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入居者がすぐに退去してしまう理由
入居者が退去する理由は人それぞれです。しかし退去が立て続きに起こるようなら、投資用物件として根本的な部分で問題を抱えている可能性があります。空室リスクを上げないためにも、所有する物件に問題がないかを確認しておきましょう。
ここでは、入居者がすぐに退去してしまう主な理由を3つ紹介します。
建物や立地に対する不満
入居者が退去を選ぶ理由のひとつが、物件そのものに対する不満です。
不満の例として、「水回りや給湯器といった設備の老朽化が進んでいた」「隣室や上階の部屋からの物音が響く」「日当たりが悪い」「ゴミ置き場や駐輪場など共有スペースが乱雑に扱われている」などがあります。
建物や設備は毎日目にするものなので、老朽化していたり不衛生な状態であったりする場合、入居者の不満につながりやすいといえます。
築年数に応じた劣化は仕方のないものです。しかし、設備が故障したときの対応や清掃など日頃からメンテナンスされているかどうかは、入居者の物件に対する評価へ影響を与えてしまうでしょう。
また、ワンルームマンションなど学生や会社員がメインターゲットとなる物件では、最寄り駅までの距離や交通アクセスが重視される傾向にあります。そのため、「駅から遠い」「乗り換えが多い」といった立地の場合も、入居者の不満につながりやすくなるでしょう。
隣人への不満
退去理由のひとつとして多いのが、隣人トラブルに関するものです。
物件そのものには満足して入居したとしても、実際に暮らしてみなければ、近隣にどんな人物が暮らしているのかは知ることができません。もしも隣人による「夜間に騒がしくする」「ゴミの処理をきちんとしない」などの迷惑行為で入居者が困っていても、オーナーが常に実態を把握することは難しいです。
実態を把握できなければ迷惑行為への対処もできないでしょう。その結果、入居者は我慢を重ねたのち、あきらめて退去してしまいます。
家賃や管理費への不満
家賃や管理費など毎月支払うコストに対する不満も、退去理由につながりやすいです。
特に家賃に関しては、同じ物件に長く住む入居者ほど家賃に対する不満を抱きやすいといわれています。
また、2年に1度訪れる更新料の支払いが、退去を考えるきっかけになることもよくあります。更新料は家賃0.5~2ヵ月分で設定されることが多いですが、金額に対する根拠が不明瞭で理不尽に感じる入居者も多いでしょう。
退去理由の把握にはアンケートが効果的
オーナーが入居者と話をする機会はそう多くはありません。そのため、入居者が退去するときは、物件に対する率直な意見を聞ける好都合なタイミングだといえるでしょう。その際におすすめなのが、退去時にアンケートを行うことです。
退去の理由は物件によってさまざまなため、実際に居住していた入居者の意見をダイレクトに得られるアンケートが効果的と言えます。アンケートのみ配布しても回収率が低い場合は、解約通知書とセットにしたり、退去立ち合いの場で回収するようにしたりと、回収率を上げる工夫も必要です。
また、更新の半年前など定期的に行う方法も検討してはいかがでしょうか。アンケート結果に応じて設備を交換したり修繕を行ったりすると、退去の可能性を下げる効果が期待できます。
アンケートは「はい」か「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンを交え、退去する人の負担にならない形式にします。そして「次に入居する方のために」という前提の元、本音を聞き出すことを意識しましょう。
管理会社に入退去の業務を委託していたとしても、アンケートはオーナー自身で行うようにしてください。もしも管理会社側に問題がある場合、アンケートを通じて問題が発覚する可能性があるからです。
【理由別】入居者の退去を防ぐ方法
入居者が退去を検討する理由はさまざまです。家賃など金銭的な理由や仕事の事情もあれば、物件や管理会社への不満が原因である場合も考えられます。
