事故物件とは
事故物件というと、どのような物件を思い浮かべるでしょうか。人それぞれ、印象は異なるかもしれません。なぜなら、法律上は事故物件に明確な定義がないからです。
一般的に、事故物件とは瑕疵(かし)がある物件と考えられています。瑕疵とは、キズや欠陥、欠点や不具合などのことです。
瑕疵は大きく分けて「心理的瑕疵」「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」の3つに分かれています。とはいえ、それらすべて人々が考えるイメージの悪い事故物件に該当するわけではありません。
では、何が事故物件に該当するのでしょうか。ここからは3つの瑕疵の内容を確認しながら、事故物件とは何かを見ていきましょう。
心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、瑕疵の中でも心理的に不安にさせる状態のことを指します。つまり、買い手を心理的に不安にさせる要因がある物件が心理的瑕疵物件です。
ただし、あくまで「買い手が不快に感じやすい物件」ということであって、後で解説する物理的な問題はありません。
では、心理的瑕疵のある物件とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
代表的なものは、人が亡くなった物件です。例えば、殺人事件や自殺などで人が亡くなっている部屋や建物そのものは、心理的瑕疵のある物件にあたります。
また、墓地や火葬場、ごみ焼却施設が近くにある物件も、心理的な不安を誘発することから、心理的瑕疵のある物件といえます。
このような心理的瑕疵のある物件を事故物件と呼ばれることが一般的です。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、物などにあるキズや欠陥、不具合のことを指します。つまり建物に物理的なキズや欠陥、不具合などの問題がある物件が物理的瑕疵物件です。
具体的な例を挙げると、柱や基礎などの傷や損傷、劣化、シロアリや雨漏りの被害などが該当します。
また、物件と聞くと建物に関することと思いがちですが、建物がある土地そのものにも使われます。例えば以下のような物件は物理的瑕疵の対象になるでしょう。
・地盤がゆるい物件
・土地や地盤に何か問題がある物件
なお、物理的瑕疵がある物件は通常、事故物件とは呼ばれることはないでしょう。
法律的瑕疵
瑕疵と聞くと、心理的瑕疵と物理的瑕疵が印象的な人が多いかもしれません。しかし、これらと同様に重要な瑕疵が、法律的瑕疵です。
法律的瑕疵とは、簡単にいうと、法律に違反している物件のことを指します。つまり、建築時に順守すべき法令に違反している物件が、法律的瑕疵物件です。
例えば、以下のような物件は法律的瑕疵の対象になるでしょう。
・都市計画法に違反して開発された土地に建設した物件
・建設基準法や消防法に違反する建物である物件
法律的瑕疵がある物件には通常、事故物件とは呼びません。
どれくらいの価格で売却できる?事故物件の相場
では、事故物件と呼ばれる心理的瑕疵物件は、一体どれぐらいの価格で売却できるのでしょうか。ここからは、「事故物件」を心「理的瑕疵物件」と定義します。
事故物件の多くは、問題のない通常の物件よりも安く取引されることが一般的です。
場所や建物の状況や心理的瑕疵の原因によって異なるものの、以下の割合で下がる傾向があるとされています。
・孤独死や自然死…1~2割減
・自殺…2~3割減
・殺人などの事件…3~5割減
売却価格は買い手によってさまざま
売却相場は安くなる傾向にあるとはいえ、事故物件の売却価格は相場どおりにならないことがほとんどです。なぜなら、心理的瑕疵は買い手によって受け止め方が異なるからです。
物理的瑕疵や法律的瑕疵は目に見えた欠陥や数値があらわす不具合です。そのため、相応の値付けができます。しかし、心理的瑕疵は目に見える瑕疵がないため、全く気にしない人もいれば、避ける人もいます。
立地や周辺環境によっても変動する
事故物件は問題のない通常の物件よりも売却価格が下がるものの、物件の魅力が失われるわけではありません。そのため、事故物件も問題のない通常物件と同様に、立地や周辺環境によって売却価格が変動します。
例えば、「駅から近い」「周辺環境が整っている」などの物件であれば、価値は高くなります。そのため、価格を必要以上に下げることなく売却できることがあります。
一方、「駅から遠い」や「地方にある」など、需要が少ないエリアの物件では、不動産としての価値が低いので価格が下がるうえに、事故物件というマイナス要素が重なり、かなり値下げをしなければならないことがあります。
まずは、所有している物件の需要が高いのか低いのかを見極めることが、売却価格を決める要素のひとつとなるでしょう。
事故物件を隠して売ることはできない!告知義務とは
事故物件は心理的瑕疵であるため、目視では把握できません。「ならば、買い手に知らせなければ、わからないのではないのか」と考えている人もいるのではないでしょうか?
