地震保険とは、地震による建物や家財の損壊に対して補償が受けられる保険制度であり、日本で不動産投資をする場合は加入しておくべき保険です。
本記事では、地震保険の概要や補償内容、加入するメリットをお伝えします。
また、地震保険に加入する際の注意点や売却時の解約についてもまとめました。
最後まで読めば、これから不動産投資を始める方、売却を検討している方それぞれ、適切に地震保険を契約・解約できます。
地震保険とは?
不動産投資の際に検討する事柄の1つである、地震保険の概要について解説します。
- 地震保険の概要
- 火災保険に加入していることが加入条件
不動産投資をこれから始める方は、地震保険の概要や加入条件を把握しておきましょう。
地震保険の概要
地震保険とは、万が一地震が発生した際に起こる被害を補償する保険です。
地震による建物の倒壊やひび割れ、破損だけでなく、地震が原因で発生した津波や火災、噴火の被害についても補償内容に含まれます。
火災保険は、どの損害保険会社に入るかによって料金が異なりますが、地震保険はどの保険会社で加入しても一律の料金です。
地震保険は、地震保険に関する法律に基づいて、政府と損害保険会社が共同運営している保険です。
目的は被災者の生活の安定と保護であり、国が保険料の一部を負担しています。
火災保険に加入していることが加入条件
地震保険は単体で加入できず、火災保険に加入していることが加入条件です。
火災保険に入っていない方は、地震保険に加入できない点に注意してください。
すでに火災保険に入っている場合は、契約の途中から地震保険に加入できます。
地震保険の補償内容
地震保険の補償内容を解説します。
- 居住建物・家財の補償
- 地震保険の制約
地震保険は居住建物と家財それぞれで契約が結ばれ、金額の制約もある点に注意しましょう。
居住建物・家財の補償
地震保険は建物、家財それぞれで契約を締結する必要があります。
地震による被害や、それに伴う津波や火災、噴火による被害もカバー可能です。
地震保険の制約
地震保険の注意点は、すべての損害がカバーされるわけではないという点です。
保険契約の金額は、火災保険の契約金額の30〜50%以内でなければならないという制約があります。
また、建物の保険金額は5,000万円以内、家財の保険金額は1,000万円以内しか補償されません。
万が一、上記を超える損害が出た場合でも保険でカバーできる金額は、上限までです。
保険料の支払額は、損害の程度によって4段階に分類されます。
損害の程度 | 基準 | 保険金額 |
一部損 | 主要構造部分の損害額が時価額3%以上20%未満の場合 家財の損害額が時価額の10%以上30%未満となった場合 | 保険金額の5% (時価額の5%が限度) |
小半損 | 主要構造部分の損害額が時価額20%以上40%未満の場合 家財の損害額が時価額の30%以上60%未満となった場合 | 保険金額の30% (時価額の30%が限度) |
大半損 | 主要構造部分の損害額が時価額40%以上50%未満の場合 家財の損害額が時価額の60%以上80%未満となった場合 | 保険金額の60% (時価額の60%が限度) |
全損 | 主要構造部の損害額が時価額の50%以上となった場合 損害額が家財全体の時価額の80%以上となった場合 | 保険金額の100% (時価額が限度) |
【参考】地震保険制度の概要 : 財務省(2023年12月18日時点)
地震保険でカバーできる損害には上限が決まっており、また損害についても明確な判断基準が定められている点に注意しましょう。
不動産売却時は地震保険を引き継げる?
