ドア交換費用は修繕費に計上できる場合と、資本的支出として減価償却するパターンがあります。売却前にドア交換を検討しているオーナーの方は、費用の区別がつかず困っているかもしれません。
この記事では、ドア交換費用の修繕費と減価償却(資本的支出)の節税効果、修繕費に該当するドア交換の内容、区分の方法を解説します。
最後まで読めば、ドア交換費用が修繕費か資本的支出か判断できるでしょう。
修繕費と減価償却(資本的支出)はどちらが得か
修繕費と減価償却(資本的支出)は帳簿上どのような違いがあるかを解説します。
- 修繕費は単年の所得を抑える効果
- 減価償却は複数年にわたる節税効果
マンションを経営している方にとって、節税は重要な問題です。修繕費と資本的支出の違いを知り、正しく節税しましょう。
修繕費は単年の所得を抑える効果
修繕費とは経年劣化や故障によって、損害を受けた機器設備を回復させるための費用です。
貸付けや事業の用に供している建物、建物附属設備、機械装置、車両運搬具、器具備品などの資産の修繕費で、通常の維持管理や修理のために支出されるものは必要経費となります。
【引用】No.1379 修繕費とならないものの判定|国税庁
たとえば、台風などで所有マンション設備の一部が壊れた際の修理費用は、修繕費に計上できます。
修繕費は費用として計上するため、工事がおこなわれた年に一括計上できます。100万円工事費用がかかり、修繕費として認められた場合は、その年の所得から経費として100万円差し引けるということです。
修繕費は単年の所得を抑え、翌年の税金を安くする効果があります。
減価償却(資本的支出)は複数年に渡る節税効果
一方減価償却(資本的支出)は、交換にかかった費用を固定資産の取得と考えて、耐用年数に応じて分割して計上する必要があります。
(1) 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
(2) 用途変更のための模様替えなど、改造または改装に直接要した金額
(3) 機械の部分品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額
たとえば、所有マンションが今まで手動のドアだったとしましょう。マンションの機能や性能を向上させる目的で、新しく自動ドアを取得して取り替えたとします。
この場合は、建物に新しい価値を加える目的での交換のため、固定資産を得たと考えます。
自動ドアの法定耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令 | e-Gov法令検索 別表によると12年間(2023年4月26日現在)です。
つまりマンションの自動ドア取得に120万円かかった場合は、12年間に分けて一部ずつ減価償却していきます。
一括での費用計上はできませんが、複数年にわたり節税効果を得られます。
ドア交換は修繕費か資本的支出か
所有マンションのドア交換が修繕費と資本的支出のどちらにあたるかは、工事の目的や内容によって判断します。
修繕費と資本的支出の判断は非常に難しく、一概に金額や工事名目だけで判断できないためです。
- ドアの劣化・修理のための交換は修繕費
- 上等なドアへの交換の場合は資本的支出
- 自動ドアの開閉装置の交換は目的で判断
ドア交換の目的や内容により費用に計上できるかが変わるため、判断を誤らないようにしましょう。具体的に、どのようなドア交換工事が修繕費または資本的支出に該当するか解説します。
ドアの劣化・修理のための交換は修繕費
所有マンションのドアが劣化した、または故障してしまった場合の交換については修繕費です。
ドアは建物を構成する建物附属品の1つで、劣化や故障して機能を果たさない場合の交換は原状回復と認められます。
ただしこれは、あくまでも同等レベルのドアへの交換です。交換時に手動ドアから自動ドアへ変更した場合は、資本的支出にあたる場合もあります。
上等なドアへの交換の場合は資本的支出
現時点で使用しているドアよりも、より上等なドアへ交換した場合は資本的支出に計上しましょう。資本的支出と修繕費の区分は、建物の耐久性や資産価値を引き上げたかどうかです。
既存のドアよりも質の高いドアへ交換した場合は、改良のための工事と判断されるため資本的支出として減価償却しなければなりません。