しかし、買い手に隠しておくことはできません。事故物件に限らず、物件の瑕疵は買い手に伝えなければならないと決められているからです。たとえ、リフォーム・改修をして現状回復していても、告知が必要です。
これを「告知義務」といい、瑕疵の内容は次のように具体的な情報を伝えなければなりません。
・時期
・場所
・現状
・地域の特性、近隣のうわさ
瑕疵に対する告知義務を怠って売却後にそれが発覚した場合、どうなるでしょうか。当然、買い手から契約解除や損害賠償を求められる可能性があります。
また、告知義務はあなたと買い手を仲介した不動産会社に対しても発生します。告知義務を怠ると、仲介不動産会社からも損害賠償を求められる可能性があり、多額の損失を負うことになりかねません。
事故物件を売却する際は、必ず瑕疵の内容を告知しましょう。
事故物件を売却しやすくするには?
事故物件は買い手によっては避けられてしまいがちとはいえ、何とか売却したいものです。そこで、ここでは事故物件を売却しやすくする方法を見ていきます。
リフォームや清掃を依頼する
主に、事件や事故が合った場合の事故物件の場合です。
現状の造りのままで売却する場合は、部屋の清掃や設備のリフォームを行う必要があります。洋室の場合は壁クロスやフローリングの貼り換えを、和室の場合は畳の交換などを行います。バスルームや洗面所などの設備を入れ替えることもあるでしょう。
また、リフォーム前には専門業者に依頼して特殊清掃を終わらせておきましょう。痕跡が残らないように原状回復をすることで、心理的瑕疵をできるだけ減らすことができ、売却しやすくなります。
特殊清掃とは、部屋に付いたシミや臭いなどの痕跡を消す、専門業者による清掃のことです。
売却だけでなく、リフォームのためにも特殊清掃は必要だといえます。事件や事故の痕跡が残ったままだと、リフォームを引き受けてくれる会社が見つからないからです。
もちろん、リフォーム前には室内の片付けが必要です。しかし、遺族がいない、いても引き取りを拒否された場合は、遺品整理が必要な場合もあるでしょう。
また、現場供養をしていないと引き受けないというリフォーム会社もあるようです。そのような場合は、遺品整理や現場供養サービスがある特殊清掃業者を選ぶと良いでしょう。
事故物件の売却実績がある不動産会社に仲介を依頼する
「すぐに売却してしまいたい!」と、しっかり下調べをせずに仲介業者へ依頼してはいけません。
事故物件の売却実績がない不動産会社が仲介すると、および腰になって不必要に過剰な値引きが行われるかもしれないからです。
また、事故物件の取引に慣れている不動産会社なら、売却の注意点やポイントを押さえて相談にのってくれるでしょう。
そのため、不動産会社は慌てずにしっかりと選んで探すことをおすすめします。
あえて月日の経過を待って売却するのはアリか
あえて月日が経過するのを待ち、周辺の住民の入れ替わりや記憶の風化を待って売却する方法もあるでしょう。事故物件になってからすぐに売っても、事故や事件の記憶が買い手の記憶に新しいと、買い控えられてしまうかもしれないからです。
しかし、最近はネット検索をすれば、その物件で何が起こったか判明してしまうことが多々あります。どんなに「ネットに書き込んでほしくない」と思っていても、第三者が勝手にあなたの所有物件で起こったことを書き込むことは止められないでしょう。
所有する建物が更地になって、あとかたもなくなれば、ネットの情報が役に立たなくなることはあります。とはいえ、マンションは頻繁に建て替えられるものではありません。
さらに、所有している間の経費もかかってしまいます。現代の情報環境や自己負担する費用を考えて、月日がたつのを待つべきかどうか考えると良いでしょう。
まとめ
事故物件とは、心理的瑕疵のある物件のことです。事故物件の多くは、売却価格が問題のない通常の物件よりも安くなってしまう傾向があります。また、物件の環境などによっては売却しにくいこともあります。
しかし、リフォームや事故物件の売却実績のある不動産会社に仲介を依頼することで、売りやすくする可能性はあります。周囲の環境や自己資金などを考慮しながら、あなたにあった売却方法を考えましょう。