LED照明への取替工事は、原則修繕費に計上できます。しかし、工事の内容や金額を見て「本当に修繕費に計上して良いかわからない」とお悩みのオーナーの方もいるでしょう。
この記事では、修繕費と資本的支出の違いとLED取替工事が修繕費になることに関する国税庁の見解、資本的支出になるケースを紹介します。
最後まで読めば、LED取替工事が修繕費に該当するかを判断できます。
修繕費と資本的支出の違い
修繕費と資本的支出の違いを理解しましょう。
修繕費とは、定期的な修繕工事やマンションの維持管理における工事の費用のことです。
以下のような費用は、修繕費に該当します。
・該当工事や修理が20万円未満
・3年程度の周期でおこなわれる修繕工事
・支出金額が60万円未満または、支出金額が固定資産の前年取得価額の10%相当額以下
・災害による損害の修復
【参考】No.5402 修繕費とならないものの判定|国税庁
資本的支出は、マンションの資産価値を上げたり、耐用年数を延長する工事の場合に使用する勘定項目となります。
修繕費は損金として一括計上できますが、資本的支出は資産にみなされるため、減価償却して分割して費用計上しなければなりません。
以下のものは資本的支出に該当します。
1 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
2 用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
3 機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額
【引用】No.5402 修繕費とならないものの判定|国税庁
LEDランプの取替工事は修繕費に計上可能
一般的に20万円未満の費用であれば修繕費に計上して良いというルールがありますが、LED電球への交換費用は照明代が高いため、20万円で収まるケースは稀です。しかし、LEDランプの取替工事は修繕費に計上できます。
- 【国税庁の見解】ランプの交換は修繕費
- LED安定器の取り付けを伴う場合も修繕費との見解
国税庁はLEDランプの取替や安定器の取り付け工事について、明確な見解を示しています。
【国税庁の見解】ランプの交換は修繕費
蛍光灯をLEDランプへ変更した事例において、国税庁は以下の見解を示しています。
蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えることで、節電効果や使用可能期間などが向上している事実をもって、その有する固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増しているとして資本的支出に該当するのではないかとも考えられますが、蛍光灯(又は蛍光灯型LEDランプ)は、照明設備(建物附属設備)がその効用を発揮するための一つの部品であり、かつ、その部品の性能が高まったことをもって、建物附属設備として価値等が高まったとまではいえないと考えられますので、修繕費として処理することが相当です。
【引用】自社の事務室の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた場合の取替費用の取扱いについて|国税庁
上記の事例においては、蛍光灯100本をすべてLEDランプへ取り替えています。蛍光灯ランプの購入費用および取り付け工事を含め、工事費用は110万円でした。
100万円を超える支出であっても、照明機能が向上することで建物の価値が変わるわけではないという見解を持って、国税庁はLEDランプへの交換費用は修繕費で良いと回答しています。
LED安定器の取り付けを伴う場合も修繕費との見解
蛍光灯ランプをLEDランプへ交換する際に、安定器を取り付ける場合も、修繕費として計上できます。
税務研究会が刊行する「税務通信No.3137」においても、LED安定器の取替作業が資本的支出になるかどうかが取りまとめられていました。
蛍光灯をLEDランプへ交換する際の安定器は新しい設備の導入のため、一見資本的支出に見えます。しかし、安定器は照明を安定させるための部品と考えられるため、建物の価値が高まるとはみなされません。
【参考】照明器具のLEDへの取替費用は「安定器」の設置を伴っても基本的に修繕費|ZEIKEN Online News
そのためLED照明安定器の取り付け工事を伴ったとしても、LED取替工事は修繕費として損金計上できます。
LEDランプへの取替工事が資本的支出に該当する場合
LEDランプへの取替工事は、基本的に修繕費に計上できます。しかし、工事の目的によっては資本的支出に計上する可能性があるため注意しましょう。
具体的には、LEDランプの取替工事に伴い建物全体の配電工事が必要な場合です。建物全体の配電工事により、建物全体の機能が付加され、また耐久性能が向上します。
LEDランプの取替工事は、照明機能の向上のみを目的としているか、建物の価値自体が上がるかを慎重に判断しなければなりません。
LED照明への取替工事の勘定項目に迷った場合の対処法
LED照明への取替工事を、どの勘定項目に仕訳して良いか迷う場合もあるでしょう。
- 国税庁のフローチャートに照らし合わせる
- 税理士に相談
- 委託先の管理会社に相談
万が一勘定項目に迷った場合は、以上の3つの方法で正しい項目を選びましょう。
国税庁のフローチャートに照らし合わせる
LED照明への交換工事が修繕費かどうかわからない場合は、国税庁のフローチャートに照らし合わせてみましょう。
明らかに照明機能の改良であれば修繕費として問題ありませんが、判断に迷った場合は上記の図に従って判断します。
税理士に相談
LED照明の取替工事の仕訳がわからない場合は、税理士に相談してください。マンション経営は諸費用や必要書類が多く、確定申告の処理が非常に煩雑です。
初めての確定申告は特にミスが起きる可能性が高く、万が一ミスが起きると差し戻し、最悪の場合は脱税と見做されるケースもあります。
遅滞なく確定申告を済ませるためにも、税理士に依頼してLED照明の費用項目の判断を含めて、確定申告を依頼すると良いでしょう。
委託先の管理会社に相談
マンション管理を管理会社に委託している場合は、委託先の管理会社に相談しても良いでしょう。管理会社は税務アドバイスはできませんが、不動産関係に強い税理士を紹介してくれるケースがあります。
また、不動産経営ノウハウから修繕費か資本的支出になるかの判断について助言してくれるかもしれません。
まとめ
LEDランプへの取替工事は、原則修繕費として計上します。また、安定器の設置を伴う工事であっても、修繕費へ計上できると国税庁が見解を示しています。
しかし、LEDランプ交換工事が建物自体の耐久性や価値を高めるものである場合は、資本的支出になるケースもある点に注意してください。