不動産投資が割に合わない理由!良い赤字とダメな赤字の見極めが重要

不動産投資をしている人が「割に合わないから」という理由で辞めてしまうケースが増加しています。不動産投資は他の投資にないさまざまな要因で赤字になったり大変な労力がかかったりする場合があり、その点で「割に合わない」「損をしている」と感じてしまうようです。 そこで今回は、不動産投資が割に合わないと感じる理由と赤字に対する考え方について紹介します。


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不動産投資はなぜ割に合わないのか

不動産投資では、毎月の家賃収入から月々のローン返済額や諸経費を差し引いて残った金額が収入になります。お金が余れば「収支プラス」、お金が不足していれば「収支マイナス(赤字)」と呼ばれる状態です。

不動産投資だけではなく、リスクを伴う「投資」を行う以上は誰でも赤字になる可能性があります。割に合わないと感じるのは、他の投資方法にない不動産だけが苦労するポイントがあるためです。

どのような理由で「割に合わない」と感じるのか、不動産投資にしか存在しない苦労ポイントを見ていきましょう。

キャッシュフローの悪化

投資家の手元に入ってくるお金のことを、不動産投資の用語で「キャッシュフロー」と呼びます。不動産投資のキャッシュフローは投資を始めた時がもっとも調子が良く、年を経るごとに悪化していくのが一般的です。

減価償却費がなくなることによるキャッシュフローの悪化

以下のモデルケースを見ていきましょう。

【モデルケース】
●年間家賃収入400万円
● 経費100万円
● ローン返済150万円(利息50万円含む)
● 税金が収入の20%
● 減価償却費が50万円

不動産投資のキャッシュフローを求めるための計算式は、「収入-経費-ローン返済額-税
金」です。年間家賃収入400万円 -(経費100+ローン返済額150万円)=150万円が税
引き前収入になります。

減価償却費を計上できれば、そこから50万円を経費にして差し引くことが可能です。
150万円 – 減価償却費50万円=100万円が収益です。

所得税は100万円×0.2=20万円となり、100万円から税金の20万円を引いた80万円がキャッシュフローとなります。
仮に減価償却費が無かったら利益は150万円のままになってしまいます。

減価償却費は木造物件なら22年など、決められた耐用年数しか使うことができません。
これが、年を経るごとにキャッシュフローが悪化する理由のひとつです。

金利の上昇によるキャッシュフローの悪化

現在は空前の低金利でローンを組むことができますが、経済の動向によって今後の金利が上昇する可能性も否定できません。

もし金利が上昇した場合は、月々のローン返済額が増加して手元に残るお金が減ることになります。

仮に購入時点で黒字の場合でも、金利が上昇した時に黒字を保てるか、あるいは許容できるレベルの赤字なのかはきちんとシミュレーションが必要です。

高額な物件を購入したことによるキャッシュフローの悪化

高すぎる物件を購入することでもキャッシュフローは悪化する可能性があります。特に新築物件は価格に膨大な広告費が含まれていることも。

得られる家賃収入に対して高い金額で購入するために高額なローンを組めば、毎月の返済額が増加し、月々の収支も悪くなるでしょう。

その他の要因

時間が経つごとに不動産のキャッシュフローが悪化するのは、物件の劣化に対して保全費用がかかるという不動産特有の事情があります。

築年数が経てば新しい物件の人気に対抗するために家賃を下げる必要が出てきますし、外観を整えるためにリフォームをすることでキャッシュフローを圧迫することもあります。

賃借人とのトラブル

株や債券といった有価証券を取引する株式投資と不動産投資が決定的に違うのは、「入居者」という生身の人間を相手にした事業であるという点でしょう。

なかでも多いのが退去時の「敷金・原状回復」に関するトラブルです。

年度 2016 2017 2018 2019
相談件数 13,905 13,209 12,497 10,956

(前年同期 11,689)

引用先:国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/chintai.html

もちろん賃貸トラブルは敷金・原状回復だけに限りません。賃借人が家賃を支払わない、家賃の減額を求められる、入居者同士の隣人トラブルなどさまざまです。

賃借人とのトラブルは管理会社が受け持つものの、スムーズに解決できない場合はオーナーのストレスになることもあるでしょう。

思いのほか利益が出ない場合がある

ネットの情報を見てみると「会社員の年収くらいの不労所得がある」といった書き込みもありますが、物件や立地条件・入居率などの条件でさまざまです。一概に不動産投資の利幅が大きいとはいえません。

