ワンルームマンション経営は、一棟経営よりも所得が少なくなります。しかし、確定申告が不要なわけではありません。
この記事では、ワンルームマンションでも確定申告が必要であること、申告漏れした際のリスクと確定申告の方法を解説します。
最後まで読めば、ワンルームマンションで得た収益を適切に確定申告できるでしょう。
ワンルームマンションでも確定申告は必要
ワンルームマンション経営によって得た収益は、確定申告の対象となります。ワンルームマンションの確定申告をしたことがない方のために、以下の3つについて解説します。
- 確定申告が不要な場合
- 節税効果を得られない
- 青色申告・白色申告の違い
確定申告について理解を深め、ワンルームマンションで得た所得はしっかり確定申告しましょう。
確定申告が不要な場合
ワンルームマンション経営は原則確定申告が必要ですが、例外的に確定申告が不要なケースもあります。
「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」によると、会社員が副業でワンルームマンションの経営をし、不動産所得が20万円以下の場合(2023/3/19時点)です。
賃料8万円でワンルームマンションを賃貸に出し、年間96万円の所得を得ていると仮定します。仮にマンションにかかる諸経費が76万円だった場合は、年間所得額は20万円です。
- 年間所得額=(8万円×12か月)-76万円(経費)=20万円
上記の場合は不動産の所得税がかからないため、確定申告が不要となります。
ただし、申告不要となる税金は所得税のみで、住民税の申告は必要です。
住民税は市区町村の管轄であるため、確定申告はせずに、直接住民税の届出のみおこなえば問題ありません。
ただし確定申告をしないことで、年末調整や医療費控除などを含め、節税メリットを受けられない場合もあります。
基本的にワンルームマンション経営をしている場合は、確定申告をした方が良いでしょう。
節税効果を得られない
確定申告を怠ると、節税効果が得られません。前述したような会社員がワンルームマンション経営をおこなっているケースでは、損益通算ができなくなります。
会社から受け取った給与とマンション経営で得た所得の合計から、マンション経営で出た経費を差し引きし、所得合計額を減らせる処理です。
損益通算を用いると、「マンション経営の帳簿上の赤字」と「本業の収入」を合わせて計算するため、課税所得金額を減らすことができ、所得税と住民税の節税ができます。ただしその決算を行うためには確定申告が必須です。
特にマンション取得後は帳簿上赤字になるケースが多いため、確定申告をしなければ、税制上損することもあるでしょう。
詳細はマンション経営における節税メリットについて解説している記事をご参考ください。
青色申告・白色申告の違い
ワンルームマンションの確定申告をおこなう前に、青色申告と白色申告の違いを覚えておきましょう。
青色申告と白色申告の違いを比較し、まとめました。
白色申告 | 青色申告 |
・単式簿記で帳簿を作成するため記入が楽 ・簿記の知識がなくても作成しやすい ・事前の申請が不要 ・税制上の控除がない ・赤字の繰り越し申告ができない | ・帳簿作成に簿記の知識が必要 ・事前の届出が必要 ・書類作成の書き方が煩雑になりがち ・最大65万円の特別控除が受けられる ・赤字を最長3年間繰越計上できる ・家族に支払った給与を経費として計上できる |
【参考】No.2070 青色申告制度|No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
白色申告は知識がなくても、書式を簡単に作成できる点がメリットです。しかし、税制上のメリットはほぼなく、今後ワンルームマンション経営をするなら、青色申告を選ぶことをおすすめします。
ただし不動産所得で青色申告をおこなうためには、事業的規模でなければいけません。ワンルームマンション経営の事業的規模とは、おおむね10室以上から不動産所得を得ていることです。
また青色申告で確定申告するためには、定められた期限までに「所得税の青色申告承認申請手続」が必要です。
青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2月以内。)に提出してください。
また帳簿をつける際に、複式簿記をつける必要があるなど、帳簿管理も複雑です。面倒ではありますが、青色申告を選べば最大65万円の控除が受けられます。
不動産所得が100万円だった場合、65万円の控除を受けると、所得額は35万円です。
税金の額が大きく変わるため、青色申告を選ぶマンションオーナーは非常に多いです。また、今後ワンルームマンションを複数経営していくにあたり、家族に従業員として給与を支払った場合は、その給与を経費に組み込めます。
税制上のメリット、そして経費にできる支出の幅を考えれば、ワンルームマンションの確定申告は青色申告でおこないましょう。
