アパート経営を引き継ぐ場合、メリットとデメリットを確認し、売却も視野に入れて検討することも重要です。
本記事では、アパート経営を引き継ぐ際の確認ポイントや注意点、引き継ぎよりも売却を選択すべきポイントなど解説します。
アパート経営引き継ぎの際の確認ポイント
アパート経営を引き継ぐ場合、事前に確認すべきポイントを3つ紹介します。
・ローン残債を確認する
・空室率や入居者の属性を確認する
・建物の状態を確認する
引き継ぐ前に、これまでの経営状況をしっかりと把握しておきましょう。
ローン残債を確認する
アパート経営を引き継ぐ場合は、事前にローン残債を含めた経営状況を確認しましょう。
アパート経営を引き継ぐとローン残債も一緒に引き継ぐこととなり、相続人に返済義務が発生します。
そのため、事前にアパート経営における収入と支出のキャッシュフローや損害保険への加入状況などを確認すべきです。
また相続人は改めて金融機関から返済能力を審査される可能性もあり、返済能力次第では新たな保証人を要求されることもあります。
引き継ぐかどうか判断するためにも、ローン残債を含めた現在のアパート経営の資金繰りや問題点を事前に把握しておきましょう。
空室率や入居者の属性を確認する
アパート経営を引き継ぐ場合は、空室率や入居者の属性も確認しましょう。
アパート経営の収入源は入居者が支払う家賃であり、空室が目立つ場合や家賃の滞納が多い場合は、キャッシュフローが悪化してしまうため注意が必要です。
具体的に確認すべきポイントは6つです。
・空室率
・入居者の属性
・現行の家賃
・家賃の滞納の有無
・契約の更新時期
・預かっている敷金
長期間にわたって空室率が高い場合は、決して健全なアパート経営とはいえず、家賃や集客方法を見直す必要があります。
建物の状態を確認する
アパート経営を引き継ぐ場合は、建物の状態を確認しましょう。
老朽化が進み耐震性や耐久性に問題がある場合、近いうちに大規模修繕が必要となり、資金を準備する必要があるからです。
内部の設備や外壁塗装なども交換や修繕が必要となるため、建物全体の経年劣化を把握し、対応に必要なコストの見通しを付けておきましょう。
アパート経営を引き継ぐか売却するかの判断ポイント
突然の相続で、アパート経営を引き継ぐか売却するかお悩みの方も少なくありません。
アパート経営を引き継ぐか売却するかの判断ポイントを4つ紹介します。
・売却に伴う費用を把握する
・アパート経営のノウハウを確認する
・アパート経営引き継ぎのメリットを確認する
・アパート売却のメリットを把握する
売却にはさまざまな費用や税金がかかる一方で、引き継ぐことにはないメリットもあるため、事前にしっかりと把握して判断しましょう。
売却に伴う費用を把握する
引き継ぎか売却か判断するために、売却に伴う費用を把握しましょう。
アパートの売却に伴う費用は主に5つです。
・印紙税
・譲渡所得税
・不動産会社への仲介手数料
・登録免許税
・住民税
アパートの売却価格がそのまま手元に入るわけではなく、さまざまな費用がかかることに注意しましょう。
印紙税
売買契約書に貼る印紙に課せられる印紙税は、物件の売買価格によって定められています。
具体的な金額は下表の通りです。
物件の売買価格 | 印紙税 |
100万円超から500万円以下の場合 | 1,000円 |
500万円超から1,000万円以下の場合 | 5,000円 |
1,000万円超から5,000万円以下の場合 | 10,000円 |
5,000万円超から1億円以下の場合 | 30,000円 |
1億円超から5億円以下の場合 | 60,000円 |
【参考】印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで-国税庁(2023/4/20時点)
譲渡所得税・住民税
譲渡所得税・住民税は、アパート売却によって生じた課税譲渡所得金額がプラスであった場合に課税されます。
売却したアパートの所有期間によって税率が異なります。
・短期譲渡:譲渡年の1月1日時点での保有期間が5年以下の場合税率は39%
・長期譲渡:譲渡年の1月1日時点での保有期間が5年超の場合税率は20%
【参考】土地や建物を売ったとき-国税庁(2023/4/24時点)
不動産会社への仲介手数料
不動産仲介手数料は下表の通りです。
売却額 | 仲介手数料の上限 |
400万円超 | 「売買金額の3%+60,000円」+消費税 |
200万円超400万円以下 | 「売買金額の4%+20,000円」+消費税 |
200万円以下 | 「売買金額の5%」+消費税 |
仲介手数料は上限の金額が定められており、その範囲内で不動産会社が自由に金額を決められます。
売却額から概算できるため、事前に確認しておきましょう。
登録免許税
