アパート経営者の平均年収は542万円と推測できます(専業・兼業含む)。
本記事では、アパート経営者の平均年収の根拠や収支のシミュレーション、金融機関から融資を受けやすくする方法について解説しています。
副業や年金対策としてアパート経営を検討されている方は参考にしてください。
アパート経営の平均年収542万円の根拠
国税庁の「令和3年分調査 申告所得税標本調査」によると、アパート経営者を含む不動産取得者の平均年収は542万7,000円です。国税庁は、不動産所得者の定義を下記いずれの所得よりも不動産所得が大きい方としています。
・利子所得
・配当所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
・雑所得
国税庁の不動産所得者の定義では、他の所得を得ている兼業の経営者も含まれるため平均年収は参考程度にとらえてください
アパート経営とマンション経営の違い
アパート経営とマンション経営の最も大きな違いは始め方です。アパート経営では原則1棟で経営を開始します。対してマンション経営は一般的に1室経営から始めます。
始め方 | 構造 | |
アパート経営 | 基本は1棟経営 | 木造や軽量鉄骨造が多い |
マンション経営 | 基本は1室経営 | 鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が多い |
表に記載した事項はあくまで一例です。マンション経営であっても1棟所有されている方はいます。
アパート経営のシミュレーション例
下記の条件をもとにアパート経営のシミュレーションをおこないます。
<シミュレーションに用いるアパートの条件>
・東京都練馬区 全10室
・家賃:1室4万円
・共益費:1室4,000円
・礼金0円、駐車場なし
・借入金:3,000万円 固定金利2%
・借入期間:20年
・返済方法:元利均等
・管理費:家賃+共益費の5%
・固定資産税評価額:7,000万円
アパート経営の収入を合算する
はじめにアパート経営の収入を合算します。1室が生み出す収益は4万4,000円(家賃4万円+共益費4,000円)です。全10室あるため月の収入は、44万円(4万4,000円×10室)となります。つまり、1年間の収入は528万円(44万円×12か月)です。
上記のシミュレーションはあくまで空室が一切出なかったケースです。実際には空室が生じることもあるため、収入の下振れを想定しておきましょう。
また計算式からわかるようにアパート経営の収入を増やすためには、家賃または部屋数を増やす必要があります。
アパート経営の支出を合算する
次にアパート経営で生じる支出を合算します。今回のシミュレーションで想定する支出は以下の4つです。
・ローンの返済
・管理費
・保険料
・税金
ローンの返済
借入期間20年で3,000万円を固定金利2%にて借り入れ、元利均等返済したケースの月額の返済額は15万1,765円です。年間でおよそ182万1,000円となります。
月々の返済額は、住宅保証機構株式会社が提供している計算サイトを活用すると簡単に算出できます。
管理費
管理費とは修繕費用や清掃費用など物件を維持するために必要な費用をさします。
今回のシミュレーションでは1室当たり5%としてで計算します。
月額の管理費は2万2,000円(4万4,000円×5%×10室)です。年間の管理費は26万4,000円(2万2,000円×12か月)です。
保険料
保険料の目安は、損害保険ジャパン株式会社が提供している計算サイトを用いると簡単に算出できます。下記の条件で火災保険料と地震保険料を試算すると、保険料の相場は49,930円(年間)です。
※算出された保険料は、損害保険ジャパン株式会社の商品内容に基づいています。他保険会社のサイトにて同条件で試算しても、保険料は異なる可能性があります。
<試算の条件>
・東京都
・木造アパート(省令準耐火でないもの)
・家財金額1,300万円
【参考】保険料クイック試算-損保ジャパン
保険料はエリアや保障内容などによって異なるため、詳しい保険料を知りたい方はご自身で試算してみてください。
税金
税金は下記の4種類を想定しています。
・所得税
・住民税
・固定資産税、都市計画税
所得税
所得税は下記の計算式から課税所得を求めます。
年収528万円-支出およそ212万7,000円(ローンの返済182万1,000円+管理費26万4,000円+4万2,000円)=課税所得315万3,000円
- 課税所得315万3,000円×税率10%-控除額9万7,500円=所得税21万7,800円
住民税
上記で算出した課税所得315万3,000円の10%を想定して、住民税はおよそ31万5,000円とします。
固定資産税・都市計画税
東京都練馬区高野台を想定して固定資産税評価額7,000万円とします。
・固定資産税98万円(固定資産財評価額7,000万円×税率1.4%)