たとえばマンション売却前に、資産価値を上げるためにドア交換をした場合は、当然資産価値引き上げが目的であるため、資本的支出です。
自動ドアの開閉装置の交換は目的で判断
所有マンションの自動ドア設備の勘定項目は、建物附属設備です。第2節 建物附属設備|国税庁においても、自動ドアの開閉装置は、建物附属設備にあたる旨が記載されています。
開閉装置の交換工事は、工事の目的によって修繕費か資本的支出か判断しましょう。故障により交換が必要であれば、当然修繕費です。しかし、工事の目的がよりグレードアップした機械への改良であれば資本的支出となります。
また、修繕費か資本的支出でないか明らかでない場合は、工事費用が60万円未満かどうか、また前年度建物取得価額の10%相当額以下かどうかでも判断可能です。
ドア交換が修繕費か資本的支出か迷ったときの判断方法
所有マンションのドア交換を、修繕費と資本的支出のどちらとして考えれば良いか迷う場合は、以下の5点を参考にしましょう。
- ドア交換の目的
- ドア交換費用が20万円未満
- ドア交換によって建物価値に変動があるか
- ドア交換費用が60万円未満または前年度取得価額の10%相当額以下か
- 災害によるドア交換か
修繕費と資本的支出の見分けは難しく、税理士の間でも見解が分かれることもあります。国税庁のガイドラインを参考にして、確定申告後に調査などが入らないように申告しましょう。
ドア交換の目的
ドア交換を何のためにするかを考えましょう。修理のための交換であれば修繕費ですが、資産価値が向上する工事や改良目的であれば、ドア交換費用は修繕費ではなく資本的支出です。
また劣化により性能の良いドアへ交換する場合は、既存設備の撤去工事については修繕費、性能の良いドアの取得費については固定資産に計上するなど分けて計上することもあります。
ドア交換費用が20万円未満
ドア交換費用が20万円未満であれば、修繕費に計上できます。一般的なドアは20万円程度から購入できるため、自動ドアでない限りは20万円未満で交換できるでしょう。
ドア交換によって建物価値に変動があるか
ドア交換によって建物の資産価値に変動があるかどうかも重要なポイントです。たとえばオートロック設備がなかったマンションに、オートロック付きの自動ドアを導入したとします。
その場合は、防犯性が向上することとなるため、資本的支出になるでしょう。
ドア交換費用が60万円未満または前年度取得価額の10%相当額以下か
ドア交換費用が60万円未満、または前年度取得価額の10%相当額以下かどうかで、修繕費か判断できます。
一つの修理、改良などの金額のうちに資本的支出か修繕費か明らかでない金額がある場合で、その金額が60万円未満のときまたはその資産の前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるとき。【引用】No.1379 修繕費とならないものの判定|国税庁
国税庁も上記の見解を示しており、金額のうち資本的支出か修繕費か判断がつかない部分については、上記の基準区分できるとしています。
災害によるドア交換か
台風や地震によってドアが破損した場合は、修繕費に計上できます。自然災害によってドアの機能を果たせなくなっているため、修理は原状回復のための工事と認められるためです。
このように、ドア交換費用の区分についてはさまざまな角度から総合的に判断する必要があります。100万円以下はすべて修繕費など、大雑把な区分をしていると税務署から費用として認められないリスクがあるため、注意しましょう。
費用の区分に迷ったら、No.1379 修繕費とならないものの判定|国税庁にて公開されている、フローチャートを参考にしてください。
まとめ
ドア交換費用は目的により、修繕費か資本的支出かが変わります。故障による交換であれば当然原状回復のためであり、修繕費と認められますが、価値向上のための交換は減価償却の対象です。
所有者がすべての判断を自分でおこなうことは困難であるため、税理士など専門家の助けを借りて費用の区分を考えることをおすすめします。
マンション売却前にドア交換を検討している方は、翌年度の税金について考えながら、必要な修繕なのかどうかを判断しましょう。