マンションの売却益には譲渡所得税がかかります。
「税金の計算をどのようにしたらいいかわからない」と悩む方もいるでしょう。
上記の方に向けて本記事では、マンションの売却益に対する基礎知識や活用できる控除を解説します。
マンション売却した際の支払うべき税金の金額がわかるため、用意しておくべき手元資金が明確になります。
本記事で紹介します税率などは2023年2月18日時点の情報です。
マンションの売却益の税金計算をおこなう前に知っておきたい基礎知識
マンション売却益にかかる税金計算をおこなう前に、以下4つの知識を知っておきましょう。
・譲渡所得
・譲渡所得税
・登録免許税
・印紙税
譲渡所得
譲渡所得とは、マンションなどの不動産を売却(譲渡)した際に得る所得です。不動産以外に、株式やゴルフ会員権を売却しても譲渡所得になります。
譲渡所得は売却した資産の種類によって、税金の計算方法が異なるため注意しましょう。本記事では、マンションをはじめとした不動産を譲渡したときの税金の計算方法を解説します。
譲渡所得税
譲渡所得税は、譲渡所得にかかる税金です。譲渡所得は、給与所得・事業所得の労働によって得られる収入とは分離して税金を計算します(分離課税)。
収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=譲渡所得
また所有期間によって税率が異なるため、節税したい方は、長期間所有してからマンションを売却するのがおすすめです。
不動産の譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点での所有期間によって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分類されます。
・長期譲渡所得:所有期間が5年を超えている
・短期譲渡所得:所有期間が5年以下
所有期間の考え方について、以下2つの例をもとに考えてみましょう。
2017年4月30日に購入して、2023年5月1日に売却したケース
上記のケースでは、譲渡した時点での期間は6年0か月で、2023年1月1日時点での所有期間は5年9か月のため、長期譲渡所得と判断されます。
2017年4月30日に購入して、2022年5月1日に売却したケース
上記のケースでは、譲渡した時点での期間は、5年0か月です。しかし2022年1月1日時点での所有期間は、4年9か月のため短期譲渡所得と判断されます。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率の違いは。下記の表を参照してください。
合計の税率 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | |
長期譲渡所得 | 20.315% | 15% | 0.315% | 5% |
短期譲渡所得 | 39.63% | 30% | 0.63% | 9% |
上記の表でわかる通り、短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の差は2倍近くあります。仮に1,000万円の譲渡所得が発生し、全ての控除を使用しない前提で税金額を計算してみましょう。
長期譲渡所得の税額は「1,000万円×20.315%=2,031,500円」です。
短期譲渡所得の税額は「1,000万円×39.63%=3,963,000円」となります。
譲渡所得が1,000万円のケースでは、税額が「3,963,000円-2,031,500円=1,931,500円」も変わってきます。節税したい方は5年以上所有してから、マンションを売却しましょう。
登録免許税
登録免許税とは、不動産の売買や相続などで名義が変わった際にかかる税金です。登記税とも呼ばれています。
登録免許税額の計算式は「固定資産税評価額×税率」です。税率は動産の種類や名義が変わった理由により異なるため一概には言えません。
マンションを売る際に関係する「抵当権抹消登記」の費用は、不動産の数×1,000円です。
印紙税
印紙税とは、課税対象となる文書を作成した際に課される税金です。マンションの売却では売買契約書が該当します。
印紙税は契約金額によって変動し、契約金額が高額になると印紙税も高くなります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
売買契約書に印紙が貼付されていなくても、契約自体は有効です。ただし印紙を貼付していないと過怠税が課せられるため注意しましょう。
また売買契約書を電子で発行していれば印紙税を納める必要がありません。
マンションの売却益が生じた際に活用できる控除
マンションの売却益が生じた際に活用できる控除を2つ解説します。マンションは取り扱う金額が大きくなるため、多額な売却益が発生することも珍しくありません。
使える控除の活用で適切な節税をおこなわないと、多額の税金を納めることになります。2つの控除を使い、適切に節税しましょう。
ただし解説する2つの控除を活用するには、以下の4つの条件を満たさなければなりません。
・売却先が配偶者や親子など親族でない第三者に譲渡する
・居住しなくなってから、3年経過後の12月31日までに譲渡する
・前年と前々年に居住用財産の譲渡の特例を受けていない
・確定申告をおこなう
居住用財産の3,000万円の特別控除
控除の一つ目は居住用財産の3,000万円の特別控除です。生活の基盤となっている住宅を売却すると、売却益から最大3,000万円を差し引ける制度です。
つまり生活の拠点となっていたマンションを売却したケースで、売却益が3,000万円までなら税金が基本的にかかりません。詳細に関しては税理士にご相談ください。
居住用財産の軽減税率の特例
控除の二つ目は居住用財産の軽減税率の特例です。生活の基盤となっている住居を売却し、先述した3,000万円の特別控除を活用してもまだ売却益が生じているケースで使用する制度です。
3,000万円控除後の譲渡所得金額の部分が軽減税率の適用が受けられます。つまり「売却益-購入額-取得費-3,000万円>0」のケースで利用が可能な制度です。税率は下記を参照してください。
3,000万円控除後の譲渡所得金額 | 税率の合計 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 |
6,000万円以下の部分 | 14.21% | 10% | 0.21% | 4% |
6,000万円超の部分 | 20.315% | 15% | 0.315% | 5% |
ただし譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が10年未満では使用できないため注意が必要です。
マンション売却益の税金計算をシミュレーション
マンションの売却益が生じた際の税金計算をシミュレーションしてみましょう。シミュレーションでは、売却益にかかる譲渡所得税を前提に行います。
登録免許税や印紙税は、売却損でも納税義務が発生するため、シミュレーションから除外しています。注意してください。
2つのケースに分けてシミュレーションします。
下記を参照してください。
・譲渡価格:8,000万円
・取得費:1,000万円
・譲渡費用:100万円
長期譲渡所得と短期譲渡所得のケース
前提条件をもとにすると、長期譲渡所得の税金額の計算式は次の通りです。
・(8,000万円-1,000万円-100万円)×20.315%=14,017,350円
短期譲渡所得のケースでは、税金額の計算式は次の通りです。
・(8,000万円-1,000万円-100万円)×39.63%=27,344,700円
両者の税金額を比較すると「27,344,700円-14,017,350円=13,327,350円」です。売却額と売却時期によっては、1,000万以上の差が生まれます。
所有期間が10年を超えた・10年未満居住用のマンションを売却したケース
所有期間が10年を超えた居住用のマンションを売却したときの税金額の計算式は、次の通りです。
(居住用財産の特別控除と軽減税率の特例が適用される場合)
・(8,000万円-1,000万円-100万円-3,000万円)×14.21%=5,541,900円
10年未満居住用のマンションを売却したときの税金額の計算式は、次の通りです。
(居住用財産の特別控除が適用される場合)
・(8,000万円-1,000万円-100万円-3,000万円)×20.315%=7,922,850円
上記2つの税金額を比較すると「7,922,850円-5,541,900円=2,380,950円」です。3,000万円の特別控除がある居住用マンションの売却であっても、所有期間によっては数百万円単位で税金が変わってきます。
まとめ
本記事では、マンションの売却益にかかる税金の計算方法について解説しました。マンションの売却益には譲渡所得税がかかります。
さらに利益が出ていなくても登録免許税と印紙税もかかるため、売却時のシミュレーションの際は忘れないようにしましょう。
また本記事の税金額のシミュレーションはあくまで一例です。最新の税制や詳しい税金の計算は税理士や不動産会社にご相談ください。