中古物件の耐用年数とは?計算方法や売却時の影響について解説

中古物件の耐用年数とは?計算方法や売却時の影響について解説

中古物件の耐用年数について知りたい方、必見です。中古物件の耐用年数は物理的耐用年数、法定耐用年数、経済的耐用残存年数の3種類あります。また、不動産は事業用・非事業用で減価償却の計算方法や耐用年数が異なります。 併せて、耐用年数が経過したマンションを売却するときの注意点も解説しますので、ぜひ参考にしてください。


この記事は約7分で読み終わります。

物件の耐用年数は税額の計算や不動産の価値を評価する際に用いられ、不動産の種類によって計算方法が異なります。

本記事は下記のような方におすすめです。
  • 物件の耐用年数とはどのようなものか知りたい
  • 物件の耐用年数の計算方法が知りたい
  • すべての耐用年数を経過した物件の価値はどう評価されるのか知りたい

本記事では、中古物件の耐用年数の種類や、事業用不動産に関する知識を紹介し、これを踏まえ、耐用年数が経過したマンションの売却法と注意点を解説します。

この記事を読めば中古物件の耐用年数はどのようなときに必要になるのかや、耐用年数がマンション売却にどのような影響を与えるのかが理解できます。

中古物件の耐用年数は3種類ある

中古物件の耐用年数は3種類ある

中古物件の耐用年数について解説します。

・物理的耐用年数
・法定耐用年数
・経済的耐用残存年数

耐用年数の定義

耐用年数とは、建物や設備といった減価償却資産を利用できる年数のことです。

耐用年数は以下のような用途で使用されます。

・会計上の費用配分が必要なとき
・税額を計算するとき
・建物や設備の価値を評価するとき

耐用年数は使用用途によって定義も年数の長さも異なります。

物理的耐用年数

物理的耐用年数とは、年月を経て建物が徐々に劣化し使用に耐えられなくなるまでの年数のことをいいます。具体的には、建物の構造や建築の際に使われた資材、付属している設備などが壊れて使えなくなるまでの年数です。

一般的に、耐久性の高い良い材料を使えば、建物や設備の物理的耐用年数も長くなります。しかし良い材料は価格も高いため、建築にかかる費用も高くなる傾向にあります。

一定の物理的耐用年数が経過した建物や設備は取り換えや修繕が必要です。取り換えや修繕が簡単な箇所はその部分だけを処置すれば良いですが、建物の構造に関わる部分については大規模な修繕工事が必要となります。

物理的耐用年数は住人の使用状況や取り換え・修繕のしやすさ、周囲の環境の影響などによって大きく左右されます。

法定耐用年数

法定耐用年数は、税法上の資産価値をあらわす年数のことです。減価償却の計算で必要になる年数で、法定耐用年数をすべて経過するとその建物は税法上の資産価値を失います。

中古物件の法定耐用年数には主に以下の2種類があります。

  1. 法定耐用年数の全部を経過した物件の場合、その法定耐用年数の20%相当を年数とする
  2. 法定耐用年数の一部を経過した物件の場合、その法定耐用年数から経過した年数を差し引き、そこに経過年数の20%にあたる年数を加えた年数になる

上記の計算式は以下のとおりです。

  1. 法定耐用年数×20%=減価償却で使う法定耐用年数
  2. (法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)=減価償却で使う法定耐用年数

この計算式を「簡便法」といいます。

なお、計算結果が1年未満の端数がある場合は切り捨て、年数が2年未満の場合は2年にするとされています。

【参考】No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

経済的耐用残存年数

経済的残存耐用年数とは、建物や設備を購入してから市場での不動産的価値・経済的価値がなくなるまでの年数のことをいいます。

経済的耐用残存年数も物理的耐用年数と同様に、住人の使用状況や周囲の環境、日々のメンテナンス、子どもの人数やペットの有無などの影響を受けます。仮に同じメーカーの同じ工法で建てられた建物だとしても、経済的残存耐用年数はそれぞれで異なるケースが多いです。

