更新工事費は修繕費に該当する?資本的支出との見分け方を解説

更新工事費は修繕費に該当する?資本的支出との見分け方を解説

目次1 更新工事の定義2 修繕費に該当する費用の基準3 更新工事が修繕費にあたるか判断するポイント4 更新工事費用が修繕 … 続きを読む 更新工事費は修繕費に該当する?資本的支出との見分け方を解説


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更新工事の費用は一般的に、資本的支出に計上されるケースが多いです。しかし、すべての更新工事が減価償却されなければならないわけではありません。

本記事は下記のような方におすすめです
  • 更新工事を修繕費に計上できるか知りたい
  • 更新工事か更生工事か迷っている

この記事では更新工事の定義と更生工事との違い、修繕費の概要や修繕費に該当する更新工事の例を紹介しています。

更新工事の定義

まずは更新工事の定義を解説します。

  1. 新規配管の設置工事
  2. 更新工事と更生工事との違い

更新工事と混同されやすい更生工事との違いについても説明します。

新規配管の設置工事

更新工事とは新規配管の設置工事です。マンションの配管を取り替えて、新しい配管を設置する事を更新工事と呼びます。

配管を再設置するため工事費用が高く、工事期間も長くなりますが、耐用年数が大幅に延長される点が特徴です。

配管の耐用年数が大きく延びるため、資本的支出に計上されるケースがほとんどですが、内容によっては修繕費として計上できます。

更新工事と更生工事との違い

更生工事とは、劣化した給水管や排水管を研磨洗浄し、そのうえにコーティングを施す工事です。既存の管を利用した工事であり、工事期間が短く費用も更新工事よりは安くなります。

更生工事は既存の配管の中に新たに管を作るイメージの工事のため、耐久性は改善します。

ただし、配管の腐食の進み具合や劣化具合によっては更生工事の選択肢は難しく、更新工事を選ばなければならないケースがある点に注意しましょう。

既存の配管を利用しての修理にあたるため、更生工事は修繕費として計上するケースがほとんどです。

修繕費に該当する費用の基準

修繕費に該当する費用の基準

次に、修繕費に該当する費用の基準について説明します。

  1. 固定資産の維持管理・原状回復費用は修繕費
  2. 資産価値を高めるための修理は資本的支出

マンションの更新工事が修繕費にあたるか、資本的支出にあたるか判断するためには、正しく修繕費の概要を理解する必要があります。

固定資産の維持管理・原状回復費用は修繕費

修繕費に該当する費用とは、固定資産の維持管理・原状回復のための費用です。つまり、配管の劣化による更生工事は原状回復に該当するため、修繕費に計上できます。
確定申告時は一括で工事費を計上できるため、マンション収益を帳簿上大きく抑える効果があります。
そのほか劣化したマンション外壁の塗り替え、故障した機器の交換などは修繕費です。

資産価値を高めるための修理は資本的支出

資産価値を高めるためにおこなわれる工事などは、資本的支出となり、減価償却しなければなりません。
たとえば、マンションの配管を一掃して取り替える更新工事は、耐用年数を大きく延長します。その場合は資産価値を付加することになるため、修繕費ではなく資本的支出に計上しなければなりません。

補足

ただし更新工事であっても、災害などで故障が見られる場合などは修繕費に計上するケースもあります。更新工事はすべて資本的支出という判断ではなく、工事の目的や内容に応じて判断しましょう。

更新工事が修繕費にあたるか判断するポイント

更新工事が修繕費にあたるか判断するポイント

更新工事が修繕費に該当するか判断する5つのポイントを紹介します。

  1. 定期的な修繕工事か
  2. 維持管理の範囲か
  3. 修繕費用が20万円未満か
  4. 更新工事費用が60万円未満または取得価格の10%相当額以下か
  5. 更新工事で耐用年数が延長するか

更新工事は一般的に、配管の耐用年数を延長するため資本的支出にあたると一元的に判断されがちです。しかし、工事の目的によっては修繕費に計上できるため、判断基準を把握しておいてください。

定期的な修繕工事か

定期的な修繕工事の場合は、修繕費に該当します。定期的とは概ね3年以内の周期のことです。
【参考】第8節 資本的支出と修繕費|国税庁

上記を反映させると、定期的な配管清掃や更生工事であれば修繕費として認められます。

維持管理の範囲か

マンションの維持管理に必要だと判断される更新工事は、修繕費として認められます。
たとえばマンション内で水漏れが発生し、その修繕のために更新工事をした場合は、維持管理の一環です。
更新工事の際に同等の排水管に取り替える場合は、資産価値の向上ではなく、機能回復の範囲と判断できるため、修繕費に該当します。