入居者の退去理由は、大きく分けると「建物に対する不満」と「隣人への不満」、「家賃や管理費への不満」の3つです。
ここではそれぞれの理由別に入居者の退去を防ぐ方法を紹介します。
建物に対する不満への解決策
築年数の経った物件は、まず建物に対する不満がないか考えてみましょう。オーナーとして経年劣化に応じた家賃設定など柔軟な対応をしているつもりでも、入居者が納得しているとは限りません。
また、長期間の入居ともなれば、居住中に設備の劣化や故障が発生することが想定されます。入居直後であっても、内見時に気付かなかった設備の異常に後から気付いて不満やトラブルの原因となるケースもあります。
建物に対する不満を解決する方法は、以下の2つです。
建物の修繕・設備の交換
建物は年月を経るごとに劣化していきます。建物や設備が老朽化していれば、入居者の利便性が損なわれるだけではなく、事故やケガなどのリスクも高くなります。入居者のリスクを軽減するためにも、建物の修繕や設備の交換はきちんと実施しましょう。
そもそも、物件の所有者には賃貸物件に対する修繕義務があります。
2020年4月の民法改正により、所有者が修繕を怠った場合、修繕が必要な部分の割合に応じて家賃が減額されることになりました。
物件の所有者として義務を果たすことが、退去者を減らすことにつながるでしょう。
部屋の付加価値をつける
コストをかけずに部屋の付加価値を高めるなど、以下のような方法を検討してはいかがでしょうか。
・DIY可の物件にする
・ペット可とする
海外では、賃貸物件でもDIYで自分が住みやすい環境に整えることを認めているケースは珍しくありません。日本もDIYを趣味とする人は多いため、建物の耐久性などに影響を与えない範囲での許可がおすすめです。
また、ペットの飼育を許可することも高い効果が期待できます。さらに付加価値を高めるために、共用部にペット用の足洗い場やシャワーを設置しても良いでしょう。
隣人への不満の解決策
集合住宅では、些細な理由で上下階や両隣の住人とのトラブルが発生することがあります。管理会社が間に入って解決してくれることもありますが、事態が悪化した場合は退去の原因となりかねません。
大きなトラブルに発展したり、退去を告げられたりする前に、隣人への不満を可能な限り解決しましょう。
契約時にルールを明示する
日々の生活で少しずつ隣人に対するストレスが溜まると、大きなトラブルに発展します。たとえば騒音やゴミ出しマナーなどがあげられます。
騒音は単純にテレビの音声や子どもの走り回る足音などが原因の場合もあれば、早朝や深夜の洗濯機やシャワーの音など、ライフスタイルの違いによるものも含まれます。ゴミ出しマナーはカラス除けのネットをかけなかったり、回収日当日ではない日にゴミ出しを行ったりするケースなどです。
このようなライフスタイルの違いやマナー違反が、入居者トラブルにつながります。「早朝や深夜の洗濯機利用は避ける」など、契約時にルールを明示することで、ある程度のトラブルは避けられるでしょう。
入居審査を厳しく行う
とにかく空室を早く埋めたい、と入居審査の基準を甘くしていないでしょうか。誰でも簡単に入居できる物件はトラブルを招きやすく、長く住んでくれている入居者が退去する原因にもなります。
きちんとマナーが守れそうな人か、家賃滞納や騒音などの心配はないか、厳しくチェックを行いましょう。すでに居住している入居者とあまりにもライフスタイルや属性が異なる人物の入居は、慎重に検討すべきです。
家賃や管理費への不満の解決策
収益性や管理コストを考えると、家賃や管理費を高く設定して良いと思うのはどのオーナーも同じでしょう。しかし物件に見合わない家賃や管理費は入居者の不満を招き、早期退去や空室率の増加につながります。
入居者の立場になって、長く住み続けたいと思う家賃・管理費の設定が必要です。
周辺物件の家賃相場を調べる
