マンション経営における節税の仕組みとは|メリット以外に知っておくべきリスク

マンション経営における節税の仕組みとは|メリット以外に知っておくべきリスク

目次1 マンション経営における節税のカラクリ2 節税目的でリスクを抱えることも!?マンション経営における失敗3 リスクを … 続きを読む マンション経営における節税の仕組みとは|メリット以外に知っておくべきリスク


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相続税・所得税を節税するために、マンション購入や経営を考えている方もいるでしょう。
しかし、節税メリットだけを考えてマンション経営を始めると、経営リスクを抱えることもあります。

本記事は下記のような方におすすめです
  • シミュレーションが甘く借金を抱えるのではないかと不安
  • 節税スキーム自体が使えないため、支出が高くなるのではないかと不安

この記事では、マンション経営における節税のカラクリ、マンション経営におけるリスクを解説しています。
そのうえで、最後にリスクを下げて節税メリットを享受する方法も紹介しています。
最後まで読み、節税しながら失敗のないマンション経営のコツを学びましょう。

マンション経営における節税のカラクリ

マンション経営における節税のカラクリ

マンション経営は節税対策に使われることも多いです。
しかしどのような仕組みかわからない方もいるでしょう。

  1. 相続税の節税
  2. 所得税・住民税の節税
  3. 固定資産税の節税

具体的にマンション経営において、以上の3つの税金を節税できます。
節税対策にマンション経営を始めたい方は、概要を理解しておきましょう。

相続税の節税

マンション経営により、相続税を節税する方法もあります。
現金をそのまま相続するよりも、不動産に変えてから相続した方が相続税評価額が下がるためです。
現金は額面通りの金額で評価され、相続額に応じて相続税がかかります。
相続税の計算式は以下のとおりです。

課税価格の合計額ー基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)=課税遺産総額
【引用】No.4152 相続税の計算|国税庁

5,000万円を現金で相続した場合と不動産で相続した場合(法定相続人1名)の相続税を比較しましょう。
相続税の基礎控除額は、3,600万円(3,000万円+600万円×1人)です。
相続税の税率は、国税庁ホームページ「No.4155 相続税の税率」を参照します。

相続税の比較

<現金の場合>
5,000万円ー3,600万円=1,400万円
1,400万円×15%-50万円=160万円

<不動産の場合>
4,000万円(固定資産税の評価額と同額80%で計算)-3,600万円=400万円
400万円×10%=40万円

現金は額面通りの評価となります。
一方で自宅として使用している建物の評価額は固定資産税評価額と同等です。
ただし土地の評価額を求める計算式は、エリア・形状などさまざまな条件によって異なるため詳しくは税理士にご確認ください。

【参考】No.4155 相続税の税率 国税庁
【出典】No.4602 土地家屋の評価 国税庁

上記比較表のように、同じ額の相続でも現金と不動産によって、相続税が大きく変わることがわかります。
不動産購入時にローンを組んでいたケースは、相続税評価額より残額が差し引かれるため、さらに相続税が下がる場合もあります。

所得税・住民税の節税

マンション経営のほかに収入がある方は、所得税や住民税の節税メリットもあります。
マンション経営が赤字になった場合、損益通算をして給与に課税される税金を減額できるためです。

損益通算とは

各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のもの(不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得)についてのみ、一定の順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等を計算する際にほかの各種所得の金額から控除することです。

【参考】No.2250 損益通算|国税庁

例えば、給与所得が450万円、家賃収入が300万円、マンション経営で支払った経費が850万円あったとしましょう。
つまりマンション経営で550万円の損失(赤字)が生じている状態です。

単純計算すれば合計所得金額は750万円です。
実際は、750万円からマンション経営における損失(赤字)である550万円を差し引くため、課税される所得金額は200万円となります。

マンション経営をしていない場合の給与所得450万円で所得税を計算すると、47万2,500円(450万円×20%-42万7,500円)となります。
一方で損益通算後の200万円に対する所得税は、10万2,500円(200万円×10%-9万7,500円)です。
※所得税額の計算は、国税庁の「No.2260 所得税の税率」を参照しています。


シミュレーションの条件では、不動産投資の損失によって所得税を37万円(47万2,500円-10万2,500円)も節税できました。


また、給与所得450万円で住民税を計算すると45万円(450万円×10%)です。
一方で課税される所得が200万円の住民税は、20万円(200万円×10%)となり、25万円(45万円-20万円)も節税できる計算です。
※住民税の計算では、均等割を考慮していません。

補足

損益通算で住民税・所得税を節税する場合に、本当にマンション経営を赤字にする必要はありません。減価償却費などを用いて帳簿上赤字であれば、損益通算で所得額を抑えられます

節税目的でリスクを抱えることも!?マンション経営における失敗

節税目的でリスクを抱えることも!?マンション経営における失敗

マンション経営を節税目的で開始すると、失敗して借金を抱えるリスクがあります。

  1. 高額のローン
  2. 維持費・管理費が高額
  3. 資産価値の低下
  4. 経費を税務署から否認される
  5. タワマン節税の封じ込み

節税のためにマンション経営を始めたはずが、思わぬ落とし穴でローンや税金の支払いが高額になるケースも覚えておきましょう。

高額のローン

マンション購入時には、金融機関から融資を受けます。
頭金を設定せずにローンを組むなどシミュレーションが甘いと、高額ローンの支払いに苦しむことになる可能性があります。