修繕費用が20万円未満か

更新工事を修繕費に計上すべきか迷った場合は、工事費用の額で判断する方法もあります。「No.5402 修繕費とならないものの判定|国税庁」によると、修繕費が20万円未満の場合は内容に関係なく修繕費に計上するというルールがあるためです。

補足

ただし更新工事は工事規模が大きく、長期の工事になるため20万円未満になるケースはほぼありません。

更新工事費用が60万円未満かつ取得価格の10%相当額以下か

更新工事の費用が60万円未満かつ取得価格の10%相当額以下の場合は、修繕費として認められます。
計上費用が資本的支出か修繕費か明らかでない場合は、この基準を用いて区別できるルールです。

補足

更新工事によって明らかに耐用年数が延長する場合は、このルールは適用できません。

更新工事で耐用年数が延長するか

更新工事で耐用年数が延長するかどうかも、判断の重要なポイントです。一般的に更新工事は配管を新しいものへ取り替える工事のため、原則として耐用年数が延長すると考えられます。

マンション標準管理規約(単棟型)」によると、マンションの給水・排水管の更新工事の修繕周期は30〜40年とされています。つまり、更新工事によって耐用年数は30〜40年程度延長されるということです。

原則更生工事で定期的なメンテナンスをおこない、更生工事では対応できない劣化が見つかった場合の更新工事であれば、修繕費として損金に計上できる可能性があります。

単純にマンションの機能向上のための更新工事を実施した場合は、耐用年数が延長され資産価値が上昇すると考えられ、資本的支出に該当するケースが多いです。

更新工事費用が修繕費に該当する場合

更新工事費用が修繕費に該当する場合

更新工事費用が修繕費に該当する具体例を2つ紹介します。

  1. 劣化した配管と同等の配管に交換する場合
  2. マンションの一部の部屋のみの更新工事

更新工事の費用区分がわからない場合は、具体例を参考に判断してください。

劣化した配管と同等の配管に交換する場合

経年劣化でマンションの給水管・排水管が劣化し、その機能回復のために更新工事を実施する場合は、修繕費に該当します。

劣化による機能の回復を目的とした工事であり、原状回復目的の工事と認められるためです。

マンションの一部の部屋のみの更新工事

マンション専有部分の配管のみを一部取替する更新工事の場合も、修繕費に計上できる可能性があります。ただし、一部のみの更新工事であっても目的によっては資本的支出に該当する点に注意しましょう。

たとえば売却前に資産価値を上げるための更新工事などは、資産価値上昇が目的のため、資本的支出です。

新工事を修繕費・資本的支出にするか迷った場合の対処法

更新工事が修繕費に該当するか、資本的支出に該当するか迷ったら、3つの方法で判断しましょう。

  1. 国税庁のフローチャートに照らし合わせる
  2. 税理士に相談する
  3. 国税庁に問い合わせする

自身で損金計上または減価償却できますが、万が一仕訳が誤っていると申告が認められません。確実に正しい勘定項目へ仕訳できるように、対策を把握しておきましょう。

国税庁のフローチャートに照らし合わせる

更新工事の仕訳に迷ったら、「修繕費と資本的支出の区分(フロー図)」を参照しましょう。
フローチャート通りに判断を進めていけば、最終的に更新工事の費用を修繕費と資本的支出のどちらへ仕訳すれば良いかわかります。

税理士に相談する

更新工事の仕訳および確定申告については、税理士に相談する方法も有効です。税理士は税務処理のプロであり、正確な知識で仕訳をおこないます。
また、マンションで得られる家賃所得や売却益の申告なども代行してくれるため、不安な方は税理士に処理を任せましょう。

国税庁に問い合わせする

国税庁へ問い合わせをし、更新工事が修繕費にあたるか判断を仰ぐことも可能です。
税についての相談窓口|国税庁」から、チャットボットやよくある税の質問、または個別に質問を送付して回答を待つことができます。
ただし、即時回答が得られるとは限らないため、確定申告ギリギリではなく前もって問い合わせしておきましょう。

まとめ

マンションの配管を取り替える更新工事は、耐用年数が延長されるため、資本的支出に計上されるケースが多いです。しかし、目的によっては修繕費として損金計上できるため、仕訳の判断を誤らないようにしましょう。

更新工事の仕訳に迷っている方は、税理士に相談したり、物件を管理委託している管理会社に相談してみてください。管理会社は税務アドバイスはできませんが、不動産に強い税理士を紹介してくれることもあります。

修繕費の仕訳方法を正しく把握して、マンション維持管理に欠かせない更新工事を実施しましょう。