経年劣化による修理はすべて修繕費?耐用年数や減価償却すべき事例

経年劣化による修理はすべて修繕費?耐用年数や減価償却すべき事例

目次1 経年劣化と損耗の違い2 マンション経営で覚えておくべき耐用年数一覧3 経年劣化による破損は修繕費に計上可能4 経 … 続きを読む 経年劣化による修理はすべて修繕費?耐用年数や減価償却すべき事例


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経年劣化による修理は、修繕費に計上できます。しかし、マンション売却前に売却価格を上げるための交換工事などをどう計上して良いか迷う方もいるでしょう。

本記事は下記のような方におすすめです
  • 経年劣化による修理は全て修繕費にして良いか迷っている
  • 賃貸物件の設備の耐用年数を知っておきたい

この記事では、経年劣化と損耗の違いやマンション経営において覚えておくべき耐用年数一覧、修繕と認められる経年劣化の修理と認められない工事の具体例を紹介します。

最後まで読めば、経年劣化による修理を正しく修繕費か資本的支出か区別できるでしょう。

経年劣化と損耗の違い

マンションを賃貸に出していると、入居者の退去時に原状回復費用が発生する場合があります。原状回復とは経年劣化以外で、賃借人の責任で発生した損耗を回復する費用です。

  1. 経年劣化
  2. 通常損耗
  3. 特別損耗

賃貸マンションの経営において、原状回復費用を巡るトラブルは多く発生します。一般的な劣化は修繕費に該当しますが、責任が及ばない部分まで所有者が支払う必要はありません。
経年劣化と損耗の違いの概要を解説します。

経年劣化

経年劣化とは、時間の経過によって通常の使用の範囲において自然と建物の内装や設備が劣化することです。
建物は完成と同時に劣化が始まり、徐々に設備は古くなっていきます。

たとえば、壁紙が徐々に変色していったり、風呂場のゴムが摩耗していくような事象のことです。

住宅:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について – 国土交通省によると、経年劣化や通常の使用によって発生する設備などの修繕費用は、賃料ですでに徴収していると考えます。

そのため賃貸人は、経年劣化した設備などを修理・交換する際は、今まで入居者から受け取った賃料の中から支払いをし、その費用を修繕費に計上できます。

通常損耗

経年劣化とは別に、通常損耗という考え方があります。通常損耗とは、入居者が暮らしていく中で生じる傷・汚れです。

わざと傷をつけるつもりがなくても、カーペットなどを長年使っていると、毛足がすり減るケースが通常損耗に該当します。

たとえば、冷蔵庫などの家具家電を設置した床の凹みなどは、通常損耗です。

通常損耗は原状回復義務の対象から除外されるため、経年劣化と同じく修繕費用は賃料に含まれているという解釈です。つまり、入居者が退去したあとに所有者が自ら修理します。

その際の修理費用は、所有マンションの価値を回復させるためのものと認められるため、修繕費として計上可能です。

特別損耗

特別損耗とは、入居者の過失で室内設備に損耗が起きることです。一般的な使用の範囲を超えて、完全に入居者のミスなどで傷がついた際に発生します。

たとえば、室内で喫煙して室内にニオイがつき、特殊清掃が発生した場合は賃借人が原状回復費用を支払わなければなりません。また水回りに水垢が著しく付着したケースも、日頃の掃除を怠ったとして入居者の責任となります。

敷金から原状回復費用を差し引いて返金するか、不足した場合は追加請求が必要です。

マンション経営で覚えておくべき耐用年数一覧

マンション経営で覚えておくべき耐用年数一覧

マンション経営において、頭に入れておくべき設備の耐用年数一覧を紹介します。

設備耐用年数
壁紙・クッションフロア・カーペット6年間
室内ドア・玄関ドアなど建物本体の年数と同様
カーテンなどの繊維製品3年間
流し台5年
ユニットバス建物本体の年数と同様
エアコン・ストーブ・インターホン6年間
金属製の器具や部品15年間
その他8年間

