マンションの評価額に用いられる数値とは
マンションの評価額は、土地と建物を別々に評価した上で合算したものです。不動産の評価基準としては次の4つの基準が利用されています。
では、それぞれの評価基準を確認できる管轄や計測方法、公表される時期などの違いをみていきましょう。
路線価
路線価は相続や贈与にかかる税金を計算するときに用いられる基準で、道路に面した宅地1㎡当たりの土地の評価額のことです。通常、路線価がそのまま相続税評価額として使用されます。
路線価の発表は毎年7月頃に国税庁により行われ、国税庁の公式サイトから確認できます。表記は千円単位になっており、たとえば「100」と記されている場合は1㎡当たり10万円です。実際に所有する土地の面積が100㎡なら、路線価による評価額は1,000万円ということになります。
また路線価は、公示価格の8割程度になるのが一般的です。
固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、土地や建物を所有する人に課される固定資産税の算出に用いられる基準のことです。
固定資産税のほか、都市計画税、不動産取得税、登録免許税といった税金の算出にも使われます。
固定資産税評価額は、固定資産評価基準をもとに各市町村によって決定され、不動産の所有者宛に毎年4月頃に送付される課税通知書で確認できます。
通常、公示価格の7割程度が目安とされます。
公示価格
路線価も固定資産税評価額も税金に関わる評価額なのに対し、公示価格は不動産の一般的な取引の目安となる評価額です。公的な評価額として、公共事業における用地買収などにも用いられます。
公示価格は、不動産鑑定士2名以上による鑑定にもとづき、毎年1月1日時点に評価されます。
国土交通省が選定する場所で評価されますが、知りたい土地が鑑定対象になっているとは限りません。そのため、実際の不動産の価格は、公示価格を目安として多少前後するのが一般的です。
実勢価格(時価)
実勢価格は時価とも呼ばれ、不動産の売買実績をもとにした評価額のことです。公的な機関が鑑定するのとは違い、実際に取引された市場価格であるため、マンションの資産評価にもっとも大きな影響を及ぼします。
ただし、著しく相場から離れた売買が行われたとしても実勢価格に反映されてしまうため、通常は複数の実勢価格から判断します。
実勢価格は、不動産会社を対象とするネットワークシステム「REINS(レインズ)」で調べることが可能です。
実勢価格は公示価格と同程度、あるいは2割ほど高くなるのが一般的です。また、不動産市場が活況なときには、短期間で大きく変動することもあります。
相続でのマンション評価額と税金の計算方法
住居における共同住宅の割合が増している今、マンションを相続する人が増加しています。遺産を相続すれば相続税を納める必要があります。
いざというときに慌てないためにも、マンションの正しい評価額を求める方法を確認しておくと安心です。
相続におけるマンションの評価額を計算するときには、土地部分は路線価で、建物部分は固定資産税評価額で計算し、合算します。
では、具体的な計算の手順をみていきましょう。
1.土地部分の評価額を計算する
まずは土地部分の評価額を計算します。土地の相続税評価額は路線価で判断されるので、国税庁のホームページから相続するマンションの建つ場所の路線価を確認してください。
具体的な計算の前提として路線価が「150」で、土地の面積が1,000㎡のマンションとします。路線価「150」は1㎡当たり15万円を意味しますから、土地の評価額は「15万円×1,000㎡=1億5,000万円」となります。
一般に、マンションには専有部分(所有する部屋)と共有部分(エントランスや廊下、エレベーターなど)に分かれます。
相続するのがマンションの1部屋であっても、相続対象は共有部分も含まれる点に注意が必要です。
マンション全体における相続対象の割合を持分割合といいます。持分割合は通常、専有部分の床面積に応じて決められており、売買契約書で確認できます。
たとえば持分割合が10%の場合、マンションの土地部分の相続税評価額は「1億5,000万円×10%=1,500万円」です。
2.建物部分の評価額は固定資産税評価額
次に、建物部分の相続税評価額を求めます。建物は専有部分に対しての固定資産税評価額で判断されますので、手元に届く課税通知書で確認しましょう。
今回の計算では固定資産税評価額を800万円とすると、この800万円がそのまま建物部分の相続税評価額となります。
つまり、相続したマンションの相続税評価額は、800万円に先ほどの土地の評価額1,500万円を合わせた2,300万円だということがわかります。
3.相続税を計算したい場合
相続税評価額から支払う相続税を知るには、相続人それぞれの立場や相続する人数を考慮して計算します。
相続税は「(マンション評価額-基礎控除額)×税率」で求められます。基礎控除とは相続人の数に応じた控除で「3,000万円+相続人の数×600万円」となります。
たとえば、配偶者と子ども一人が相続人の場合は「3,000万円+2×600万円=4,200万円」です。
また、被相続人(亡くなった方)からの相続人の立場によって法定相続分が決まっています。
配偶者は2分の1、子どもは2分の1(複数の場合はここから分割)ですから、先ほどのマンションを配偶者と子どもで相続した場合、配偶者と子どもの課税対象額はそれぞれ2,100万円となります。
相続税の税率や控除額は次の表のように定められています。
・課税額3,000万円以下(税率15%)…控除額50万円
・課税額5,000万円以下(税率20%)…控除額200万円
・課税額1億円以下(税率30%)…控除額700万円
・課税額2億円以下(税率40%)…控除額1,700万円
・課税額3億円以下(税率45%)…控除額2,700万円
・課税額6億円以下(税率50%)…控除額4,200万円
・課税額6億円超(税率55%)…控除額7,200万円
そのため、今回の場合は配偶者と子どもがそれぞれ「2,100万円×15%-50万円=265万円」の相続税を納めることになります。