・都市計画税21万円(固定資産財評価額7,000万円×税率0.3%)
・合計119万円(固定資産税98万円+都市計画税21万円)
手取り収入
経営者の手取り収入は、これまで計算した収入と支出から計算します。
- 収入528万円-385万7,730円=手取り収入142万2,270円
あくまで一例ですので、購入予定の物件で必ずシミュレーションをおこなってください。
アパート経営で融資を受けやすくする方法
アパート経営で金融機関から融資を受けやすくする方法は下記の5つです。
・本業の収入を上げる
・自己資金を蓄える
・事業計画を立てる
・築浅の物件を購入する
・融資を希望する金融機関の普段使いをおこなう
本業の年収を上げる
副業としてアパート経営を考えている方は、本業の年収を上げましょう。金融機関が融資の審査をおこなう上で、年収は非常に重要視されます。アパート経営が失敗しても、高年収であればローンの返済が滞る可能性が低いからです。
極端な例ですが3,000万円の融資を希望する場合、本業の年収が3,000万円あればアパート経営に失敗しても返済が滞ることはないでしょう。一方で本業の年収が300万円の方がアパート経営に失敗してしまうと、返済が滞ってしまう可能性が高いと判断されます。
自己資金を蓄える
自己資金を蓄えることも融資を受けやすくする方法です。自己資金が十分あれば、トラブルが生じてもローンの返済に影響が出にくいと金融機関が判断するためです。
3,000万円の融資を申し込むケースで考えてみましょう。自己資金が3,000万円あれば想定よりも空室率が高い、賃料が安くなってしまったなどのトラブルが生じても自己資金からローンの返済は問題なくおこなえます。
一方で自己資金が全くなければ、想定通りの家賃収入が得られないと返済が滞る可能性が非常に高いです。そのため自己資金が十分にあると、返済トラブルが起きにくいため、融資が受けやすくなります。
事業計画を立てる
金融機関を納得させられる事業計画があると融資を受けやすくなります。しっかりと事業計画を作成すると、金融機関に対して競合物件に勝つ方法やリスクの対処法を説得力を持って説明できます。
金融機関が融資する際の懸念は「貸したお金を回収できないこと」です。金融機関の懸念事項を払拭するためには、事業計画で以下の項目を説明しましょう。
・物件の概要(立地・築年数・構造・賃料・物件価格など)
・集客プラン
・近隣の状況
・トラブルに対する対処法
上記の項目がしっかり説明できると金融機関の懸念事項がなくなり、融資を受けられる可能性が高まります。
築浅の物件を購入する
築浅の物件は融資を受けやすいです。なぜなら築年数が経っていない物件の方が資産価値が高いと判断されるからです。一般的に建物は築年数が経つごとに資産価値は下落します。
金融機関はローンの返済が滞ったときに備えて、融資を受けて購入する物件に抵当権を設定するケースが一般的です。返済が滞ると抵当権が設定されている物件を売却して、売却代金を返済に充てます。
築浅の物件であれば資産価値が高いため、返済が滞っても物件の売却代金で融資額を回収できる可能性が高いです。一方で築年数が経っている物件は資産価値が低く、売却しても融資額を回収できる可能性は低くなります。
融資したお金を回収できない事態が発生しにくい築浅の物件であれば融資を受けやすいです。
融資を希望する金融機関の普段使いをおこなう
融資を希望する金融機関の普段使いをおこないましょう。基本的に金融機関は「一見さん」を嫌うため、利用実績のない状態で「不動産投資のために融資をしてください」とお願いしても断られる可能性が高いです。
ただし普段から預貯金などで金融機関を利用すると利用実績ができるため、担当者が話を聞いてくれる可能性が高まります。例えばある金融機関の口座で月5万円ずつ5年間貯金して、合計300万円を貯めたとしましょう。
5年間コツコツ貯金している方は利用実績があるため金融機関からお客様として扱ってもらえます。また300万円の自己資金が貯まっているため、融資を受けられる可能性が高まります。
金融機関は利用実績のない方を警戒して融資をおこなわない可能性が高いです。金融機関から融資をしてもらうためには、普段から金融機関を利用して利用実績を貯めておきましょう。
まとめ
本記事では、アパート経営者の年収の根拠や収支のシミュレーション、アパート経営を始めていない方に向けて金融機関から融資を受けやすくする方法について解説しました。
アパート経営における収入は入居者からの家賃や駐車場の利用料などわかりやすいものが多いです。一方で支出は物件に拠るところが大きく、本記事では主な4つの支出について解説しました。
・ローンの返済
・管理費
・保険料
・税金(所得税・住民税・固定資産税・都市計画税)
物件毎にかかる費用が異なるため、収支のシミュレーションは物件の状況に合わせて柔軟におこなってください。