節税目的のワンルームマンションは注意!今の節税効果はどのくらい?

手頃な資金から投資を始められるワンルームマンション投資が、サラリーマンを中心に人気を集めています。不動産投資は安定した家賃収入のほか、高い節税効果が見込まれることも魅力のひとつですが、どのような仕組みによって節税につながるのかご存じでしょうか。この記事では、ワンルームマンションへ投資するときの節税効果や節税の仕組みについて詳しく解説していきます。


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【おさらい】ワンルームマンションで節税できるカラクリ

減価償却とは、長期間使うモノの劣化部分を経費として計上する考えのことを指します。マンションの建物や付属設備は減価償却に該当し、毎年一定額を経費として加えることができるのです。実際の出費はないのに経費に加えられるという点で、減価償却費は節税の大きなポイントといえます。

個人の場合、所得税の還付には確定申告が必要になりますが、赤字が出たときには源泉徴収額の一部を還付請求することもできます。

日本の税制では、複数の所得がある人は、基本的にすべてを合算した金額を基準にして税額が計算されます。そして、複数ある所得のうちどれかが赤字になれば、その分がマイナスとして計算されます。つまり、所得がひとつだけのときよりも小さくなるというわけです。

所得税は累進課税制度が採用されているため、所得が小さくなることで、1段階低い税率が適用されることもあります。その場合には、節税効果が大きく感じられるでしょう。

ちなみに、金融機関から借り入れた融資の利子は経費になりますが、元本は経費にならないので注意しましょう。

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【4種の節税効果】どれくらい節税できているか計算

ワンルームマンションを含め、不動産投資をすると、所得税、住民税、相続税の3種類の税金の節税を実現できる可能性があります。

まずは、それぞれの税金ごとに、ワンルームマンション投資が節税につながる仕組みについてお伝えします。

所得税

ワンルームマンションでもっともわかりやすいのが、所得税の節税効果です。

所得税は、収入からかかった経費を差し引いた課税所得によって決定されます。つまり、経費が多ければ多いほど所得税は少なくなるわけですが、サラリーマンの給与と不動産投資による収入および経費は損益通算することができるのです。

たとえば、給与500万円のサラリーマンがワンルームマンション投資で100万円の家賃収入を得ている場合、経費が300万円だとすると以下が課税所得になります。

【500万円+100万円-300万円=300万円】

仮に所得税率を30%とすると、給与収入では150万円だった所得税が、不動産投資による損益通算によって90万円に。つまり、60万円の節税につながります。しかも、投資により100万円の収入増を実現していることを考えると、メリットはかなり大きいといえるでしょう。

ちなみに、不動産投資の経費には、修繕積立金や損害保険料、固定資産税などのほか、減価償却費も含まれます。

住民税

所得税と同じく、住民税も損益通算によって税額が決まります。そのため、所得税の節税が叶えば、自ずと住民税の節税も実現できることになるのです。

住民税は税率が一律10%です。先の例を住民税について当てはめてみると、給与のみなら課税所得が500万円で税額が50万円ということになります。これに対して、ワンルームマンション投資を行うと、所得が300万円になるため、住民税の税額は30万円です。

所得税ほど大きくはありませんが、20万円の節税につながることになります。

ただし、住民税は前年度課税方式をとっています。2020年に不動産投資を始める場合、所得税は2020年度分から対象ですが、住民税は2021年度分から対象となります。

相続税

不動産投資を相続税の節税につなげたいと考える人も多いでしょう。個人と法人とで節税につながる仕組みが異なりますので、それぞれ確認していきましょう。

個人の場合、ワンルームマンションの購入金額と物件ごとの相続税評価額に生じた差が、相続税の節税につながります。たとえば、2,000万円で購入した物件の相続税評価額が1,100万円だったとすると、現金のまま相続するのに比べて900万円の節税効果があるということになります。

不動産評価額は、以下で計算できます。

・土地 ⇒【路線価×借地権割合】
・建物 ⇒【固定資産税評価額×(1-借家権割合×借地権割合)】

さらにワンルームマンションなら、ほとんどの場合で小規模宅地等の特例の対象になります。対象となる不動産は200平方メートル以下で、相続税の課税額が50%減額されるというものです。
小規模宅地等の特例が適用される前の相続税の税額が1,100万円なら、適用後は550万円です。この場合、550万円分を節税できたことになります。

一方、法人化した場合、ワンルームマンションは法人(会社)の資産となるため、個人のような相続税の対象とはなりません。また、家賃収入も会社の収益としてカウントされるようになります。相続人を法人の役員にしておくと、家賃収入を役員報酬として支払うことができます。贈与税を払うことなく、相続人に資産を分配することも可能です。

ただし、法人になると法人税の対象になるなど、個人ではかからないコストが発生することも想定しておく必要があります。

このように、ワンルームマンションを売却する際は税金がかかりますが、税金だけでなく仲介手数料をはじめとした費用も生じます。
マンション売却にかかる費用を理解するために、仲介手数料の上限や安く抑えるコツ解説している記事もあわせてご覧ください

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節税目的のワンルームマンションは注意が必要

節税目的でワンルームマンション投資を行っている人は多いですが、上手くいっていない人もいるかもしれません。節税目的なら、次のような点も考慮しておく必要があります。

減価償却費の効果が薄くなる

減価償却費を計上できることで、ワンルームマンション投資が節税になる面が多いです。しかし、減価償却費はいつまでも計上できるわけではありません。資産の種類ごとに耐用年数が決められており、その期間のみ減価償却費を計上できる仕組みです。

耐用年数が過ぎた資産は、それ以上減価償却費を計上できないため、節税の効果は薄くなります。付属設備などの減価償却費を計上できなくなってから、失敗したと思ってしまう人も多いです。