また住宅ローンの金利にも注意が必要です。
日本銀行は2022年12月の金融政策決定会合において、長期金利の変動幅を0.25%から0.5%へ拡大することを決定しました。
その後長期金利の変動幅の拡大により、金融機関の資金調達コストが上昇し、それに伴って住宅ローンの固定金利が上昇する動きを見せました。

2023年1月には、日本のメガバンクが10年固定型の住宅ローンの基準金利の引き上げを発表しました。
このように金融政策で変動金利が上昇し、返済額が増額する可能性がある点にも注意しましょう。

維持費・管理費が高額

マンション経営は維持費や管理費も高額です。
節税できても、結局のところ経営に必要な維持費や経費で、節税分を使い果たしてしまうケースもあるでしょう。
先述したローン返済額の変動と併せて、入念なシミュレーションをしておかなければ、節税メリットを享受できません。

資産価値の低下

【引用】首都圏の不動産流通市場(2021年)

マンションは建築された時点から、資産価値が低下します。
新築から5年以上経過すると、資産価値は約10%程度下落し、築年数と比例して下がります。
節税メリットはありますが、マンション自体の価値が下落することで売却価格が落ち、売却益が得られないリスクも想定しておきましょう。

経費を税務署から否認される

マンション経営における所得の確定申告時は、経営にかかった費用を経費として計上します。しかし、どのような費用でも経費として認められるわけではありません。

例えば、オーナーが客付けと自家用で兼用する自動車を1,000万円で購入したとします。
8割家族が使用し、2割程度しか客付けに使っていない場合は、経費に認められる範囲は200万円です。
※厳密にいえば、車などの高価な品を購入した場合は、耐用年数に合わせて分割して経費計上が必要です。今回はわかりやすくするため、減価償却を省略しています。
仮に100%経費で計上した場合は、税務署から否認され、脱税していると疑われて調査になるリスクもあります。

タワマン節税の封じ込み

高額なタワーマンションを購入し、節税対策に使われるケースも、最近は税務署によって否認されるケースが増えています。

タワマン節税とは

相続税評価額と購入時価の開きが大きいタワーマンションの特性を利用した相続税の節税のこと

タワーマンションは周辺環境や設備の良さから、購入価格は非常に高額です。
しかし、相続税評価額は時価よりも低くなるため、現金で相続するよりも相続税を節約できます。
上記の節税スキームは、資産のある人に有効な節税方法として活用されてきました。


しかし、国税庁が相続人を相手取り、物件の再評価額に基づく追徴課税を請求した事案で、最高裁は2022年4月19日に国税庁の申し立てを認め、判決を出しています。
【参考】令和2年(行ヒ)第283号 相続税更正処分等取消請求事件
上記事案では、購入時の借入額を相殺、基礎控除を差引きしたことで、相続税は0円で申告していました。
しかし、最高裁は国税庁の申し立てである再評価額を基準とした相続税を認め、相続人に約3億円の追徴課税の支払いを命じています。

上記のように、タワマン節税は国税庁の規制も厳しくなっています。
節税のためにタワーマンションを購入しても、同じスキームが使えなくなるケースがある点に注意しましょう。

リスクを抑えたマンション経営のコツ

リスクを抑えたマンション経営のコツ

節税メリットだけを考えてマンション経営を始めると、思わぬリスクを抱えることにもなります。

  1. マンション経営をサポートする不動産会社選び
  2. 最適な節税対策の見極め

マンション経営のリスクを避け、適切な節税をおこなうために覚えておくべきコツを解説します。

マンション経営をサポートする不動産会社選び

マンション経営は綿密なシミュレーションが必要です。
しかし、初めてマンション経営を検討している方は、必要経費や資産価値の低下率の計算が難しいでしょう。
長年にわたって不動産売買、管理をしてきた不動産会社を選定し、しっかりしたサポートを受けるべきです。
不動産会社は税務サポートや相談に乗っている場合も多く、節税についても相談できます。

最適な節税対策の見極め

節税メリットのためにマンション経営を始める際は、最適な節税対策を見極める必要があります。
マンション経営が初めての方にはわかりづらいですが、マンションを一棟所有するか区分所有するかによっても、課税される税金が異なります。

また、タワマン節税のように、税制の改正や規制強化によって、節税スキーム自体が使えなくなっているケースもあります。節税のためにマンションを購入して相続しても、結局申告が否認されれば、想定以上の税金を課されます。
不動産会社や税理士に相談し、無理なく節税できる方法を探すようにしてください。

まとめ

マンション経営はうまくおこなえば、節税メリットを享受できます。
しかし、節税の中身を把握しておかないと、失敗して借金を抱えることにもなりかねません。

マンション経営を始める際は、ノウハウと実績のある不動産会社を選定し、購入前からサポートを受けるようにしてください。
適切な節税をおこない、後悔のないマンション経営にしましょう。