【参考】減価償却資産の耐用年数等に関する省令 | e-Gov法令検索

入居者が耐用年数以上入居してから退去した場合は、原状回復費用としての請求はできません。

たとえば入居者が6年居住したあとに、壁紙の張り替え工事をおこなうとします。その場合の費用は所有者負担となりますが、この費用は修繕費に計上可能です。(【参考】アパートの壁紙の張替費用|国税庁

経年劣化による交換や修理費用は、修繕費に計上できます。しかし、耐用年数の範囲や損耗の内容によっては原状回復費用として賃借人に請求できる点を覚えておきましょう。

経年劣化による破損は修繕費に計上可能

経年劣化による破損は修繕費に計上可能

経年劣化による破損などを修理した費用は、修繕費に計上できます。

  1. 同レベルの壁紙や畳への張り替え
  2. 劣化した給湯器の交換
  3. 経年劣化した外壁の塗り替え
  4. 雨漏りする屋根の補修

具体的な経年劣化の事例と、修繕費に該当する修理の内容を解説します。

同レベルの壁紙や畳への張り替え

壁紙が経年劣化した際に、同等の壁紙へ張り替える際は、修繕費に計上できます。畳なども同様です。

壁紙は部屋の内装の一部であり、壁紙を貼り替えたことを理由に、建物の耐久性が増すとは考えません。

劣化した給湯器の交換

経年劣化により給湯器を交換する場合も、修繕費として計上できます。同等レベルの給湯器への交換費用であれば、損金計上可能です。

経年劣化した外壁の塗り替え

経年劣化により外壁塗装が剥がれたり、耐汚性能が落ちてしまった場合の塗り替えも、修繕費として計上できます。

同等レベルの塗料を使用すれば、建物の耐久性を延長させるための工事ではありません。

雨漏りする屋根の補修

経年劣化によりマンション屋根の防水性能が落ち、雨漏りが発生するケースがあります。その場合に、マンション屋上の修理や補修をおこなう場合も、修繕費です。

明らかな劣化で屋根から雨漏りする場合の補修は、機能の回復目的と判断できます。

経年劣化による修繕と認められない場合

経年劣化による修繕と認められない場合

次に、経年劣化による修繕と認められないパターンを解説します。

  1. 耐久性が現状より向上する場合
  2. 資産価値を向上させる交換工事
  3. 現状の設備より高レベルな機器への交換

原則として、同じレベルの製品への取り替えは修繕費、グレードアップする場合は資本的支出になるケースが多いです。

耐久性が現状より向上する場合

経年劣化による外壁塗装する場合、塗料が同等の場合は修繕費ですが、より耐久性の高い塗料を使用した場合は資本的支出となります。

塗料のレベルを上げたことで建物の耐久性が増す可能性があるためです。

資産価値を向上させる交換工事

経年劣化があったとしても、資産価値を向上させるために機器や設備を交換した場合は、資本的支出に計上しなければなりません。

たとえば経年劣化が認められる物件の売却前に、機器等を最新のものへ換えたり、システムキッチンにリフォームしたりした場合は当然資産価値が上がるため、修繕費に計上できません。

現状の設備より高レベルな機器への交換

経年劣化した設備を、よりグレードの高い機器へ交換する場合も、資本的支出に該当します。たとえば給湯器を交換する際に、同等レベルのものへの交換は修繕です。
しかし、より高等な給湯器へ交換した場合は資本的支出となります。

まとめ

経年劣化は自然発生的に起きる消耗です。賃貸マンション経営における経年劣化は、賃料で入居者から回収した費用から、所有者が負担します。

資産価値を向上させたり耐久性を増す以外の場合は、修繕費として費用で計上可能です。ただし、工事の内容によっては資本的支出となる可能性がある点に注意しましょう。