区分のワンルームマンションは1室所有のため、空室になった場合は家賃収入が0になってしまいます。
また1棟物件を所有の場合は1部屋が空室になっても他の部屋の賃料収入はあるためカバーはできますが、共用部部の故障、修繕費用が大きくのしかかります。例えば台風・災害が起こった場合は想定以上の費用がかかることもあるでしょう。

そもそも赤字が発生しやすいのが不動産投資である

紹介した以外にも、さまざまな要因で赤字が発生します。まず、不動産投資につきものなのは「空室リスク」です。賃料6万円の1部屋が1年間空室だった場合は72万円の損失が発生します。

家賃収入が減っても毎月のローン返済が減るわけではないため、足りない分は不動産投資以外の収入から補填しなければならなくなります。ローンのうち金利部分は経費計上できますが、手元に残るお金が減ることは変わらない点に注意が必要です。

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不動産投資で赤字でも大丈夫な理由

不動産投資は、さまざまな理由から赤字に転落する可能性があるのは紹介した通りです。
赤字は給与所得などと損益通算することでトータルの収入金額を減らし、節税につながるため「赤字=絶対にダメ」ではありません。

大切なのは目的を持って計画的に赤字の状態に持っていくことです。

減価償却費計の赤字

取得費用の一部は、「減価償却費」として経費になります。不動産の減価償却費は高額であり、ほかの経費と合算することで家賃収入を大きく圧縮することが可能です。

ただし毎年発生するわけではなく、初期費用を分散して計上しているに過ぎません。
帳簿上の収支が赤字になったとしても、不動産自体の運営が順調なら問題はないでしょう。

ローン返済で発生する少額な赤字

ローン返済の金額によっては、毎月の持ち出しが発生することもあります。毎月1万円の持ち出しを20年続けて完済した後に2,000万円の物件が手元に残る場合、考え方によっては1万円×12ヵ月×20年=240万円の投資で2,000万円が手に入ると考えることもできます。

貯金で2,000万円を20年以内に貯めようとすれば、毎月8万円の貯金が必要です。最終的に数千万円の資産を少額の投資で手に入れると考えれば、十分に赤字を出す価値はあるでしょう。

キャピタルゲインが狙える赤字

売却で得られる金額のことを「キャピタルゲイン」と呼びます。
将来的なキャピタルゲインが返済期間の赤字をカバーできるのであれば、トータルでは黒字運営ができていると考えることができます。

赤字だからこそ狙える節税対策がある

不動産所得で赤字だった場合、他の所得と損益通算することで節税につながります。

所得800万円の会社員が不動産投資で200万円赤字だった場合、課税対象額は600万円に減額されます。確定申告で所得税の還付が可能なほか、所得金額から計算する住民税の金額も減額されて二重の節税が可能です。

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効果的な不動産投資を行うために知っておくべきこと

節税効果がある赤字とは別に、メリットがない赤字も存在することを理解しておきましょう。

例えば「少額の持ち出しで最終的に残った物件を手に入れよう」とする場合は空室率が少なく持ち出しが安定していれば有効ですが、空室率が上がれば持ち出しの金額が増え、一気にキャッシュフローが悪化してしまいます。

大切なことは、投資を始める前に利回りとキャッシュフロー、節税などの仕組みを正確に理解して対策を立てておくことです。

しかし実際には、どれだけ対策していても思わぬ赤字が発生する場合も。節税効果ではカバーできない大幅な赤字だったときは、早急な対策が必要になります。

空室率が問題であれば、リフォームで外観を整える、家賃を引き下げて入居率を上げるといった対策が有効になるでしょう。ローン返済がキャッシュフローを圧迫している場合は、ローンの借り換えも視野にいれましょう。ただし、借り換えには手数料もかかるため、この費用を考慮したうえでもなおメリットがある場合のみ実行しましょう。

専門機関に相談することも大切

マンション投資・不動産投資が赤字で「割に合わない」と感じているのなら、1人で悩まずに不動産の専門業者に相談することもおすすめします。

赤字・空室以外のマンション運営全般について、的確なアドバイスを受けられるのがメリットです。

不動産投資が割に合わないと感じたら、まずご自身が保有する物件情報を確認してみましょう。
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まとめ

不動産投資には赤字がつきものであり、問題ないケースから深刻に受け止めるべきケースまで色々なパターンが存在します。不動産投資の本来の目的である「収益の獲得」に立ち返り、適切な対策をしてキャッシュフローを健全化させていきましょう。