ワンルームマンション投資を行っているなら、減価償却費を計上できなくなった後のことも考えておかなければなりません。今のうちから、長期的に見て節税効果が高いのか低いのか判断しておくことが大切です。

節税以上に赤字になる

ワンルームマンション投資を始めたばかりの頃は、物件の維持費にあまり費用がかかっていなかったでしょう。新しい物件なら入居希望者が多く、空室リスクも小さいです。最初の入居者を見つけるのにあまり苦労しなかった人も多いかもしれません。

しかし、ワンルームマンション投資を始めてから年数が経過すると状況も変わってきます。基本的に建物は年数が経過すれば価値が下がっていくため、修繕が必要になることも多いです。マンションのオーナーは修繕積立金を毎月負担していますが、その金額が上がる可能性があります。

また、マンションが古くなれば、入居者を見つけるのにも苦労することが多いです。現在の入居者が退去してからすぐには次の入居者が見つからないこともあります。空室の期間ができてしまえば、その間の家賃収入はありません。支出だけが増えることになります。

そのような事情から、将来的にワンルームマンション投資が赤字になってしまうことも少なくないです。赤字の金額は損益通算でその年に給与所得から差し引きできます。

しかし、赤字額が大きすぎると差し引きしきれなくなることもあります。その場合には、繰越控除という制度を利用することが可能です。翌年以降の所得から残った赤字分を差し引くことができます。

ただ、赤字の繰越控除は3年間までしか利用できません。また、数年間赤字が続けば、いくら税金が安くなってもそれ以上に経営が苦しくなってくるでしょう。

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節税効果がないワンルームマンションはどうする?

現在所有している投資用ワンルームマンションに節税効果がないことが判明したら、どうすればいいのか見ていきましょう。

収支計画を決定する

本来なら投資用の物件を購入する際に収支計画を立てるはずです。将来にわたって十分な利益が得られると判断したからこそ、現在所有している物件を購入したのでしょう。

しかし、収支計画に関して不動産仲介会社に一任してしまう人も少なくありません。その際に節税のみを目的としているケースも多いです。

ただ、ワンルームマンション投資を行う目的は、必ずしも節税目的のみとは限りません。

たとえば、キャピタルゲインを得ることを目的にしている人もいます。将来的に物件の市場価値が上がるのを見越して購入し、実際に上がったタイミングで売却します。

また、インカムゲインを目的としてワンルームマンション投資をする人も多いです。毎月家賃収入を得ることができれば、安定した副収入になります。高齢者なら年金の足しにできて、豊かな老後を送れるでしょう。

ほかにも、物件を相続するためなど、ワンルームマンション投資の目的はさまざまあります。物件を保有する目的がまだはっきりしていないなら、今からでも目的を決めて、出口戦略を練ることが大切です。

繰り上げ返済を検討

ワンルームマンション投資を行っている人の多くは、金融機関から借入をして物件を購入しているでしょう。ローンの返済が問題なく行えていても、今のうちから物件が古くなったときに備えておくのが望ましいです。経営が苦しくなる前に繰り上げ返済をすることで、将来の支出を抑えることができます。

繰り上げ返済というのは、金融機関からの借入金の一部または全部を、毎月の返済とは別に返済することです。繰り上げ返済を行えば、予定よりも早くローンの残高を減らすことができます。ローンの利息は残高を元にして計算されるため、これが早く減ることで、利息も減らせるというわけです。

繰り上げ返済を行うには、資金的な余裕がなければなりません。まだマンションが新しく、節税効果も効いているうちに行うのが良いでしょう。

また、ローンの一部を繰り上げ返済した後は、残高が予定と違ってくるため、毎月の返済方法が変わります。予定よりも短い期間で返済する方法と、予定どおりの期間で毎月の返済額を減らす方法があります。

具体的な方法について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

【マンション投資の繰り上げ返済】メリットデメリットを把握して投資戦略を考えよう!

残債ありでも売却は可能

自分が投資用に所有しているワンルームマンションに節税効果がなくなったら、売却を検討する人もいるでしょう。ただ、節税効果がなくなっても、まだローンを完済していない状態というケースも多いです。そのような状態の物件は売却できないものだと思っている人もいるかもしれません。

しかし、ローンの残債が残っている物件であっても売却できる場合があります。

まず、アンダーローンかオーバーローンか確認してみましょう。アンダーローンというのは、物件の売却価格が、ローンの残債よりも高い場合のことを指します。対してオーバーローンは、残債の方が物件の売却価格より高い場合です。

そして、アンダーローンなら、ローンの残債があっても物件を売却できます。ただし、物件売却直後に、ローンの残債を一括返済することが条件です。

オーバーローンの場合は、基本的に物件を売却することはできません。返済が進めば残債も減っていきますが、同時に物件の価値も下がっていきます。そのため、現段階でオーバーローンなら、売却時に持ち出しが発生することが多いです。

残債がある状態の物件を売却するときのことに関しては、こちらの記事で詳しく説明しています。
残債のあるマンションは売却可能!オーバーローンでもより高く売るには

また、残債や物件の状態によっては、アンダーローンとオーバーローンの判断が難しいこともあるかもしれません。その際は、専門家に相談してみましょう。

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まとめ

手頃な費用で始められるワンルームマンション投資ですが、より高い節税効果を得るためには、節税の仕組みや減価償却費を経費に計上する計算方法など、それなりの知識が必要です。

ただ、節税を意識するあまり、不動産投資の魅力である家賃収入が手薄になっては意味がありません。

ときには専門家にも意見を仰ぎながら、安定した収益と効果的な節税の実現を目指しましょう。