【オーナー向け】不動産投資における適切な買い増しのタイミング

不動産投資をしていると、不動産会社から新たな投資物件の買い増しをすすめられることがあります。しかし、「買い増しをするべきなのか」「買い増しをして良いタイミングなのか」と悩むオーナーも多いのではないでしょうか。 そこで、今回は不動産の買い増しをするメリット・デメリットとベストなタイミングについて解説します。


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1戸目の収支が悪いのに、買い増しをすすめられたら?

1戸目の収支が悪いのに、「不動産を複数所有しませんか」と不動産会社から買い増しをすすめられることがあるようです。ゆくゆくは買い増しをしたいと考えていても、「今ではないのでは?」と悩んでしまうでしょう。

結論からいうと、収支が悪いときの買い増しは慎重に検討してください。まずは、営業マンから提示された利回りが本当なのか、あなた自身で事業計画書を立てましょう。資金繰りに困ることなくローン返済が可能なのかなどを調べて、少しでも問題があると感じた場合は、買い増しを見送ることをおすすめします。

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買い増しを検討して良いタイミングはいつ?

不動産会社に言われるままに買い増しをすることに慎重になったほうが良いのなら、買い増しを検討して良いタイミングとはいつなのでしょうか。

一般的に買い増しを前向きに検討して良いタイミングは、次のようなケースです。

1戸目の運用が安定したとき

先ほど説明したとおり、1戸目が安定した収支があることです。1戸目の運用が黒字化しており、長期的に安定しているなら、2戸目の収支が安定するまでの間、1戸目の黒字でカバーできるからです。

1戸目が赤字で2戸目も赤字になってしまうと、立て直しが困難になります。最悪の場合、不動産投資をあきらめることになりかねません。そのため、買い増しを検討するタイミングは、1戸目の運用が安定しているときが良いでしょう。

金融機関から信頼を得られたとき

買い増しをするには、資金が必要です。しかし、自己資金だけで買い増しができる人は多くありません。そのため、金融機関から新たな融資を受ける必要があります。

とはいえ、すでに1戸目のローンを滞りなく返済をしているのであれば、金融機関から信頼を得ているでしょう。

これにより、2戸目の融資も審査を通してくれやすくなるので、買い増しがしやすくなるのです。

自己資金にゆとりがあるとき

自己資金にゆとりがある場合も、買い増しを考えるタイミングのひとつです。ゆとりとは、2戸目の購入資金があることではありません。ライフプランや、普段の生活に必要な資金を差し引いても投資に回せる自己資金があることを指します。

この程度のゆとりがあれば購入資金の一部に充てられるだけでなく、2戸目の運営が軌道にのるまでの間、自己資金を運営資金に充てることも可能です。これによって、長期的に安定した不動産投資が可能となります。

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【デメリット】安易な買い増しは辞めたほうが良い理由

これまでは、買い増しを考えるタイミングについて見てきました。しかし、タイミングが合っていたとしても安易な買い増しはおすすめできません。

ここからは、その理由について見ていきます。

維持費や手間が増える

買い増しをするデメリットのひとつが、維持費や手間が増えることです。

例えば、管理会社への委託費用が物件数に応じてかかります。委託先が複数になれば、それぞれとやり取りすることになり、手間が増えてしまうでしょう。

また、不動産投資で大きなコストのひとつといえば、修繕費です。壁紙などの細々した修繕だけでなく、数年~10数年に一度は設備の大規模修繕も必要になります。この修繕費も物件数分必要なので、コストは高額になるでしょう。

買い増しをするなら、維持管理や手間にかかるコストに見合った収益をあげられることが必須条件です。

収支悪化を招く恐れがある

収支悪化を招く恐れがあることも、買い増しをするデメリットです。2戸目の経営で失敗した場合はもちろん、経営がうまくいっていたとしても現金の不足などで収支が悪化することがあります。

その原因のひとつが、融資の返済です。2戸目を購入すると総借入額が増え、毎月の返済額も多くなるからです。このような場合、「毎月入ってくる家賃収入をそのまま返済に充てる」、いわゆる自転車操業になる可能性があります。最悪の場合は返済が滞り、任意売却や自己破産になることも考えられるでしょう。

買い増しをする場合には手元にお金が残るよう、必ず収支を注視しながら運用することが必要です。

全国規模の不動産価格下落が起こると怖い

新型コロナウイルスの影響拡大によって宿泊業などでは経営が苦しくなり、倒産している企業が増えています。このように、外的要因など不測の事態が起こる可能性はあります。

万が一、景気の悪化や天災などで全国規模の不動産価格の下落が起こった場合、家賃収入や物件価格の低下を招くことになります。当然、所有している物件が多いほど影響が出るでしょう。また、厳しい状況下で経営が耐えられず不動産を売却したとしても、損失が出る可能性もあります。
もし、値下げによりマンション売却で損失が出てしまった場合は、住宅ローン控除が適用されるか検討しましょう。
マンション売却で損失が出た場合に、検討したい特別控除や特例をこちらの記事で解説しています。

また、不動産投資には元本保証がなく、自己責任で運用しなくてはいけません。
マンションの売り時を逃さないよう、日々所有物件の売却相場の把握しておきましょう。
詳しくはマンションの売却価格の相場を調べる方法や計算方法について解説している記事をご覧ください。

