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エレベーター制御盤のリニューアル交換をはじめ、補助金が出るケースや修繕費として計上できる場合があります。
本記事ではエレベーター制御盤のリニューアル交換方法や補助金の例、かかった費用を修繕費として計上する方法を紹介しています。
エレベーター制御盤の交換を検討している方はぜひ参考にしてください。
エレベーター制御盤のリニューアル交換方法と相場・工事期間
エレベーター制御盤の交換方法には下記の3種類あります。
・全撤去新設リニューアル
・準撤去リニューアル
・制御リニューアル
相場・工事期間とあわせて解説します。
全撤去新設リニューアル
全撤去新設リニューアルとは、既設のエレベーターをすべて撤去して新しいエレベーターに取り替えるリニューアル方法です。
すべての機器を取り換えるため新しいメーカーに切り替えることもできます。
全撤去新設リニューアル(1台)の相場・工事期間の目安を下の表にまとめています。
項目 | 目安 |
工期 | 約30日 |
費用の目安 | 1,200万円~1,500万円 (新設するエレベーターにより 費用が大きく変動します) |
全撤去新設リニューアルは、すべての機器を新設するため現在の法令への適合ができます。
準撤去リニューアル
準撤去リニューアルとは下記の機器を取り換えるリニューアル方法です。
・制御盤
・釣合おもり
・巻上機
・かご室一式
ガイドレールや敷居などの機器はそのまま活用します。
準撤去リニューアル(1台)の相場・工事期間の目安を下の表にまとめています。
項目 | 目安 |
工期 | 約20日 |
費用の目安 | 400万円~1,000万円 |
全撤去新設リニューアルに比べて費用が安く、工期が短いメリットがあります。
制御リニューアル
制御リニューアルとは、制御盤や電動機などの制御システム交換を中心としたリニューアル方法です。
制御リニューアル(1台)の相場・工事期間の目安を下の表にまとめています。
項目 | 目安 |
工期 | 約10日 |
費用の目安 | 400万円~700万円 |
制御リニューアルのメリットは、他のリニューアル方法に比べて工期が短く価格が安いことです。
制御盤以外に交換の必要箇所がない場合は制御リニューアルをおこないます。
エレベーター制御盤の交換費用は修繕費にして節税できるケースがある
エレベーター制御盤の交換費用は修繕費として計上して節税できる場合があります。
下記の順番で解説します。
・修繕費とは
・基本的支出と修繕費の違い
・エレベーター制御盤の修繕費の計算方法
修繕費とは
修繕費とは固定資産を修理・改修する際にかかる費用のことです。
確定申告では経費として計上して、かかった費用を年間の収入から差し引けます。
たとえば、マンション経営で年間に1,000万円の利益があるとします。
修繕費が400万円かかった場合、課税対象となる所得は「1,000万円-400万円=600万円」となるわけです。
制御盤の交換費用を修繕費として計上すると課税対象となる年間所得が減るため、節税ができます。
資本的支出と修繕費の違い
資本的支出と修繕費の違いは、修理・改修によって固定資産の価値が上がるかどうかです。
新しい機能を追加して固定資産の価値が上がる修理・改修は資本的支出、原状回復や維持管理のための修理・改修は修繕費となります。
また、会計上の処理としての違いは下記の通りです。
・修繕費:経費として一括計上できる
・資本的支出:経費として減価償却で計上する
修繕費はかかった費用を経費として一括計上できるのに対し、資本的支出は減価償却による計上です。
減価償却はかかった費用を一定期間で配分する処理になるため、翌年の節税効果は修繕費に比べて低くなります。
制御リニューアルの場合だと、制御盤が故障してエレベーターが使えないという理由で部品を交換するなら修繕費です。
しかし、部品を交換して新しい機能が付加されると資本的支出となります。
制御盤の交換費用は、修繕費・資本的支出の両方に該当するケースもあります。
その場合は新しい機能によって上がった価値を資本的支出、それ以外を修繕費として計上することも可能です。
エレベーター制御盤の修繕費で節税する場合のシミュレーション
エレベーター制御盤の交換を制御リニューアルでおこなった際の費用を修繕費にした場合、どれくらい所得税の節税効果が見込めるか下記を条件にシミュレーションします。
・制御リニューアルの費用:400万円
・マンション経営の年間所得:1,350万円
年間所得が900万円以上~1,800万円未満の所得税の税率は下記の計算式で求められます。
