マンションが地震の被害に遭えば、修繕費はオーナーが負担しなければなりません。
この記事では、「なぜオーナーが負担するのか」「主な地震対策」などを詳しく解説します。
マンションが地震被害に遭ったら修繕費は誰が支払う?
マンションが地震の被害に遭った際の修繕費は、基本的にオーナーが負担しなければなりません。負担する理由や入居者の不備による修繕について解説します。
基本的に修繕費はオーナーが支払う
修繕費は基本的にオーナーが支払わなければなりません。これは民法で定められています。
【民法第606条】
1.賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2.賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。【引用】民法 e-GOV 法令検索
地震による損害は入居者の責任に問われないため、オーナーが負担します。
入居者の不備により家具やガラス窓が全壊した場合はオーナー負担にならない場合もある
民法第606条により、入居者が家具や家電を固定していなかったことで、壁やガラスが破損するなど部屋に損害が発生した場合は、オーナー負担とはなりません。これは、2020年4月の民法改正による影響です。
マンションが地震被害に遭ったら保険は使える?
マンションが地震被害に遭った際の保険について解説します。
万が一に備えて保険について不安な方は確認しておきましょう。
地震保険に加入していれば保険金が貰える
地震保険に加入している場合、地震被害が発生すると保険料を受け取れます。
地震保険とは火災保険に付帯する方式での契約となり、同時に加入する必要があります。
まだ加入していない場合は、途中からでも追加で契約できます。
ただし、地震保険には以下のデメリットがあります。
・貰える保険金額は、火災保険の30~50%
・保険金の限度額は、建物で5,000万円、家財で1,000万円
地震保険の保険金額は上限があり、火災保険額に左右されます。
例えば、1億円で火災保険に加入していれば、火災で損害が発生した場合上限1億円の保険金が貰えます。地震保険の場合、損害が全損と判断された場合に、火災保険の保険料の30〜50%である金額を上限として受け取れる可能性があります。
【引用】財務省 地震保険制度の概要
この点を理解したうえで地震保険に加入しましょう。
マンションにおける地震対策は?
地震対策には以下の方法があります。
・地震保険の加入
・マンションの耐震補強
・家具や家電を固定する
・ハザードマップを確認しておく
地震保険の加入
まずは、地震対策として地震保険に加入しましょう。万が一、地震の被害に遭っても保険金が貰えるため、加入しておくと安心です。加入したい場合は、火災保険を契約している保険会社に相談しましょう。
ただし、すべての保険会社で扱っているわけではないため、注意が必要です。
マンションの耐震補強
マンションの耐震補強を行いましょう。築年数の古いマンションだと「旧耐震基準」で建てられた可能性が高く、その場合耐震強度が弱いです。しかし、「新耐震基準」の構造であれば、震度6〜7程度でも崩壊しない構造のため、地震による被害を最小限に抑えられます。
家具や家電を固定する
地震の揺れにより、家具や家電が倒れて入居者が怪我をしたり、部屋を損傷させたりする場合があります。また、家具や家電が倒れることにより部屋の出入口を塞いでしまい、入居者が避難できない状況にもなりかねません。これらを未然に防ぐためにも、家具や家電を固定しておきましょう。耐震マットや家具転倒防止突っ張り棒、粘着シートなどで固定すれば、地震による被害を最小限に抑えられます。
ハザードマップを確認しておく
ハザードマップとは、自然災害による被害を予測して被害範囲を地図化したものです。
マンションが建っている地域における、地震による洪水や浸水リスクなどを予測できます。国土交通省により公開されているため、確認しておきましょう。(ハザードマップポータルサイト)
保険金を受け取る流れ
保険金を受け取る流れを確認しましょう。
- 保険会社に連絡
- 保険金請求書類を受け取る
- 保険会社による鑑定人の調査
- 調査結果の連絡
- 保険金受け取り
1.保険会社に連絡
地震による被害が発生したら、速やかに保険会社へ連絡しましょう。規模の大きい地震であれば、ほかの保険加入者からの連絡が集中している場合があり、つながらない可能性もあります。どうしても連絡がつかない場合は、webからでも申請できる場合が多いため、確認しておきましょう。
2.保険金請求書類を受け取る
保険会社に連絡すると、保険金請求書類が送られてきます。内容を確認して、不明点があれば保険会社へ聞いてみましょう。
3.保険会社による鑑定人の調査
保険金を算出するために、保険会社の鑑定人が訪問して調査を行います。
この際に、地震によって被害に遭った箇所や損傷具合を説明できるようにしておくと良いです。説明できないと、損傷箇所が経年劣化など地震以外の原因によるものと判断されてしまう可能性があります。
4.調査結果の連絡
調査が終わると、後日、保険会社から調査結果の連絡が来ます。地震保険は損害状況に応じて、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」に分類されます。
全損 | 地震保険の保険金額の100%(時価額が限度) |
大半損 | 地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度) |
小半損 | 地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度) |
一部損 | 地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度) |
【引用】財務省 地震保険制度の概要(2023/6/17)
損害分類によって貰える保険金が異なるため、理解しておきましょう。もし、保険金額に納得がいかなければ保険会社へ相談もできます。その際は、損害箇所を具体的に証明する必要があり、場合によっては再調査してもらえることもあります。金額に納得できれば承諾しましょう。
5.保険金受け取り
保険金額に納得したら、保険会社に保険金請求書類を送りましょう。基本的に2週間ほどで保険金が支払われますが、大規模な地震であれば支払いが遅れる場合もあるため、注意しましょう。保険金が支払われたら金額に間違いがないかを確認して受け取り完了です。
まとめ
地震によってマンションが被害に遭ったり、入居者の部屋に損害が発生したりした場合は、オーナーが修繕費を負担しなければなりません。
主な地震対策としては、「地震保険の加入」「マンションの耐震補強」「家具や家電の固定」「ハザードマップの確認」などがあります。地震保険は、火災保険とセットで加入する必要があり、地震保険のみに加入することはできません。これから地震保険に加入したい方は、火災保険を契約している保険会社へ連絡しましょう。なお、地震の保険金額については、火災保険の30〜50%程度ということを理解しておく必要があります。
地震はいつ発生するか分かりません。大規模な地震であれば、多額の損害が発生することも考えられます。万が一に備えて、地震対策をしておきましょう。