すでに地震保険に加入している物件を売却する際は、保険も解約しなければなりません。
- 保険の引き継ぎは不可・名義変更時の解約が必要
- 解約時期に応じて払い戻しを受けられる
今後物件やマンションの売却を検討している方は、保険類の解約が必要な旨を覚えておきましょう。
保険の引き継ぎは不可・名義変更時の解約が必要
保険の契約者は承継できないため、売却前に解約しておきましょう。
保険は物件所有者が変わったからといって自動的に解約はされません。
解約しておかなければ、保険の支払いのみ売主が負担し続けるケースもあります。
物件の名義変更が終わった後に、忘れずに保険を解約してください。
保険会社によっては名義変更が可能なケースがありますが、手続き自体が煩雑なため、新規加入した方が効率的です。
払戻金を考えて早めに解約する所有者もいますが、リスクがあります。
万が一、解約後でまだ買い手が見つかっていない段階で地震が起きた際、損害は補償されません。
解約時期に応じて払い戻しを受けられる
地震保険を解約した場合、解約時期に応じて払い戻しを受けられます。
長期保険で契約しており、保険残存期間が1か月以上ある場合は、残りの期間分の保険料が返金されます。
地震保険は官民共同運営の保険のため、未過料率は一律ですが、保険開始日によって計算方法が異なるため、注意が必要です。
不動産投資に地震保険が必須な理由
地震保険に加入義務はありませんが、不動産投資をおこなう方は加入することをおすすめします。
- 日本における地震発生リスクの高さ
- 不動産投資に対しての公的補償がない
- 地震による金銭的被害を補填
- 速やかな修繕で空室リスクを軽減
- 経費計上できる
売却前に解約するなら、そもそも加入したくないと考える方もいるでしょう。
しかし、売却を検討しているからこそ地震保険は必須です。
なぜ不動産投資に地震保険が必須か、その理由を解説します。
日本における地震発生リスクの高さ
日本は地震大国と呼ばれ、毎日どこかで地震が起きている状態です。
特に近年は南海トラフ地震、首都直下地震リスクも懸念されています。
投資目的で物件を購入しても、物件が地震で損壊しては、売却できません。
倒壊や損壊がひどい場合は、居住自体が難しくなり家賃収入も得られないでしょう。
修繕してから売却することとなりますが、ローンの支払い残高と合わせて莫大な修復費用を支払うこととなり、所有者に重い負担が発生します。
地震が多い日本だからこそ、地震発生リスクに備えて投資物件の地震保険に加入しておくべきです。
不動産投資に対しての公的補償がない
地震で建物が損壊した際の補償制度として「被災者生活再建支援制度」がありますが、不動産投資用の物件は補償対象に該当しません。
地震や台風などの自然災害で、住居・家財に著しい被害を受けた世帯に対しての支援制度です。
日常生活用品の購入、被災住宅の解体や撤去、再建費用、借入金の利息や賃貸物件を借りる費用として最高で300万円(合計)受け取れます。
【参考】被災者生活再建支援法 : 防災情報のページ – 内閣府(2023年12月18日時点)
上記支援制度が適用される対象は、あくまで自らが居住していた物件のみです。
そのため、万が一地震が起きて建物が倒壊しても投資用物件は補償を受けられません。
公的補償を受けられない以上は、所有者自身が地震保険に加入しておく必要があります。
地震による金銭的被害を補填
地震保険に加入することで、地震による金銭的被害を軽減できます。
万が一建物が損壊して再建する場合は、数千万円以上の費用が必要です。
一度購入した物件は、例え倒壊してもローン支払いが免除されるわけではありません。ローンの支払いを続けながら、修復費用を支払うにはかなりの資金が必要です。
地震保険に加入しておけば、損害の程度に応じて建物に5,000万円、家財で1,000万円までを上限として補償されます。
損害が全額補償されるわけではない点に注意しましょう。
所有者自身の負担を減らすためにも、地震保険に加入しておくべきです。
速やかな修繕で空室リスクを軽減
地震発生後に建物の修繕に遅れが出ると、退室リスクが上がります。
修繕のされない物件には、入居者も住み続けたくないと考えるためです。
地震保険に加入しておけば、保険である程度の費用をカバーできるため、修繕にもすぐに取り組めます。
投資物件で得られる収益確保のためにも、地震保険に加入しておきましょう。
経費計上できる
地震保険の料金は経費計上可能です。