事業用不動産の耐用年数について

事業用不動産の耐用年数について

事業用不動産の耐用年数について解説します。

  • 事業用不動産の耐用年数の概要と計算方法
  • 事業用不動産の法定耐用年数

事業用不動産の耐用年数の概要と計算方法

事業用不動産とは、自社の事業で利用するための建物や家賃を得る目的で他人に貸す建物などのことをいいます。

主な種類は以下のとおりです。

・事務所
・店舗
・倉庫
・賃貸アパート・賃貸マンション

事業用として利用するために取得した不動産の費用については、減価償却で耐用年数分を経費に計上できます。一方、もともと保有していた中古物件を新たに事業用として利用する場合は、事業用として利用し始めた時期以降の使用可能期間の見積もり年数を使います。

事業用として利用している不動産の使用可能期間の年数を見積もることが困難な場合については、先述の簡便法が使用可能です。ただし、中古の不動産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額が、その不動産の再取得価額の50%を超える場合は例外です。

【参考】No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

事業用不動産の法定耐用年数

事業用不動産の法定耐用年数は、建物の構造と用途によって国税庁が定めています。

事業用として利用される主なケースの法定耐用年数は以下のとおりです。

【事務所用】

・木造・合成樹脂造:24年
・木骨モルタル造:22年
・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造:50年

【店舗用】

・木造・合成樹脂造:22年
・木骨モルタル造:20年
・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造:39年

【工場用・倉庫用】

・木造・合成樹脂造:15年
・木骨モルタル造:14年
・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造:38年

【飲食店用】

・木造・合成樹脂造:20年
・木骨モルタル造:19年
・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造:延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超える建物は34年、そのほかは41年

【引用】令和3年分 確定申告書等作成コーナーよくある質問|国税庁

耐用年数が経過したマンションの売却法と注意点

耐用年数が経過したマンションの売却法と注意点

耐用年数が経過したマンションの売却法と注意点について解説します。

・耐用年数が経過したマンションの売却法
・耐用年数が経過したマンションを売却するときの注意点

耐用年数が経過したマンションの売却法

耐用年数が経過したマンションの売却方法は以下のとおりです。

・中古住宅として売却する(リフォームやリノベーション、外装塗装、修繕、点検などのメンテナンスをしっかりやっていれば築50年を超えていても売れる可能性は高くなる)
・中古住宅として買い取ってもらう(仲介ではなく買取業者に買い取ってもらう。一般的に仲介での売却とくらべて値段が3割ほど安くなってしまうことが多い)

買い取ってもらう場合は仲介とくらべて3割安くなってしまう可能性がありますが、その分、仲介手数料がかからない、契約不適合責任がないといったメリットもあります。

耐用年数が経過したマンションを売却するときの注意点

耐用年数が経過したマンションを売却するときの注意点は、譲渡所得税が高くなることです。これは、先述の譲渡所得を計算するときに必要な取得費が関係します。

取得費は住宅の購入代金から減価償却費を差し引いて計算しますが、減価償却費の額は耐用年数が経過すればするほど高くなります。

住宅購入代金から引くべき減価償却費が高くなると、経費としての取得費は低くなり、譲渡所得税で使う課税譲渡所得額がも増えるため注意が必要です。

これは取得費を一般的な経費と考えるとわかりやすいでしょう。売上から引ける経費が少なければ、それだけ利益に対してかかる税金は高くなります。

住宅は築年数が1年古くなるたびに課税対象となる売却益が大きくなるため、支払う税金も高くなってしまうことを覚えておいてください。

【参考】「減価償却費」の計算について

まとめ

物件の耐用年数には物理的耐用年数、法定耐用年数、経済的耐用残存年数の3種類があり、それぞれの用途に応じて利用されます。

また、不動産には事業用と非事業用の2種類があり、それぞれ減価償却の計算方法や法定耐用年数が異なります。

耐用年数を経過したマンションであってもしっかりメンテナンスを施していれば十分に売却できますが、築浅のマンションとくらべて譲渡所得税が高くなることに注意が必要です。