投資用マンション…老後も所有できる?チェックポイント
投資用マンションは、保有を続ける限り、賃料収入を得られることが魅力です。とはいえ、賃料収入は確約されるものではありません。老後も所有し続けることがオーナーにとって最良の選択となるかの判断は難しいところです。
それでは、投資用マンションを老後も所有し続けるべきか、判断するためのチェックポイントを解説します。
マンションの耐震性
日本は現在まで多くの大地震に見舞われてきました。地震の発生は誰にも予測はできませんが、マンションオーナーとして地震への備えを怠ってはいけません。
1978年に発生した宮城県沖地震をきっかけに法改正が行われ、1981年6月1日以降に着工した建物は新しい耐震基準が適用されています。
旧耐震基準は震度5強までの揺れに対応すれば良いとされていましたが、新耐震基準では震度6~7まで引き上げられたのです。
新耐震基準を満たすか否かは、入居者から信頼されるマンションであるかの大きな判断基準となります。
新耐震基準は、1981年6月1日以前からの建物には適用されておらず、耐震改修工事も義務づけられていません。そのため、老後も長く所有するなら、投資用マンションはできるだけ新耐震基準を満たす建物を選んでおくべきでしょう。
なお、旧耐震基準の建物であっても耐震診断に合格している場合や、耐震補強が完了している場合があるため、確認してください。
マンションの維持管理に問題はないか
おおむね15~30年ごとに、マンションでは大規模な修繕工事を行います。修繕工事には多額の費用がかかるため、修繕費を毎月積み立てるのが一般的で、オーナーを含む入居者から集められます。
平成30年に発表された国土交通省のデータによると、修繕積立金の相場はマンション1戸あたり月11,243円でした。
実際の金額はマンションの築年数や規模にもよるものの、明らかに積立額が少ないようなら、老後に思わぬ出費が強いられる可能性があるので、注意しましょう。
また、そもそも長期修繕計画が定期的(最低でも5年以内ごと)に見直されていない、計画期間が30年以上ないといった状態であれば、マンションの維持・管理がきちんとなされていないことが考えられます。
マンションの寿命は維持・管理の手法で変わります。維持や管理の手法に少しでも気になる点があれば、長期保有を検討し直すほうが良いかもしれません。
老後、マンションが築何年になっているか
東日本不動産流通機構の発表によると、2019年度の中古マンション成約率は、築20年までは25%前後と高い水準を保っていますが、築21~25年で18.6%、築26~30年で13.5%、築31年以降で12.6%と、成約率は築年数を経るごとに下落していくのがわかります。
一概に、築古物件だからといって不動産投資が困難になるとはいえませんが、築浅物件のほうが入居者に選ばれやすいのは事実です。
建物が古くなったからと売却を思いたっても、思うように売れないことは考えておかなくてはいけません。
そのため、所有するマンションの築年数によって、売却のタイミングを見極めるのも賢い方法でしょう。
※参照:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)
退職金を使わなくてもローンを完済できるか
不動産投資を始めるにあたって、物件の購入にローンを利用する方がほとんどでしょう。
例えば、40歳で返済期間30年のローンを契約したとします。60歳で定年退職を迎えるときにも返済期間は10年残っていますから、利息を軽減するためにも、退職金で完済する方法を選ぶこともあるでしょう。
しかし、退職金は老後生活の大切な資金源でもあります。ローンの負担がなくなったとしても、キャッシュフローの悪化を招いてしまう恐れがあります。老後資金のための不動産投資であるなら、退職金にはできるだけ手を出さないことが肝心です。
また、今後しばらく低金利が続くと予想されるため、退職金を頼ることなく返済するほうが退職金による一括返済よりもメリットが大きい可能性もあるでしょう。
貯蓄や年金で維持費を支払っていけるか
不動産投資では賃料収入がそのまま収益になるわけではありません。投資用マンションの維持や管理には、以下のような必要経費がともないます。
・固定資産税などの税金の支払い
・管理会社に支払う委託費
・修繕積立金 など