「年間所得×33%-153万6,000円」
[参考]No.2260 所得税の税率-国税庁(2023/04/15時点)
制御リニューアルをしない場合の税金は下記の通りです。
「1,350万円×33%-153万6,000円=291万9,000円」
制御リニューアルをした場合の税金は下記の通りです。
「(1,350万円-400万円)×33%-153万6,000円=159万9,000円」
修繕費として計上すると約132万円の節税効果を得られたこととなります。
エレベーター制御盤の交換費用に補助金が適用されるケースがある
エレベーター制御盤の交換をおこなうと補助金が適用されるケースがあります。
下記の順番で詳しく解説します。
・補助金の例
・補助金を利用する場合の注意点
補助金の例
エレベーター制御盤の交換は所定の条件を満たすと補助金が受けられるケースがあります。
下の表をご覧ください。
機関 | 補助対象 | 事業名 |
国土交通省 | 950万円 | エレベーターの防災対策改修事業 |
東京都港区 | 300万円 | エレベーター安全装置等設置助成事業 |
東京都新宿区 | 145万円6,000円 (帰宅困難者一時滞在施設は 191万6,000円) | エレベーター防災対策改修支援事業 |
【参考】(2023/04/15時点)
国土交通省:エレベーターの防災対策改修事業
東京都港区:エレベーター安全装置等設置助成事業
東京都新宿区:新宿区エレベーター防災対策改修支援事業のご案内
エレベーターの安全装置等設置や防災対策改修をおこなうことで助成金を受け取れます。
国土交通省の防災対策改修事業は戸開走行保護装置を設置すると、1台につき950万円の補助金が受けられる制度です。
戸開走行保護装置は制御盤が故障した場合に、エレベーターのかごが昇降しないように制止する装置です。
国土交通省はエレベーターのリフォームや制御盤交換時に戸開走行保護装置の導入を検討するように促しています。
自治体によっては、独自の補助金制度を設けている場合もあるため、マンションがある自治体の補助金情報も事前に調べておきましょう。
補助金を利用する場合の注意点
補助金を利用する場合の注意点は、募集期間が設定されているケースが多いことです。
募集期間をすぎてしまうと補助金の申請ができません。
補助金によっては募集上限が設けられている場合もあります。
上限に達すると募集期間内でも申請ができないため注意しましょう。
また、経年劣化による制御盤交換そのものに特化している補助金制度は多くありません。
防災や安全装置を付帯するための制御盤交換に、補助金制度が設けられています。
防災や安全装置がもともと付帯しているエレベーターの場合、受けられる補助金はさらに少なくなるため注意しましょう。
制御盤交換にかかった費用についても、価値を付加する改修だと会計処理は修繕費ではなく資本的支出になる可能性があります。
補助金を受けることで節税効果が小さくなる場合もあるため注意しましょう。
マンション売却前にエレベーター制御盤は交換した方がいい?
マンションを売却するならエレベーターの制御盤を交換する前がおすすめです。
なぜなら、エレベーターの制御盤を交換することで修繕積立金が値上がりし、マンション売却がしにくくなるためです。
基本的にエレベーター制御盤の交換にかかる費用は修繕積立金でまかないます。
修繕積立金とは、マンションの大規模修繕に備えて住人から集めている積立金です。
エレベーター制御盤の交換後に修繕積立金が増額する理由は、実際にかかる費用に対して修繕積立金が不足することが多いためです。
修繕積立金は長期修繕計画に基づいて金額を算出します。
近年は物価上昇によって工事費が値上がりしているため、修繕積立金だけでは制御盤の交換費用が足りない可能性が高いです。
足りない分は金融機関から借りる必要があるため、借り入れした分が修繕積立金に反映されて増額します。
修繕積立金の増額によりマンションが売れにくくなり、マンション価値が下がることにつながります。
マンション売却を検討している場合は制御盤の交換前がおすすめです。
まとめ
エレベーター制御盤の交換方法は、大規模修繕が必要なら全撤去新設リニューアルや準撤去リニューアルでおこないます。
制御盤以外の機器が正常なら、工事の日数や費用が少ない制御リニューアルが最適です。
エレベーターの制御盤交換には多くの費用が発生します。
修繕積立金ですべての費用をカバーできるとも限りません。
金銭的な負担を減らすために、補助金制度の活用や修繕費で計上して節税するなどの対策をおこないましょう。
制御盤交換を検討されている方はぜひ本記事を参考にしてください。