退去が続いたと感じたとき、オーナーがまず行っておきたいのが家賃相場を調べることです。
周辺の競合物件とかけ離れた価格が設定されているのなら、次の入居者募集に合わせて家賃の改定を検討してください。家賃相場の調査は、所有物件の市場価値を把握するためにも、定期的に行っておくと安心です。
更新料を廃止・値下げする
更新時期に合わせて退去する人が増える場合は、更新料そのものを廃止する方法もあります。
毎月の家賃に合わせて支払うことになる更新料は、入居者にとって大きな負担です。さらに近年では、敷金・礼金ともに0円の物件が増えているため、新しい物件へ移る敷居が低くなっています。そういった事情により、更新時期に退去する人が増えているのです。
それまで得ていた更新料を失うことは、オーナーにとって苦しいことかもしれません。しかし、入居者の退去を防いで安定した家賃収入を維持することのほうが、長期的に見れば経営は安定するといえるでしょう。
更新料の廃止が難しい場合は、更新の度に可能な範囲で値下げをするのも効果的です。長く住むほど特典を得られるなど好条件を設けることで、早期退去の防止にもなります。
対策を実施する前に費用対効果を確認
建物の修繕や設備の交換など、対策内容によっては費用が必要です。もちろん、空室や退去の対策を目的としている以上、対策にかけた費用が回収されないような事態は避けなくてはなりません。
一時的なマイナス収支は仕方ありませんが、長期的なものとならないよう、キャッシュフローを考えながら対策を練ることが大切です。手軽に収支管理を行いたい方は、イエリーチの活用を検討してはいかがでしょうか。
イエリーチは所有する複数の物件情報を一括管理できるうえ、収支管理や収支シミュレーションなど、キャッシュフローを考えるうえで必要な情報整理もできます。いずれも無料で利用できるため、物件情報をまとめるだけでも一度試してみてください。
退去の損失は大きい!いち早く解決しよう!
不動産投資を安定して続けるためには、入居者に長く住んでもらえる物件でなければなりません。株式やFXなどとは異なり、不動産投資では経営者としての視点が必要となります。
最後は、賃貸物件で退去者が続いたときの経営判断についてポイントを紹介します。
退去にかかる損失は家賃の半年分以上
退去者が出たときに経営者としてすべきことは、退去による投資への影響を試算することです。
退去者が出た場合、まず発生するのがクリーニングなどの原状回復費です。さらに壁紙の交換などの修繕費や、入居者を募集するための広告費なども忘れてはなりません。こうした退去費用はおおむね30万円~60万円が相場だといわれています。
また、退去後の空室期間が仮に5ヶ月だった場合、家賃が8万円の物件であれば40万円の損失です。もちろん空室期間が長引けば、それだけ損失は膨らみます。
こうしたコストを考えれば、更新料ゼロや設備投資などを行ってでも退去を防いだほうが、結果的に損失を少なくできるかもしれません。
どうしても入居者の退去が減らない場合は専門家に頼る
オーナーとしてさまざまなアプローチを試みたものの、どうしても退去者が減らないというときには、専門家の知恵を借りるのがおすすめです。
投資用不動産による資産運用がうまくいかないときは、保有する物件の市場価格を把握してみましょう。投資用不動産に特化したサービスを提供する「イエリーチ」では、オーナー様が保有されている物件の査定依頼が可能です。 物件情報の一覧化に収支シミュレーションもできるので、収支状況の把握に役立ちます。アカウントの登録は無料で、保有物件の登録作業も不要です。
まとめ
入居者の退去理由はそれぞれ異なります。物件に対する不満や高い家賃設定などが原因であれば、オーナーは対策を講じる必要があるでしょう。
退去者が出たあとに空室が長く続けば、賃貸経営のリスクは高まります。日頃から周辺の家賃相場を把握する、設備の修繕を怠らないといった、退去防止につながる経営が大切です。
賃貸経営については、専門家の意見を参考にするのもおすすめです。