ワンルームマンションの確定申告を怠るリスク
ワンルームマンションで得た所得の確定申告を怠ると、以下のようなリスクがあります。
- 税務調査が入る可能性
- 追徴課税や罰則
- 金融機関ローンの審査が困難
ワンルームマンションは収益が低いため、税務調査が入らないと考えてはいけません。リスクを把握し、忘れないように確定申告をおこないましょう。
税務調査が入る可能性
ワンルームマンションを1室のみ賃貸に出している場合、収益が低いため、税務調査が入らないという不動産会社もいます。
しかし、これは大きな間違いで、収益が低くても税務調査は入る可能性はあります。実際に、数年間不動産収入を無申告だったオーナーが、追徴課税されたケースもあるため、信じてはいけません。
追徴課税や罰則
確定申告を故意にしていない、脱税の疑いがあると判断されれば、追徴課税や罰則の対象となります。
課される罰金の種類と概要は以下のとおりです。
罰金の種類 | 概要 |
無申告加算税 | 申告期限を過ぎた場合、 無申告の場合に加算納付すべき税額に対して 50万円までは15%、50万円以上の場合は20%加算 |
延滞税 | 納税期限を過ぎた場合に 加算される納税額+延滞税の割合+延滞日数で加算 |
重加算税 | 隠蔽の内容が悪質だと見做された場合に 課税される無申告加算税に加えて40%加算 |
税務調査が入り、無申告で収入を得ていた場合は、無申告加算税が課されます。また調査後に申告をしたとしても、延滞税が別途加算されるため、本来支払う税額よりも高額になる点に注意しましょう。
また、悪質な隠蔽だと見做された場合は、重加算税が加算されます。無申告加算税に加えて、本来の納税額の40%を加算して支払わなければなりません。
金融機関ローンの審査が困難
確定申告をしないことで、次のマンション経営の際に金融機関から融資が受けられなくなる可能性もあります。
不動産を取得しているのに無申告の場合は、収支バランスが取れていないと判断され、金融機関からの信用が低下するからです。
今後もマンション経営を続けたいなら、確定申告は適切におこないましょう。
ワンルームマンションの確定申告の流れ
初めて確定申告する方のために、ワンルームマンションの確定申告の流れを紹介します。
- 確定申告に必要な書類の準備
- 決算書・収支内訳書の作成
- 確定申告書の作成
- 税務署で確定申告
青色申告で確定申告する場合は、3月15日までに[手続名]所得税の青色申告承認申請手続を済ませておきましょう。ここでは、青色申告をする流れで説明させていただきます。
確定申告に必要な書類の準備
確定申告に必要な書類を、事前に準備しておきましょう。事前に書類を揃えておくと、実際の申請の際に手間取りません。
確定申告に必要な書類一覧をまとめました。
・売買契約書
・家賃送金明細(管理会社に依頼)
・賃貸借契約書
・税金の納付証明書
・不動産取得時の諸経費領収書・明細書
・管理費・修繕積立費の明細書
・修繕費用の明細書
・ローン返済表
・火災保険の領収書
確定申告に必要な書類は非常に多く、都度集めていると、確定申告するタイミングに間に合わないかもしれません。
また、書類が欠けていると必要な経費を計上できないなど、正確な申告ができないため、事前に揃えておきましょう。
決算書・収支内訳書の作成
次に、ワンルームマンション経営で得た収入・経費をまとめた、決算書を作成しましょう。
投資における損益を計算し、記帳します。
決算書の作成方法がわからない方は、「令和4年分 青色申告決算書(不動産所得用)の書き方」を参考にしましょう。
確定申告書の作成
【引用】確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)
決算書を作り終わったら、確定申告書を作成します。青色申告の確定申告書は上図のような形式です。
不動産所得や経費、控除を記載してまとめましょう。
税務署で確定申告
確定申告書の作成が完了したら、税務署で確定申告します。税務署の窓口でも手続きできますが、近年はe-taxでの電子申請が一般的です。
青色申告の65万円控除の利用は、令和2年より電子申請・電子帳簿保存が条件として追加されたため、電子申請をおすすめします。
確定申告は自分でもできますが、簿記の知識がない方にはやや難易度が高いです。初めての申告でミスをしないか不安な方は、税理士に依頼して申告作業を任せても良いでしょう。
また、不動産会社によっては税務サポートを提供している会社もあります。管理を任せている不動産会社に相談しても良いでしょう。
まとめ
ワンルームマンションは、高収入となりにくいですが、確定申告は必要です。無申告のままでいれば、追徴課税の対象となり、本来納める税金よりも多くの税金が課される場合があります。
また、節税メリットを受けられなくなるなど、確定申告漏れはリスクが高いです。ワンルームマンションで得た所得の確定申告に不安がある方は、税務面のサポートがついた不動産会社を選定しましょう。