不動産投資を維持するために必要な保険料であるため、火災保険同様経費にできます。
地震保険は一括で契約分を支払い、確定申告の際は対応期間分のみを経費として計上する仕組みです。
初年度の支払額は多くなりますが、最長5年間にわたって経費として計上でき、書面上の利益を抑えられます。
売却時に解約払戻金を受け取れる
不動産を売却した場合は、保険を解約しなければなりません。
途中解約した場合は、解約期間に応じて払い戻しを受けられます。
地震保険は加入時に一括で保険料を支払うため、保険会社が未過料率を計算し、残存期間分が返金されます。
万が一不動産を売却することになっても、払い戻しがあるため安心して加入できる点はメリットです。
地震保険に加入する際の注意点
不動産投資を検討している方は、地震保険に加入すべきとお伝えしました。
しかし、地震保険でもカバーしきれない部分やそもそもの保険料の高さなどのデメリットがあります。
- 構造・地域によって保険料が高額
- 損害額を全額補償してもらえるわけではない
- 売却時期・解約時期によっては払い戻しがない
地震保険に加入する際の注意点を3つ解説します。
不動産投資用のマンションをこれから購入し、地震保険に加入する方は、デメリットやリスクについても把握しておきましょう。
構造・地域によって保険料が高額
地震保険の金額は、損害保険会社によって変動しません。
しかし、建物の構造や地域によって保険料率が変わります。
地震の発生リスクが高い地域や、免震構造でない建物は当然保険料が高額です。
都道府県 | イ構造 | ロ構造 |
北海道・青森・岩手・秋田 山形・栃木・群馬・新潟 富山・石川・福井・長野 岐阜・滋賀・京都・兵庫 奈良・鳥取・島根・岡山 広島・山口・福岡・佐賀 長崎・熊本・大分・鹿児島 | 7,300円 | 11,200円 |
宮城・福島・山梨・愛知 三重・大阪・和歌山・香川 愛媛・宮崎・沖縄 | 11,600円 | 19,500円 |
茨城・徳島・高知 | 23,000円 | 41,100円 |
埼玉 | 26,500円 | 41,100円 |
千葉・東京・神奈川・静岡 | 27,500円 | 41,100円 |
【参考】地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約)(2023年12月18日時点)
イ構造とは、耐火建築物・準耐火建築物、または省令準耐火建築物です。主に鉄骨・コンクリート造の建物を意味します。
ロ構造は、主に木造の建物を意味しますが、木造であっても建築基準法における耐火建築物・準耐火建築物・省令耐火建築物の基準を満たす場合は、イ構造に分類されます。
表を参考にすると、地震リスクが高いと言われている関東地方や静岡は、保険料が格段に高くなっていることがわかるでしょう。
地震保険料金は決して安くはないため、不動産投資を始める方にとって経済的な負担となります。
損害額を全額補償してもらえるわけではない
地震保険に加入しているからといって、損害をすべて補償してもらえるわけではありません。保険金額ごとに制限があり、建物の損害補償上限は5,000万円、家財は1,000万円と定められています。
損害の規模によっては保険でカバーしきれない場合もある点に注意しましょう。
売却時期・解約時期によっては払い戻しがない
地震保険は解約時に払い戻しを受けられますが、解約時期によっては払い戻しが受けられないケースがあります。
残存期間が1か月を切っている場合は、払い戻しが受けられません。
2023年6月30日が契約終了日だとすると、2023年5月25日に解約すれば払い戻しがあります。しかし、6月1日に解約届を出した場合はすでに残存期間が1か月を切っているため、払い戻しは受けられないでしょう。
物件を売却する際は、地震保険や火災保険の契約満了期間を確認した上で、計画的に売却を進める必要があります。
まとめ
不動産投資をおこなうにあたって、地震保険は加入しておくべき保険です。火災保険の付帯保険として加入できるため、すでに火災保険に入っていても、途中で契約できます。
地震保険があれば、万が一地震が起きた際の損害額をカバーできます。保険料が地域によって変わる点や、補償額に上限が設けられてはいますが、一切補償がない状態よりは安心感があるでしょう。
地震保険は売却時に解約が必要な点にも注意してください。
払い戻しを受けるには、残存期間が最低でも1か月以上残っている必要があるため、物件売却時期にも気をつけましょう。