売却でのマンション評価額の計算方法
同じマンションの評価額であっても、相続するときと売却するときとでは、求める方法は異なります。
今度は、売却するときのマンションの評価額を知る方法について確認していきましょう。
自分で相場を調べる
マンションの評価額はオーナー自身で調べる方法もあります。
先述のネットワークシステム「REINS(レインズ)」や国土交通省が提供する「不動産取引価格情報検索」などを利用すれば、過去の不動産売買の実績を知ることができます。
所有するマンションの情報がなかったとしても、立地や条件の近いマンションの情報があれば、おおよその評価額の予想が可能です。
ただし、不動産の価値は環境の変化や経済動向などによって日々変動するものですから、ひとつのデータだけを確実視しないことも必要です。
複数の不動産会社に査定してもらう
今現在の適正な評価額を知りたいなら、不動産会社に査定してもらうのがおすすめです。オーナーの負担も少なく、手軽にマンションの価値を確認できます。
ただし査定を出すときには、一括査定などを利用して、複数の不動産会社を利用するのがポイントです。査定額は会社ごとの基準によって大きく異なる可能性もあるため、いくつかの査定額からもっとも市場価値に近いものを見極めることが重要になるのです。
高い査定額を出してくれたという理由だけで不動産会社を信頼するのではなく、査定の根拠を把握して適正な査定額を判断しましょう。そのためにも、不動産会社に任せきりにはせず、オーナー自身がマンション周辺の売買傾向をつかんでおくことが必要です。
不動産鑑定士に査定してもらう
通常の売却では利用することはありませんが、特定のケースでは不動産鑑定士にマンションの査定を依頼する必要があります。たとえば以下の場合があげられます。
・公的機関や企業が関係する手続きが必要な場合
・裁判所への提出が必要となる場合
不動産鑑定士の査定で用いられる調査方法は、「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」の3つです。
原価法は不動産を建てた場合に生じる土地の取得費用や整備代、資材費などの原価を算出する方法です。取引事例比較法の場合は条件が似た物件の取引事例を参考に評価し、収益還元法は不動産を貸し出した場合の回転率や空室率など、収益性の観点から評価します。
それぞれ原価法は戸建てに、取引事例比較法はマンションに、収益還元法はアパートやマンションなど一棟ものの賃貸物件に用いられることが一般的です。
不動産鑑定士に査定を依頼するとそれなりの費用が生じますが、より高精度に評価額を算出できるメリットがあります。
査定額は依頼する不動産の種類によって大きく異なります。目安としては、15~40万円程度です。
不動産一括査定サイトを利用する
複数の不動産会社へそれぞれ査定を依頼すると、同じ情報を繰り返し入力・共有しなければならず、多くの時間がかかります。時間や手間を削減するためには、不動産一括査定サイトの利用もおすすめです。
不動産一括査定サイトは、ひとつの入力フォームに物件情報を入力するだけで、複数社にまとめて査定依頼できるツールです。一度に多くの不動産会社に依頼できるため、デジタルツールの入力が苦手な方も手軽に一括査定できます。
また、同時に複数社へ査定依頼を出すことで、各社の対応の早さも比較ポイントに加えられるメリットがあります。
便利な一方で、不動産一括査定サイトで気を付けなくてはならないのが「複数社から営業が来る」という点です。申込み社数が多いほど対応に手間がかかるため、必要以上に多くの不動産会社へ依頼しすぎないようにしましょう。
また、不動産会社によっては、競合他社に勝つため(依頼を獲得するため)一括査定サイトの査定額を実際よりも高くするケースもあります。査定額はあくまで参考程度に抑え、対応内容や会社自体の評判なども含めて検討することが大切です。
イエリーチ
投資目的で所有・売却する不動産に特化したサービスを提供する「イエリーチ」もおすすめです。
イエリーチで収支管理・収支シミュレーション・売買シミュレーションが無料で利用できるため、積極的に不動産を売買したい方や自己管理の方にも最適です。
市場価格の査定依頼も、登録したアカウント上から手軽に操作できるため、改めて物件情報などを入力する手間もありません。一度登録した物件情報も自由に修正・削除できます。
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マンション評価額と売値が違う理由
査定がマンション売買の専門家である不動産会社によるものであっても、査定額と実際の売却価格とは異なる結果に終わることはよくある話です。しかし、どうして評価額と売値が違ってしまうのでしょうか。
その理由は、マンションを評価する方法にあります。通常、マンションの評価法には、たとえば対象物件と条件の似たマンションの取引実績や建物の状態などを総合的に評価したり、利回りの予測からマンションの現在の価値を割り出したりと、さまざまな手法があります。
しかし、いずれの方法も公的な数値や理論にもとづいたものではないため、相続税評価額とは違って、正解があるわけではありません。
また、不動産の売買は売り主と買い主の合意によって成立するため、売却価格は交渉によって変動することも珍しくないのです。
不本意な売値とならないためにも、査定額を知ることは大切です。しかし、マンションの売却に際しては、査定額にとらわれすぎず、市場を見極める目を持つことも大切です。
まとめ
マンションの評価額を知るときには、土地と建物を別々に評価して合算するという基本を押さえておくことが大切です。また、土地については共有部分も対象となる点にも注意しましょう。
相続の場合は、国に定められた公的な数値をもとに正確な評価額を導き出すことができます。しかし売却の場合は、不動産会社の査定額がそのまま売値と一致するとは限りません。
不動産会社から出される査定額は売却価格の目安にとどめ、オーナー自身が適正な売却価格を見極めることも大切です。