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【メリット】買い増しは悪いことだけではない理由

ここまで、買い増しのデメリットを紹介してきました。ここからは、買い増しをすることのメリットを紹介していきます。

複利効果がある

不動産を複数所有するメリットは、複利効果です。

複利効果とは、一定期間に生じた利子を元本に入れてその金額を新たな元本として運用することで、投資でよく用いられる手法です。

上手く運用できれば、1戸目で得た利益と2戸目で得た利益を元本として、3戸目の購入に充てることができるかもしれません。順調にいけば、複利効果によって考えていたよりも早く資産を増やしていくことができます。

リスク分散ができる

不動産を複数所有する大きなメリットは、リスク分散です。ひとつの投資物件で赤字が出ても、ほかで黒字があれば、赤字をカバーすることができます。ひとつの収益源だけに頼らないことで、投資リスクを軽減できる可能性が上がるでしょう。

また、リスク分散は利益面だけでなく、災害対策にも効果を発揮します。地震や洪水などが起こり、所有している投資物件に被害が出た場合、物件がひとつしかないと収入が得られなくなりますが、災害が起こっている地域以外にあれば、収入がゼロになることはなく、ある程度のカバーが期待できます。

相続税対策ができる

相続対策ができることも、不動産を持つことのメリットのひとつです。相続税の計算では不動産を時価評価しますが、実のところ、相続税の時価は市場の売買価格よりも低く設定されています。

例えば、1億円の現金を持っていれば、その価格で相続税を課税されます。一方、時価1億円の不動産を持っていれば、相続税の計算上の時価は、8,000万円程度になり、8,000万円に対して相続税を課税されるのです。

賃貸用の物件の場合は、相続税の時価はさらに下がります。相続税対策をするのであれば、余剰資金は不動産投資に充てたほうが有利になるでしょう。

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買い増しを行う際のポイントや注意点

最後に、不動産投資で買い増しするときのポイントと注意点を解説します。

物件は慎重に検討する

1戸目の不動産投資がうまくいっていると、2戸目以降の買い増しで物件選びが甘くなる不動産オーナーも多いです。物件選びを怠ると、買い増しした物件の収支が悪くなったとき、順調にいっている1戸目の収支にも影響します。2戸目以降でも物件は慎重に検討しましょう。

物件選びで特にチェックしておきたいのは、収益性と優良物件であるかどうかです。

1.収益性のある物件を選ぶ

収益性のある物件を選ぶことは、不動産投資を安定させるためにも重要ですが、金融機関から融資を受けるためにも重要なポイントです。

買い増しをする場合であっても、自己資金で運用資金をまかなうのではなく、不動産投資ローンを活用して運用するケースも多いかと思います。ローンを利用する際に、融資する側の金融機関側が重視するのは、物件の資産価値と収益性です。

金融機関は、資産価値と収益性を見て、融資した金額を十分に回収できないと判断すると、融資を行わないこともあります。

投資物件を安定して増やすには融資可能かどうかが重要なポイントですので、融資の審査を通過できるような収益性のある物件を選ぶようにしましょう。

2.優良物件を選ぶ

優良物件とは、家賃収入が大幅に下落しないであろう、安定した投資ができる物件をいいます。物件の投資の安定さを左右する大きな要素は、立地や周辺施設の充実度などです。つまり、利便性がよく、需要の高い物件が優良物件と考えられます。

優良物件を選ぶことは、物件の収益性や不動産投資の安定にも関係してきます。そのため、できるだけ優良と判断できる物件を2戸目以降も選択することが重要です。

無謀な買い増しをしない

投資が思うようにいっていない状況を改善できるなど、不動産の買い増しにはいくつかメリットがあります。しかし、利点があるからといって、むやみに買い増しすることはおすすめしません。

前述したように、所有物件が増えると管理に手間がかかるためです。物件が増えると、毎月のローン返済額が増えることはもちろん、維持管理費も増えますし、トラブルの発生リスクも上がります。

管理しきれる分には問題ありませんが、管理しきれないにも関わらず買い増しをすると現状維持どころか、状況が悪化することもあるでしょう。買い増しは計画的に、無謀に行わないことです。

もし不動産投資がうまくいっていないと感じているなら、すぐに買い増しを検討するのではなく、現状の収支から将来的な見通しを把握することから始めましょう。

現状把握には、収支シミュレーションが便利です。イエリーチでは、不動産投資の収支シミュレーションだけでなく、買い増しに関するシミュレーション機能も使用できますので、ぜひ活用ください。

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まとめ

不動産の買い増しには、さまざまなメリットやデメリットがあります。また、1戸目の収支が悪いのに、不動産会社から新しい物件を紹介されることもあります。そのため、不動産の買い増しをいつしたら良いのか、迷うこともあるでしょう。

ひとつアドバイスするとすれば、どのような場合でも不動産会社の話を鵜呑みにするのは良くありません。彼らは投資物件を買わせるのが仕事だからです。必ず、自分で事業計画書を立てて収益に問題がないのか、検討しましょう。

また、買い増しに適したタイミングなのかどうかを見極めることも大切です。