産会社に仲介を依頼しましょう。不動産会社には得意な物件やエリアがあります。マンション売却が得意な不動産会社に仲介を依頼したほうが、買い手がすぐに見つかるなど、有利に働くことが多いです。

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まとめ

親のマンションを子どもが売却する方法には、代理人として売却や、成年後見人としての売却だけでなく、家族信託や相続による売却などさまざまな方法があります。

親子の事情にもっとも合う方法を選ぶ必要がありますが、親が元気なうちから準備をしなければならないものもあります。できるだけ早く、自分に合った方法がどれかを考え、準備を始めるようにしましょう。