登録免許税はアパートの名義変更手続きに発生する税金です。
アパートを売却する際の登録免許税は、固定資産税評価額の2%となります。
アパート経営のノウハウを確認する
引き継ぎか売却か判断するために、自分のアパート経営に対するノウハウを確認しましょう。
売却すれば関係ありませんが、引き継ぐ場合は不動産の所有者になるだけでなく、さまざまな業務や知識が必要となります。
建物や設備に関する知識はもちろんのこと、会計や税務、民法や借地借家法についての知識も必要です。
ノウハウに自信のない方は売却も1つの選択肢となるため、冷静に考えて判断しましょう。
アパート経営引き継ぎのメリットを把握する
引き継ぎか売却か判断するために、引き継ぎのメリットを把握しておきましょう。
主なメリットを2つ紹介します。
・家賃収入を得られる
・資産となる
家賃収入を得られる
アパート経営を引き継げば家賃収入が得られます。
入居率次第ですが、アパート規模であれば少なくとも毎月10万円以上の収入が得られるはずです。
労働の対価である給与と異なり、管理会社に建物の維持や入居者募集を任せることで不労所得とすることもできます。
一方で、築年数が経過すれば家賃は低下する傾向にあるため、将来的には収益性が低下する可能性があることに注意が必要です。
資産となる
アパート経営を引き継げば資産となります。
不動産の価値は現金と違いインフレや景気に左右されにくく、資産価値が高いというメリットがあります。
一方で、ローン残債があれば返済義務が生じ、経営が不安定な場合は手出しで返済する必要もあり注意が必要です。
アパート売却のメリットを把握する
引き継ぎか売却か判断するために、売却のメリットを把握しておきましょう。
主なメリットを2つ紹介します。
・現金を得られる
・維持費の負担がなくなる
現金を得られる
アパートを売却すれば現金を得られます。
アパートであれば、一度に数百万円から数千万円の現金を手にする可能性もあるでしょう。
一方で、売却すれば家賃収入を手放すことになり、売却時期によって価格も大きく異なるため注意が必要です。
維持費の負担がなくなる
アパートを売却すれば維持費の負担がなくなります。
アパートを所有している間、家賃収入は得られますが、ローン残債や修繕費・原状回復費、固定資産税・都市計画税などさまざまな維持費を支払う必要があります。
売却すればこれらの維持費の負担がなくなるため、維持費を重荷に感じる方は売却を検討すべきです。
アパート経営引き継ぎの流れ
アパート経営を引き継ぐため、やっておくべき4つのことを紹介します。
・引き継ぐ人の決定・相続登記
・遺産分割について金融機関に申出
・入居者・管理会社への連絡
・準確定申告
引き継ぐ人の決定・相続登記
アパート経営を引き継ぐためにおこなう1つ目のことは、引き継ぐ人の決定・相続登記です。
トラブルを避けるためにも、早期に引き継ぐ人を決定し、アパートの所有者が誰であるかを明確に決めておきましょう。
引き継ぐ人が決定したあと、司法書士に依頼して相続登記を行います。
遺産分割について金融機関に申出
アパート経営を引き継ぐためにおこなう2つ目のことは、遺産分割についての金融機関への申出です。
アパート経営のローン残債は引き継ぐ人に返済義務が生じますが、遺産分割について金融機関に申し出なければ、アパートを引き継いでいないほかの相続人にもローンの返済が請求されてしまいます。
引き継ぐ人が決まったら、早期に金融機関へ申し出ましょう。
入居者・管理会社への連絡
アパート経営を引き継ぐためにおこなう3つ目のことは、入居者・管理会社への連絡です。
引き継ぐ人は入居者からの問い合わせや退去の際の新たな窓口となるため、必ず入居者へ連絡しましょう。
なお、アパートの管理を管理会社に依頼している場合、管理会社に相続の旨を連絡し、管理会社経由で入居者へ通知することもできます。
準確定申告
アパート経営を引き継ぐためにおこなう4つ目のことは、準確定申告です。
準確定申告とは、1月1日〜相続発生までの期間内における被相続人の所得について、相続人が代理で確定申告をおこなうことです。
相続発生から4ヶ月以内に、被相続人の納税地の管轄税務署長当てに提出する必要があるため、時間に余裕を持って準備しましょう。
まとめ
本記事では、アパート経営を引き継ぐ上での注意点や引き継ぎの流れについて解説しました。
家族の逝去などでアパートを相続する場合、引き継ぎと売却の2通りがありますが、それぞれメリット・デメリットがあります。
アパートの経営状況や相続人の経済状況によって適切な判断も異なるため、本記事で紹介したポイントを事前に確認し、慎重に判断しましょう。
また引き継ぐ場合、早期に手続きすることで無駄なトラブルを回避できるため、本記事を参考にしてスムーズに手続きしましょう。