空室があっても不動産所得の経費として計上はできる?
税務会計上、費用は成果(収益)に対する努力と考えます。そのため、成果が出ていないものに、努力である費用を計上するとおかしなことになるといえるでしょう。
空室に置き換えると、空室を改善するために宣伝を行って成果につながった、あるいは成果につながる可能性があるなら経費として考えることができます。そのため、何も対策をしなければ、空室が続いたことによる損失は経費として上げることはできません。
それでは、空室が発生している場合の減価償却費はどうなるのでしょうか。
「減価償却費」として計上できる
減価償却費とは、取得した資産を耐用期間にわたって償却するための費用項目です。建物や備品など財産的価値のあるものは、長期にわたって収益に貢献すると考えられるため、それぞれの耐用期間に応じて、少しずつ費用に計上していきます。
減価償却費は、耐用期間に準じて償却が決まっているので、実際の支出(現金による支出)がない、つまり空室であっても計上可能な項目です。
減価償却費の例
20XX年4月1日 2,000万円の中古の建物、残存価格10%、定額法(耐用期間20年)の場合
2,000万円×(2,000×10%)÷20年 = 90万円(1年あたりの減価償却費)
減価償却費として計上されるための条件
空室であっても、減価償却費含む運用に要した費用の計上は可能です。ただし、空室の場合は条件があります。事業投資用として適切にメンテナンスを行なっており、いつでも稼働できる状態であったことなどを証明できなくてはなりません。
条件① 空室が一時的であること
空室が長期化すると、努力の結果である成果が測れなくなります。空室が一時的、長くても空室の状態が1年未満であることが条件です。
条件② 入居者募集を継続して行っていること
入居者の募集なしに空室になっている部屋は、いつでも稼働できる状態とはいえません。不動産会社などに掲載してもらう、看板を置くなど、何らかの募集行為がみられる場合に、空室の経費計上は可能です。
条件③ 空室時も維持管理を行っていること
いつでも入居できる状態であることは、原状回復や修復、清掃が適切に行われている状態です。経費に計上するには、空室時も引き続き物件の維持管理を行っていかなければなりません。
空室期間が長くなってしまうと、かえってデメリットに
投資用のマンションに空室があっても条件を満たせば経費計上はできます。しかし、経費計上ができるからといって、不動産投資に有利に働くわけではありません。空室期間が長期化することで、かえって問題が起こることもあります。
収入が減少する
空室による大きな問題が、収入の減少です。空室が続くと、空室分の収入がまるまる入ってこなくなります。
しかし、空室によって収入が途絶えてしまっても、必要な経費の支払い、たとえばローンの返済、管理費や修繕積立金の支出、固定資産税の支払いなどは行わなければなりません。
空室分の収入が入ってこない以上は、不足分を自己資金で補わなくてはならないため、大きな出費になる可能性があります。
空室が長期化すると、自己資金による費用の負担も難しくなる可能性があり、不動産投資自体の運用リスクも高まるため注意が必要です。
建物の劣化が早くなる
建物や設備は使用していない期間が長くなるほど、劣化が進みます。見た目にはあまり傷んでいないように見えても、実際に使用を再開するとトラブルが発生したというケースも多々ありますので、使用再開後の状態にも注意をする必要があるでしょう。
空室によるトラブルで多いのが、水回りのトラブルです。長期間使用されなかったために配管内が干上がって下水のいやなにおいが上ってきたり、配管自体が劣化して水漏れしたりすることもあります。
また、劣化によって建物自体の価値が下がってしまうのもデメリットです。建物の価値が下がると賃料を下げなければ入居希望者がなかなか現れない問題も起こりますし、内見の希望があっても劣化の度合いによっては入居にまで至らないこともあります。
劣化すればするだけ空室の期間が長くなる可能性もあるので、早い段階で改善するための取り組みが必要でしょう。
所有している不動産に空室ができないようにするには?
空室の長期化は、収入や建物の劣化の面でデメリットがあることを説明しました。そもそも、コンスタントに収入を上げられないと、不動産投資を選択する意味がなくなってしまいます。空室が発生しないように運用するには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
ターゲットにしている入居者のニーズを掴む
投資用不動産が増えた今、新築を売りにしたり、家賃を見直したりするだけで、空室対策を行うことは難しくなってきました。同じような物件があふれる中で、賃料や築年数によるアプローチでは十分に魅力が伝わらないためです。
そこで、ターゲット層を定めて、魅力的なマンションに整備する不動産オーナーが増えてきました。たとえば、学生用にする、ペットと同居できるようにする、高齢者向けにするといったアプローチです。
しかし、ターゲットを絞っただけでは十分とはいえません。ターゲット層がどのような物件を求めているか理解し、ニーズに合った設備の導入やリフォームを検討する必要があるでしょう。
ターゲットが多いエリアで、かつ需要に沿った不動産運営に切り替えることによって、空室リスクは抑制できます。
不動産の仲介会社に物件をアピールしておく
空室の改善には、不動産の仲介会社の営業努力も関係してきます。信頼できる仲介会社に営業を依頼することはもちろんのこと、少しでもアピールしてもらえるように担当者と良好な関係を築いておくことが大切です。
また、仲介会社にすべて丸投げするのではなく、オーナー自身が仲介会社に積極的に営業してもらえるように行動する必要もあるでしょう。たとえば、物件の特徴や魅力をオーナー自身が仲介会社の担当者に伝えることです。
オーナーから寄せられた情報で営業に使える材料があれば、アピールポイントとして入居希望者に紹介してもらえる期待が高まります。
また、内見者を増やして入居につながるようにするためにも、写真などの情報も適宜見直すことが大切です。情報が古ければ差し替えるようにお願いする、あるいは材料になるような写真を提供するなどの工夫も必要でしょう。
専門機関に相談する
ここまで、不動産投資で空室を抑えるための方法について紹介しましたが、いずれも実行すれば空室改善につながるとは限りません。物件によって状況は異なるので、それに応じた改善方法の実行が一番の近道となるでしょう。
しかし、オーナー自身でリサーチして最適な改善策を見つけていくのは難しい部分もあります。マンションの空室対策を効果的に行いたいなら、専門家に相談することも検討するのが良いでしょう。
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まとめ
不動産所得の計算において、空室があっても条件を満たせば、空室分の経費を計上することができます。しかし、そもそも空室が頻繁にあることの方が不動産の運用上、大問題です。経費計上の前に、空室の改善を図ることが大切です。