マンションを売却した年も、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)が適用されるか不安という方もいるでしょう。
住宅ローンの償還期間が10年以上あるマンションを売却し損失が出た場合、売却した年も所得税額を一部控除することができます。
この記事では、マンションを売却した年も控除することができるケースについて解説します。そのうえで、本控除と併用できる特例を紹介しています。
マンション売却後も住宅ローン残高の一部を控除することができる
住宅ローンの償還期間が10年以上あるマンションを売却し損失が出た場合、所得税額を控除することができますが、一定の条件があります。
条件を把握し、税金を節約しましょう。
- マンション売却をした年に売却で損失が出た場合
- マンション売却益を得た場合は対象外
- 併用できる制度・できない制度は要確認
マンション売却をした年に売却で損失が出た場合
マンションを売却したものの利益が出ず損失が生じた場合は、その年も年末残高等の0.7%を所得税額から控除(上限額あり)することができます。
この場合の損失とは、マンションを売却した金額が売却費用・取得費用を下回った場合と考えます。
つまり、購入時に5,000万円かかったマンションを、3,000万円で売却し、売却時に100万円の費用がかかったとしましょう。
この場合は、3,000万円-100万円-5,000万円=2,100万円が損失となるため、本控除の適用対象です。
(計算を簡単にするため、取得費を5,000万円として計算しています)
マンションを取得したとき(購入や相続など)にかかる費用を指します。
例:購入時の代金、税金(登録免許税・印紙税など)、仲介手数料など
マンション売却益を得た場合は対象外
マンションを譲渡した際に、売却益が出た場合は本控除の対象外となります。例えば5,000万円で取得したマンションを、5,200万円で売却し、売却費用が100万円かかったとしましょう。
この場合は100万円の利益が出たことになるため、本控除の対象にはなりません。
この場合は、マイホームを売ったときの特例(3,000万円特別控除)を利用して節税に役立てることは可能です。
詳しくはマンションの売却益が出た場合の節税方法について解説している記事をご参照ください。
併用できる制度・できない制度は要確認
マンション売却後に本控除を受ける際は、併用できる制度とできない制度がある点に注意してください。
主な特例は以下の通りです。
併用可能 | 併用不可 |
・マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 ・特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | ・居住用財産の譲渡所得の特別控除 ・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例 ・特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例 |
※1居住年およびその前2年の計3年間に特例の適用を受けていないことが必要です。
※2居住年の翌年以後3年以内に、居住した住宅以外の資産を譲渡している場合、特例の適用を受けていない必要があります。
どちらの節税効果が大きいかよく検討したうえで、適切に控除制度を利用してください。
【参考】No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)国税庁
マンション売却後に住宅ローン控除を受けるための注意点
マンションの売却時に損失が出た場合はその年も控除を受けることができます。
しかし、損失が出ていること以外にも以下の点に注意してください。
- 控除を受ける年の12月31日まで居住
- 住宅ローンの償還期間が10年以上
- 床延べ面積が40平方メートル以上
【参考】No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)国税庁
【参考】No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
控除を受ける年の12月31日まで居住
控除を受けるためには、その年の12月31日まで居住している必要があります。
さらに厳密にいうと、住宅取得後半年以内に居住しなければなりません。
たとえば2022年末に契約が成立し、年末まで住んで年明けに住民票を新住所へ移せば、2022年分の売却損失については本控除の対象です。
住宅ローンの償還期間が10年以上
売却するマンションに対して、売却契約日の前日において償還期間10年以上の住宅ローン残高があることが必要です。
マンション売却前に必ず確認しておきましょう。
床延べ面積が40平方メートル以上
本控除の対象となる住宅は、床延べ面積が40平方メートル以上である必要があります。
40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、申告者の所得が1,000万円を超えてはならないという規制がある点に注意してください。
また50平方メートルを超える場合は、床面積の2分の1に自らが住んでいることが条件です。50平方メートル以上の床延べ面積がある場合は、年間所得が2,000万円以下(新築住宅)、3,000万円以下(中古住宅)である必要があります。
譲渡損失が大きい場合に併用可能な特例とは
マンションを売却した年も、一定の条件を満たせば住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)が適用されることを紹介しました。
次より、住宅借入金等特別控除と併用可能な特例を紹介します。
譲渡損失が大きい場合は「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の併用がおすすめ
住宅借入金特別控除と「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を併用することができます。
この特例を併用すると、譲渡損失に関して、その年の他の所得から控除(損益通算)することができます。その年に損益通算しても控除しきれなかった場合は、翌年以後3年間に渡り繰り越して控除(損益通算)が可能です。
令和5年12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除(繰越控除)することができます。
【引用】No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
この特例も適用を受けるための要件があるため、確認してから申請をおこないましょう。
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を適用するための注意点
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を適用するには、主に下記要件を満たす必要があります。
- 譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を越える
- 住宅ローンの償還期間が10年以上
- 合計所得金額が3,000万円を超えない
- マイホーム売却年の前年および前前年に次の特例を適用していない
・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例
・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例
・特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
・特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例
本特例に限らず思わぬ出費を生まないために、控除や特例を活用する場合は必ず条件を確認するようにしましょう。
まとめ
マンションを売却した後でも、一定の条件を満たせばその年も所得税額からの一部控除を受けることができます。
その条件として、居住期間や住宅ローンの償還期間、併用している特例などがあるため、必ず申請前に確認しましょう。
本控除を適切に適用すれば節税メリットを享受できます。
要件や申請について不安がある方は、税務についてもサポートがある不動産会社がおすすめです。
後悔のないマンション売却にするために、しっかり準備をしてマンションを売却するようにしましょう。