例えば、毎月約5万円の経費を60歳から80歳までの20年間支払うとすると、総額は約1,200万円にもなります。老後の主たる収入は貯蓄と公的年金のみだと考えれば、少ない金額とはいえません。
リタイア後も必要経費の支払いを続けられるかどうかは、マンション売却の決断に大きな影響を与えるのです。
老後のマンション売却のために知っておきたいこと
これまで解説したとおり、所有しているマンションは将来的に売却する可能性があります。そのため、出口戦略として早い段階から売却するときのことを考えておくことが大切です。
そこで、老後のマンション売却で困らないために、押さえておくべき知識を紹介します。
少しでも高く売る
投資用マンションを売却するなら、少しでも高い価格で売れるように動きましょう。
マンションを売却すればまとまった資金を手に入れられますが、それまで得てきた賃料収入が途絶えます。老後のライフプランに見合う資金を売却益で賄うことが大切です。
マンションの販売価格は、不動産会社への査定により決定されるのが一般的です。価格に偏りが出ないよう、複数の会社に査定を出しましょう。
また、一社ずつ依頼するのは時間も手間もかかるため、一括査定を活用すると良いでしょう。
元気なうちに売却する
マンションの売却は株式などと違って、希望どおりのタイミングで実現できるとは限らず、それなりの時間がかかることを覚悟しておかなくてはいけません。
室内のリフォームや修繕を行うとともに、販売価格を決めるまでに約1ヶ月、不動産会社との媒介契約を結んでから販売活動に約1~3ヶ月、売却代金の受領や物件の引き渡しに約1ヶ月など、売却までにかかる期間は最短でも半年程度と考えておきましょう。
不動産会社のサポートがあるとはいえ、先の読めない販売活動に身を投じることは大きな負担がかかります。元気に動けるうちに売却をスタートするのが賢明でしょう。
使い勝手の良い間取りを選ぶ
売れるマンションとは、すなわち、次に購入する投資家や入居者からのニーズが高い物件だといえます。中でも間取りはマンションの資産価値を左右する大きな要素のひとつであるため、購入時点で慎重に検討してください。
ほかにも、室内外の設備が整っていること、防犯設備が整っていること、清掃など維持・管理が適切に行われていることなども、ニーズを左右する要素です。
マイホーム売却時の税金の特例は使えない
自分が居住する不動産、つまりマイホームを売却するときには、3,000万円の特別控除など売却益に対して税金の特例が適用されます。しかし、投資用マンションはマイホームに当たらないため、税制上の優遇を受けられません。
また、投資用マンションの売却益には、譲渡所得として所得税と住民税が課されます。譲渡所得は給与所得などほかの所得との損益通算もできないため、売却額によっては多額の納税をしなくてはいけない可能性を考慮しておきましょう。
譲渡所得は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって税率が異なります。5年以下の短期譲渡所得では39.63%、5年超の長期譲渡所得では20.315%(※)です。
※2037年までは復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)が課されます
投資用マンションを買い替える方法も
投資用マンションの売却益について税金の特例がないのは先述のとおりです。しかし、投資用マンションへの買い替えである場合には、「特定事業用資産の買い替え特例制度」を利用できます。
この特例は投資用物件を売却したあとに新たに投資用物件を購入し、1年以内に賃貸経営を始めたときに適用される制度で、譲渡税の課税を繰り延べさせることができます。
これまで投資してきたマンションの賃料収入が不安定だと感じたら、その物件を売却して需要の高いマンションへと投資先を乗り換えて、新たな老後資金の確保につなげることを検討してはいかがでしょうか。
将来的に相続を検討している場合にも、資産価値の高いマンションへの買い替えが、相続に有利に働くことも考えられます。
まとめ
老後2,000万円問題の話題が出てからというもの、老後資金の準備には高い関心が集まる一方です。
マンション投資も老後資金対策として有効な手段のひとつになり得るものの、老後も所有し続けることが、はたしてあなたのメリットになるかどうかは、体が元気なうちに見極めなくてはいけません。
今所有しているマンションの状況や将来設計を精査し、今後についてなるべく早く検討することをおすすめします。